労働基準法等に基づく就業規則等についての協議報告8
発行日 2004.3.12
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労使協定について使用者側原案が示されました

 3月5日に予定されていた協議が中止になったため,2月26日以来ほぼ2週間ぶりの協議になりました。今回は,就業規則に対する意見提出の進め方,労使協定についての使用者側の提案について議論しました。

1.就業規則に対する意見提出について
 労働基準監督署の書式が示され,4月1日に各事業場ごとに記入して提出するよう求められた。労働者側からは,
*3月26日に評議会で承認されてからでは遅いので,評議会に提出する案が決まった段階で示すこと
* 学内説明会で行った労働者代表としての修正提案について,取り入れられなかったこと についてはその理由を示すこと
の要望があり了解された。

2.賃金控除についての労使協定について(労基法24条)
 現在の控除対象になっている,職員宿舎使用料,財形貯蓄の払込金などのみを控除対象にする案が示された。労働者側からは,職員の親睦会費・慶弔費,組合費も控除対象に入れるよう要望があった。使用者側は事務負担を理由に現行どおりという主張を行ったが,労働者側は数年前まで次善の策として各学部で親睦会費・組合費を職員の口座から引き落としていた。料金の増大でできなくなったが法人化で賃金からの控除ができるようになるので取り入れるべきとの主張がなされた。次回協議で職場の意向もふまえながら改めて協議することにした。
【解説】ここで言う賃金控除とは,税金や共済の掛け金のように賃金から控除して支給することです。公務員については官舎使用料,財形貯蓄などしか認められていないため,親睦会費や組合費は一度賃金として職員の口座に振り込んでから個別に引き落とすという扱いをしていました。そのために事務量も多くなり経費もかさみました。法人化後は協定によって控除が可能になります。親睦会費や組合費の控除は多くの企業で行われているものです。なお,この協定は賃金の口座振込みを行うためにも必要なものであり,協定が結ばれないと給与は現金で支給しなくてはならなくなります。ただし協定が結ばれたとしても口座振込みの同意は個別に取らなくてはなりません。

3.1年単位の変形労働制について(労基法32条の4)
 附属学校の教員を対象に1年単位の変形労働制を取り入れるとの考えが示された。一日の労働時間は8時間のままで,週あたり労働時間を最大48時間まで許容するという提案だった。京町事業場の松岡代表から,教育実習期間の労働時間を9時間にする提案,休日振り替えの具体案が示され,今後個別に検討していくことになった。

4.一斉休憩付与の適用除外について(労基法34条)
 窓口業務担当者など一斉に休憩を取れない職場の休憩時間の与え方については職員勤務時間等規則の別表第一,別表第二に定められているが,それを行わせるために必要な労使協定である。内容的な議論は無かったが,修学旅行等に引率中の附属教員の休憩の扱いについて疑問が出された。事業場外みなし労働時間制をとって対応するとの回答だった。

5.時間外・休日労働について(労基法36条)
(1) 1日の最大延長時間を6時間とし,ほぼ労基法の認める限度いっぱいの延長時間が提案された。また,時間外・休日労働を必要とする場合も極めて包括的な規定が提案された。これについて,1日6時間の限度時間は長すぎるのではないか,「臨時の場合」に代表者との協議を経て8時間まで延長できるという規定は削除すべきだ等の意見が出された。
(2) 職場ごとに事情が大きく異なるので,もっと小さな単位で時間外・休日労働の必要な事由,時間数を検討すべきだ。そういう基礎となるデータが無く,あまりに大枠的な規定の仕方なのでこの時間数が止むを得ないものか判断できない。責任を持って協定に印鑑を押せないという強い批判が出された。
(3) 大学教員の時間外労働の事由を入試関係業務に限定していることについて,入試業務が正規の勤務時間に行われた際の扱いについて質問が出た。時間外労働ではないから手当の対象にならないとの発言があった。これについて,入試手当という項目が無いために時間外手当の名目で支給されていたものであり,実際の勤務時間と連動していない。入試業務は検定料という財源もあるので超過勤務手当の形で支給するのではなく別に手当を新設すべきだとの意見が出された。
(4) 附属学校教員の時間外手当について,示された時間外・休日労働の事由はすべて対象になることを確認した。これについて,現在は「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」に基づいて教職調整額4%が支給されるとともに超過勤務手当・休日給は支給されないことになっている。法人化後はこの法律が適用されなくなるため,時間外手当の支給が必要になるが教職調整額はその定額払いであり,教職調整額を上回る時間外労働を行った場合は不足分を支給するという理解で良いかとの質問が出された。検討するとの回答だった。なお,教職調整額は時間外手当に代わるものという側面もあるが,優秀な人材を確保するための教員の待遇改善策でもあるとの指摘があった。
(5) 附属教員に1年単位の変形労働時間制が適用されるが,その場合年間の時間外労働の上限は320時間になる。その規定がないとの指摘があった。
【解説】使用者側は臨時に限度時間を越えて時間外労働を行わせる規定(エスケープ条項)を盛り込みました。しかし,延長回数についての規定は無くこのままでは国の指導・助言の対象になります。また事由も「臨時に業務が集中する」というだけで具体性に乏しく,エスケープ条項の条件を満たしていない可能性があります。

6.その他
1ヶ月変形労働時間制については就業規則に定めれば足りるので労使協定は結ばない。また,フレックスタイム制と専門業務型裁量労働制は採用しないとの考えが示された。

 次回は3月17日に労使協定の協議の続きを行います。

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