No.9
1999.9.3

熊本大学教職員組合

Tel.:096-342-3529 FAX:096-346-1247
E-mail:k-kumiai@mb.infobears.ne.jp




独立行政法人化の検討進む
ー大学の将来を見据え慎重な審議をー

 文部省・国大協は国立大学の独立行政法人化に向けた検討作業に入っています。『赤煉瓦』第8号では、国大協の松尾名大学長によるレポートや東大総長の公式見解を元に、主に国立大学協会の動きをお知らせしました。その後、文部省の原案が読売新聞に(8月19日)、国大協の原案が日経新聞に(8月27日)報道されました。すでにお読みの方も多いとは思いますが、この場で紹介します。

報道による文部省と国大協の原案

(1)文部省の原案(読売新聞8月19日)
 【基本的な組織】

  • 一大学に一法人(「国立大学法人」仮称)を設置。
  • 役員として、学長(1人)、副学長(教育研究、学生、経営など複数人)、監事(複数人)を置く。
  • 評議会、教授会、運営諮問会議は不可欠の機関として、個別法で規定。
  • 学部・研究科・付属研究所は不可欠の基本的組織として、設置・改廃は個別法令による。

 【役員・教職員人事】

  • 役員・教職員は国家公務員とする。教員に教育公務員特例法を適用する。職員は法人間の移動を可能とするため広域的な人事の仕組みを検討する。

 【中期目標・中期計画】

  • 中期目標は文部科学相が各法人に指示するが、大学の自主性を尊重するための特例措置を個別法に規定。
  • 中期計画は各法人が作成、文部科学相が認可。
  • 文部科学相は「評価委員会」の意見を聴取、財務相と協議。
  • 「評価委員会」は、「大学評価機関」(仮称)が独自に行う評価の結果を踏まえ意見を表明、そのための特例措置を個別法に規定。

 【評価】

  • 「評価委員会」が、毎事業年度及び中期目標の終了時に、各法人の業務の実績について評価する。
  • 教育研究にかかわる事項は、「大学評価機関」(仮称)が独自に行う評価の結果を踏まえて評価を行うこととし、特例措置を個別法で規定する。

(2)国大協原案(日経新聞8月27日)

 【立法形態】

  • 通則法修正型の立法措置が必要で、「大学独立行政法人特例法」(仮称)や理念や組織を定める「国立大学法人法」(同)を制定

 【業績評価】

  • 主務官庁の評価で監督・規制が強化され大学の自主性が制限されてはならず、評価委員会は(1)法人内の評価機関(2)独自の外部評価機関(3)運営諮問会議の評価結果を尊重して意見表明すべき

 【中期目標】

  • 主務大臣が各法人に指示する通則法に特例措置を設ける
  • 長期目標を踏まえたアカデミックプランとする

 【法人の単位と連携】

  • 現在の単位(九十九大学)で行うことが望ましいが、自律的に他大学と新たな大学を形成し、そのうえで法人化する可能性は排除しない
  • 大学間の連携を確保するため国大協に類する連合組織を設置

 【組織・人事】

  • 法人の役員は学長、副学長(複数)、監事とし学長を法人の長とする
  • 法人が自主的な意思決定を行う評議会(最高意思決定機関)を置く
  • 学長採用のための選考は評議会の議に基づき法人が定める基準で行う
  • 教員以外の役員(外部から任用される監事)は法人が定める基準に従う
  • 職員は人事の流動化や待遇の均一化から国家公務員型が望ましい

 【財政】

  • 国立学校特別会計の維持
  • 同会計の債務を法人が実質的に引き継ぐことがないよう措置
  • 地方税を原則非課税に
  • 地方財政再建促進特別措置法の適用を除外し地方自治体の法人への寄付を可能にする
  • 国は研究助成のための基金を制度化する
  • 国有財産を現物出資で移譲する際には資産評価は取得原価で行う

二つの案の特徴

 通則法の規定のままでの独立行政法人化は、国立大学の自立性・独立性を侵すものであり、独立行政法人の趣旨に反しています。この点については文部省も国大協も一致しています。そこで、国立大学の独立行政法人化のためには、何らかの措置が必要になるわけですが、上記の案はそれについての両者の提案です。通則法の問題点に即して解説します。

1.法人長(学長)は主務大臣が任命する(通則法第20条)
  文部省は「教育公務員特例法を適用する」という形で、また国大協は「評議会の議に基づき法人が定める基準で行う」という形で実質的に各大学で行うことを求めています。
2.主務大臣は中期目標を法人に指示する(通則法第29条)
  文部省は「大学の自主性を尊重するための特例措置を個別法に規定」としています。国大協は同様の特例措置を求めるとともに、「長期目標を踏まえたアカデミックプランとする」としています。
3.独立行政法人に対する評価委員会の評価(通則法第32〜34条)
  文部省も国大協も大学独自の評価のあり方が必要と考えています。しかし、文部省は「大学評価機関」による独自評価を尊重するように求めているのに対し、国大協は「主務官庁の評価で監督・規制が強化され大学の自主性が制限されてはならず、評価委員会は(1)法人内の評価機関(2)独自の外部評価機関(3)運営諮問会議の評価結果を尊重して意見表明すべき」と踏み込んだ形で述べています。

 上記3点は通則法と矛盾する点なので、特例措置が不可欠です。しかし、国大協が明確に特例法の制定を求めているのに対し、文部省は個別法の特例措置で対応しようとしています。今後どのように調整されるのか、注意深く見守る必要があります。

大学の将来を見据えた慎重な審議を
 文部大臣の私的諮問機関である「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」はすでに、3回の会合を終え9月16日には取りまとめを行う予定です。また、国大協でも9月7日の第一常置委員会で報告会が行われます。これを受けて、9月13日に国大協の臨時総会が、9月20日に文部省による学長事務局長会議が開催されます。これらの協議を終えてから文部省は最終案を出すようです。
 通則法に示された独立行政法人の仕組みは、国立大学にはまったく不適当なものです。様々な危惧の声が出るのも当然のことです。しかも、この問題についてオープンな形で検討が為されるようになったのは7月に入ってからにすぎません。25%定員削減計画の数あわせのため、この様な重大な問題にわずか2ヶ月あまりで結論を出してしまうというのは、常識では理解しがたいことです。これに関連して、朝日新聞(9月1日)に掲載された本間大阪大学副学長の投稿、及び、8月31日付の熊日の社説を紹介します。大学の将来を見据えた冷静な議論を期待します。





戻る