No.8
1999.8.18

熊本大学教職員組合

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独立行政法人化について

 8月9日の朝日新聞報道にもあるように、国立大学独立行政法人化の議論が加速しています。そもそも、独立行政法人は3年から5年という期間で中期目標を立て、それを達成するための中期計画を作成し、主務大臣の認可を受けます(通則法第29,30号)。そして、中期計画の期間の終了時には評価委員会の評価を受け(通則法第34号)、その評価をもとに審議会は「当該独立行政法人の主要な事務及び事業の改廃に関し、主務大臣に勧告することができる(通則法第35号)」とされているのです。

 このような独立行政法人の枠組みは本質的に大学の在り方になじまないとし、従来、文部省、国立大学協会は独立行政法人化に反対の態度をとってきました。しかし、それがここに来て大きく変化しているのです。
 変化の背景には、2001年度からの国家公務員定員削減計画があります。政府は、25%(内、15%は独立行政法人化による)という大幅な定員削減計画を決めると同時に、独立行政法人化した組織については、当面定員削減の対象からはずすという扱いを示したのです。2001年度の概算要求は、2000年7月頃からまとめられるので、その時までに各大学は独立行政法人化の判断を迫られることになったのです。もとより、この定員削減計画自体認めることのできないものです。
 また、独立行政法人化によって当面定員削減計画から逃れられたとしても、外部からの評価で教職員数の問題を指摘されれば、「自主的」に減らさざるを得なくなります。しかし、これをきっかけに文部省は独立行政法人化不可避の判断をしており、新聞報道の根拠になっています。

【国立大学協会の動き】

 6月18日、独立行政法人化に関するレポート(松尾レポート)が国大協の事務局長名で全国立大学に配布されました。これは、蓮實国大協会長の依頼を受け、松尾名大学長を中心とするグループがまとめたものです。その目的は「国立大学の独立行政法人化が財政界を中心に現実味を帯びつつある中、加えて6月開催の国大協理事会・総会を目前に控え、法人を「あくまで可能性のある設置形態の一つ」として捉え、万一の場合には遅滞なく適切に対応するための一助になることを願って、問題点を整理する」とされています。
 本文では、まず大学の現状、在るべき姿について述べた後、独立行政法人化の問題点、課題解決策の提言となっており、今後の議論に大いに参考になるものです。全文は組合事務所にありますがここでは2つの項目のみ紹介します。

*独立行政法人化にともなう問題点のうち、「基本的理念に関する問題」の一部

  • 企画立案と実施の機能分離によって達成の高度化・効率化を図るという考え方は大学にはまったくなじまない。大学は、その両者を兼ね備えるべき特殊な機関である。
  • 中期目標は長期的展望に立つアカデミック・プランの中に位置づけられるべきものであり、長期目標なくして大学の発展はありえない。大学は主体的に長期目標を設定するべきである。

*課題解決策の提言の一部

  • 「通則法」は大学を前提にしているとは思われないので、教育公務員特例法を設けている現行制度に類する形で「大学独立行政法人特例法」とも呼ぶべき法を定めて、個別法を大学に適したものとするべきである。
  • 大学が長期的展望の下で、必要な定員を維持するために必要な措置が講じられるべきである。ただし、大学が、教育研究の充実・発展をめざしつつ、効率的な経営につとめるべきであることは言うまでもない。
  • 各大学が中期・短期目標の達成を図るあまり現実対応的な活動に終始することなく、大局的見地からわが国高等教育のあるべき姿について検討できるような制度や組織を設けるべきである。
  • また、複数の大学が、それぞれの自主自律を基本としつつ、必要な連携協力を行う仕組みが保障されなければならない。その場合、現在の国公立大学全体を単一グループとする、地域、各大学の性格などに応じた複数のグループを設けるなどの選択肢がある。

【文部省の動き】

 文部省は今後、々颪ら切り離すことで研究や教育の質を維持、発展させられるか⇒浩公社のような別の法人制度は考えられないかF販行政法人に移行する場合、特殊事情を考慮した新たな法律を作る必要はないか、などについて検討を進めるそうです(朝日新聞)。ただし、具体的な進め方については、国立大学のすべてを一気に移行させる案と、東大など一部の大学を移行させる案に省内も分かれているようです(全大教のメーリングリストの記事)。8月中には、具体案を持って各大学をまわるという話(同上)もありますが、松尾レポートで指摘された問題点について、答えうる案になるのかどうか注意が必要です。

【東京大学の動き】

 東京大学では「東京大学の設置形態に関する検討会」を設置し、理想形態WGと比較検討WGを置いて独立行政法人化を検討しています。比較検討WGでは、国立大学にあり続けた場合と独立行政法人化した場合のメリットデメリットを多面的に検討します。理想形態WGでは、研究・教育の高度化・活性化の観点からみて、理想的な組織・運営はいかなるものか。その実現に独立行政法人への移行が有効で有るかどうかを検討します。
 この動きが、「東大が法人化を検討」と報道されたのを受けて、8月11日蓮實東大総長は記者会見を行い次のように述べました。

  • 「現在提起されている形での独立行政法人化に反対である」(平成9年10月17日「東京大学の独立行政法人化に対する見解について」)という東京
     大学の態度は現在もなお本質的に変わっていない。
  • 国立大学の独立行政法人化の問題に関して、一部の報道機関が「すでに不可避」と報道したことは、今後の検討を歪めかねないものとして深く憂慮している。とりわけ、一部の報道機関が「東大、条件付き容認も」と報道したことは事実誤認であり、誠に遺憾である。
  • 東京大学としては、大学審議会の答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」に述べられたように、大学の自主性、自律性を最大限保持しつつ、独立行政法人化の問題に知性をもって主体的に対応していきたいと考えている。
  • 昨今の国立大学の独立行政法人化をめぐる議論が、予想を遥かに超える流れで進められていることは、国立大学の主体的対応を危うくするものであり、ひいては、大学の自主、自立を危うくし、教育と研究の質の低下を招きかねないと深く危惧している。

 独立行政法人化の問題は大学の在り方の根幹にかかわる問題です。また、組合として現在の通則法案に基づく独立行政法人化には、反対であるとの態度はいささかも変更していません。しかし、このニュースで述べたような状況下でであることから、大学が主体的な立場で大学の在り方を議論することは必要不可欠なことと考えます。そのための情報提供と議論は積極的に行っていきます。 皆さんの意見を組合にお寄せ下さい。





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