学長交渉の要求書です



2000年1月18日

熊本大学長 
江 口 吾 朗 殿

熊本大学教職員組合    
執行委員長 樺島祥平

1999年度第1回交渉を下記の項目で行いたく申し入れます。


要 求 書


1. 看護婦の増員および待遇改善について
(1) 増員によって2:1看護体制を実現して労働条件を改善すること。
1) 夜勤体制を3人に強化して夜勤回数を月8回以下にすること。
2) 救急外来開設に向けて適正な人員配置を行うこと。
3) 年次休暇の取得日数を全国平均(14日)に引き上げること。
4) 超過勤務時間を削減すること。
(2) 病休、長期研修者についてはただちに代替要員を保障すること。慢性的な人員不足に対する応援体制を中止すること。必要な場合には稼働率を引き下げること。
(3) 再開発後の看護体制を強化するための増員計画を立てること。
(4) 4週8休の完全実施と不足した週休の取り扱いについて責任を持つこと。
(5) 二交替制の試行、導入は行わないこと。

2. 国立大学の独立行政法人化について
(1) 独立行政法人化の問題は国立大学の在り方そのものの問題であり、教職員の身分に直接かかわる問題である。文部省のまとめた「検討の方向」も、各大学に対しこの問題への検討を進めるように要請したものである。しかし、学長にはこの検討のための全学的な議論を起こそうとする姿勢が一切見られない。自らの見解を学内に明らかにすることもせず、組合との懇談にも応じようとしない。現在のような「微妙な時期」にあってこの様な態度はきわめて無責任と言わざるをえない。
 学長として、この問題の学内議論をどのように進めていく考えなのか、また、その議論を自らどのようにリードしていくのか、見解を示していただきたい。
(2) 学長は、西日本新聞社のアンケートに対して「国立大学協会の決定を支持する」という回答を寄せたと報道されている。しかしこれでは、学長自身が国立大学協会での議論にどういう立場で参加するのか、学内の議論をどういう方向で進めていくのかがまったく見えてこない。見方によっては、熊本大学の将来を国立大学協会に白紙委任したとも言える。この発言の真意を伺いたい。
(3) 文部省が「検討の方向」で示した特例措置について、政府部内からは強い反対意見が上がっていると聞く。特例措置の不十分さはさておき、これすら実現の見込みがないというのが現実である。今、国立大学が独立行政法人化に異議を唱えることを止めれば、流れは通則法に基づく独立行政法人化に向かわざるを得ない。学長として、独立行政法人化の問題点を世論に訴える考えはないか。

3. 学校教育法等の改正に伴う大学運営体制について
(1) 昨年度の大学審議会の答申では「学長のリーダーシップの確立」がうたわれている。しかし、最近の学内の状況をみると、学長の責任で評議会に提出された「学長特別補佐会議中間まとめ」は学内議論に混乱をもたらしただけで、以後の議論の検討対象とはならなかった。事務一元化や電算化も進められたが、現場に大きな混乱をもたらしている。リーダーシップの発動には学内の様々な意見に耳を傾けながら、もっとも効果的な方針を自己の責任で決めるというリーダーの能力が求められていると考えるが、この点について学長の見解を伺いたい。
(2) この間の議論の中で大学教育研究センター長が、評議会から外れる公算が大きいと聞く。しかし、現在のシステムでは、例えば評議員を中心に構成される大学教育委員会教養教育専門委員会はセンター長が委員長になっている。もし、来年度も現在の教養教育の運営体制を取るのであれば、大学の運営体制として大きな矛盾を抱えることになる。もし、来年度の教養教育の運営体制を大幅に変更するのであれば、これは大学教育の運営の重大問題になるはずであり、組織的な検討が不可欠なものである。学長は、来年度の一般教育の運営についてどのような考えなのか、見解を伺いたい。
(3) 運営諮問会議の委員について、各学部の推薦をもとに学長が選考することになった。選考に際しての学長の考え方を伺いたい。
(4) 運営諮問会議の助言、勧告の扱いについては、国会審議でも評議会・教授会の判断が優先されるべきとされている。運営諮問会議の助言・勧告に対して、大学の自主性をどのように確保していくのか、学長の見解を伺いたい。
(5) 来年度から校費の配分基準が変わり、基準的に一律に配分される額が非実験の修士講座に統一されることになった。そして、これにより減少する金額(全体の約70%)については、大学分として一括して配分され、大学の裁量で重点配分することが可能になった。しかし、その方法によっては、実験系の研究継続に大きな支障をもたらしかねない。配分の方法についての見解を伺いたい。

4. 教員の「任期制」について
(1) 仮に任期制を導入する場合には、その合理的必要性、運用の仕方について、法の趣旨、国会での審議なども踏まえて議論することが必要であるが、見解を伺いたい。
(2) 任期制を適用される教員の勤務条件等については、組合との交渉事項であり、任期制の導入に際しては組合との交渉を行うこと。

5. 学内再開発について
(1) 教養教育棟改修に伴う再開発について
1) 教養教育棟改修問題は、昨秋突然浮上してきて現場の教員の意向を全く無視した形で事務局が中心になって勝手に計画を進めている。いきなり降ってわいたこの問題に対して何ら公式の説明もないまま、そして個々の教官や学科、教室系事務補佐員の意向・希望を聞くヒアリングの場も設けないで勝手な青写真を作ってきた経緯は問題である。これまで事態を放置してきた学長の見解を伺いたい。
2) 来年度、特に前期における授業教室が適正に確保されているという根拠を具体的に示すこと。その際、一般教養で開講されている授業コマ数だけでなく、工事期間中に教養教育棟で授業せざるを得ない学部授業(特に文・法)コマ数も考慮に入れた数字を示すこと。
3) 教養教育棟改修に伴い、研究室などの移動を行うものについては、その費用を全額補償すること。
4) 改修に伴って冷暖房設備が導入されるとのことだが、その維持費の根拠を具体的に示すこと。
5) 学生用自習室について戸締まりなど誰がどういう形で管理するのか、その方法を明確に示すこと。
6) 特に文系の場合、これまで各学科図書室に収蔵していた図書の管理が問題になるが、それをすべて(あるいはほとんど)図書館に預けることになれば著しい研究・教育環境の低下を招くことになる。この点に関する対策を明確に示すこと。
7) 来年度にはまだ設置されないLLなどの諸設備は今後、どういう形で補充していく予定なのか、その詳細を明確に示すこと。
(2) 病院の再開発について
1) 情報の民主的な公開を常に行い、開発の進行状況を伝えること。
2) 実際に働く職員の声を積極的にとり入れること。
3) 救急外来について、開設時期及び人員や医療機器の配置を明らかにすること。
4) 再開発後の医療を充実させるための増員計画について明らかにすること。

6. 事務電算化及び事務機構一元化について
(1) 昨年来、学務情報、物品管理請求などの業務が電算化された。しかし、これらはあまりに拙速に行われており、現場に様々な混乱を引き起こしている。例えば、10月の成績入力、後期履修登録の時期には、サーバーの能力を超えてしまい、教員、学生に多大な迷惑を及ぼした。これは、システム利用の予測を見誤ったもので、きわめて初歩的な人為的なミスである。これらの問題により、以前にもまして事務量の偏差が顕著になっており、早急な改善を行うこと。
(2) 物品請求管理システムについては、年度末を控えトラブルは予算執行上の重大な障害になりかねない。トラブルが生じても経理上の問題を引き起こさないよう柔軟な対応を行うこと。
(3) 電算化により事務の効率化を図るためには、システムの問題点についての利用者の声を取り上げ、その改善にフィードバックさせる仕組みが不可欠である。この点について今後どのように整備していくのか、現状も含めて対応策を示すこと。

7. 定員削減問題について
(1) 昨年4月の閣議で、25%(内、15%は独立行政法人化による)の定員削減計画が決定された。しかし、すでに人員不足は深刻であり、これ以上の定員削減は教育・研究・医療の環境の劣悪化をもたらさざるを得ない。学長として、定員の確保に最大限の努力をすること。
(2) とりわけ、現職の教職員の不当配転、解雇は決して行わないこと。

8. 勤務条件の改善について
(1) これまでの定員削減や事務一元化などの導入、大学の業務の多様化などに伴い、教職員の残業、土日の出勤などが増加している。まず、超過勤務(休日出勤を含む)の実態を正確に把握し、その情報を開示すること。
(2) 夜間開講の問題について、事務的には、フレックスタイムによる対応をということであるが、学務事務の増大によって、夜間開講は実質的にサービス残業化している。夜間開講の実態を正当に評価するため、夜間手当の支給について、文部省などに働きかけること。なお、夜間開講に伴う教育環境の整備として、夜間の教室への冷暖房の導入すること。

9. 昇給昇格について
(1) 俸給表別・級別・号俸別職員一覧表を組合に提示すること。
(2) 人事院規則42条に基づく特別昇給の熊大における実態・数および選考方法を提示すること。
(3) 勤勉手当について、成績率を個人に告知すること。
(4) 行政職(一)事務職員の昇給について。退職時6級の実現に向け「34才誰でも主任」を早期に実現すること。また、上位級拡大のために専門員・専門職員の定数増を実現すること。
(5) 教室系事務職員の主任昇任はこの2年間で大きく進んだが、なお、昇給・昇格の後れは顕著である。今後とも改善のための努力をしていただきたい。
(6) 行政職(二)職員については、付加業務を含めた職務内容を正当に評価し、速やかに昇格を実現すること。
(7) 医療職(二)職員の昇格について。主任定数及び副技師長定数を拡大すること。
(8) 看護婦の2級高位号俸者は全員3級に昇格させること。
(9) 准看護婦の2級昇格を実現させること。
(10) 看護助手の3級定数の枠拡大に努力し、基準適合者は早急に昇格させること。
    
10. 事務職員の待遇改善について
(1) 昇格、特別昇給、昇任、研修における男女間の格差をなくすこと。   
(2) 事務機構一元化に伴い、事務負担の集中により職場環境の悪化が進んでいる。その改善に努力すること。

11. 技術職員の地位確立と待遇改善について
(1) 文部省令による官職設定および組織設置について
 国立学校設置法施行規則第1条に官職を「技術官」、職務内容を「研究教育に関わる専門的技術業務に従事する」と明記し、同規則第28条に「学部、研究科等に技術部を置くことができる。」と組織設置を明記するよう、国大協で推進しつつ文部省にも働きかけること。
(2) 技術専門官および6級定数の大幅拡大について
 訓令による「職」の導入ついては一定評価すべき点もあるが、11年度の技術専門官定数増ゼロを是正するため、12年度は大幅な定数増と団塊の世代の待遇改善策として、6級定数の大幅拡大に向けて文部省・人事院に働きかけること。

12. 図書職員の職務評価および待遇改善について
(1) 図書館は、大学の教育研究を支える重要な施設である。そこで働く図書職員の専門性を正当に評価し、定員内職員の増員をはかること。
(2) 図書職員の専門性に鑑み、定員外職員にも研修を保障すること。
    
13. 行政職(二)職員の職務評価および待遇改善について
(1) 病院の栄養管理室に主任調理師をおくこと。
(2) 退職者の後補充を行い、業者委託(下請化)を拡大しないこと。
(3) 看護助手の複数科にわたる掛け持ち勤務をなくすこと。
    
14. 医療職(二)職員の地位確立および待遇改善について
(1) 理学療法部に技師長制を導入すること。当面、学長辞令による技師長を導入すること。
(2) 大型機器導入については人員を確保すること。
(3) 業務当直に伴う業務拡大を軽減する為に人員を確保すること。
(4) 技官の研究費、研修を制度化すること。
(5) 業務当直手当を増額すること。

15. 教官の待遇改善について
(1) 現在進行中および今後予定される改革の中で、教員の身分、教育・研究環境が悪化しないよう人員をきちんと確保すること。特に教養教育の全学的運営の主旨を確認・徹底し、旧教養部からの移籍者に過重な負担がかかっている現状を改めるよう努めること。
(2) 研究専念期間(サバティカルリーブ)に関して、全学的に「サバティカルリーブ検討委員会(仮称)」を組織し、制度化に向けて本格的に努力すること。
(3) 大学教官の昇級延伸・停止年齢の引き上げを文部省・人事院に働きかけること。
(4) 大学における教育、研究の専門性と職業的性格を保証するものとして、人材確保の立場からも、「教育研究調整額」(10%程度)の新設に向けて本格的に努力すること。

16. 定員外職員の定員化および待遇改善について
(1) 定員外職員を定員化すること。
(2) 本人の意志に反して日々雇用職員のパート職員への切替を行わないこと。
(3) 本人の意志に反して賃金の切り下げ、解雇を行わないこと。
(4) 日々雇用職員の退職手当の支給割合については第3条の第2項ではなく第1項を適用すること。
(5) パート職員へボーナスを支給すること。
(6) 3年期限付き雇用を撤廃すること。
(7) 以下の待遇改善について人事院、文部省へ上申すること。
1) 給与を俸給表の月額とすること。
2) 1)ができないのならば、日給額の算定に祝祭日や年末年始を考慮すること。
3) 特別休暇(夏期休暇、パート職員への忌引休暇・病気休暇など)を適用すること。
(8) 超過勤務手当の支給については定員内職員と差別しないこと。



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