No.14
1999.10.1

熊本大学教職員組合

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独立行政法人化問題への取り組み
−全大教第11回教研集会報告−

 さる9月17〜19日、東北・盛岡の岩手大学において全大教教職員研究集会が開催された。主要テーマが「国立大学の独立行政法人化への対応」という関心の高いテーマであったことから、全国から220名余の多数の参加があり、熊大からも6名が参加した。全体集会・シンポジウム、分科会を通じて検討された主要論点について報告する。

<独立行政法人通則法は大学になじまない>
 企画立案機能と実施機能の分離、主務大臣による法人の長の任命、主務大臣の指示する「中期目標」に基づく「中期計画」の作成・認可、中期目標終了時の評価と業務の存廃決定、企業会計原則の導入等、通則法の仕組みは本来大学を念頭に置いたものではなく、政府・文部省による官僚的統制の強化と学問・研究の自由、大学の自治の否定をもたらす。国大協も個性的教育や自由な長期的視野に立った研究が阻害されるとして反対している。例の「藤田論文」は個別法による自由の拡大を唱えるが、個別法の限界を越えると論難されている。

<特例法の問題性>
 国大協は大学の自主性、主体性の確保の観点より通則法の特例を定める法律の制定を示唆している(9/7「中間報告」、なお、9/20提示の文部省案も特例措置を講ずるとする)。そこでは大学レベルの企画立案機能の確保、長期的展望の必要性、中期目標・中期計画の策定における大学の主体性確保、主務省による直接的大学評価の拒否等が主張されているが、これらの主長は通則法の骨格部分と真っ向から対立し、通則法の枠を越えるものであり、果たして実現可能性はあるのか(矛盾的存在と化してしまう)。これらの「修正要求」も結局は通則法の枠内に押し込められてしまうのではないか。また、仮に特例法として成り立つとしても、現在より事前、事後の国家の関与が強化されることになる。

<独立行政法人化のもたらす事態〜ニュージーランドの事例から>
 ニュージーランドでは10年前より大学のエージェンシー化が行われているが、その結果次のような事態が生じている。政府交付金(学生積算校費)の削減(授業料の97%(90年)から72.5%(99年)へ)、それに伴い入学金の引き上げ、コース別授業料の設定・引き上げ、学生獲得のための応用的就職向けのコースの提供、そして、定員削減、余剰整理(首切り)、短期契約職員の採用、等々。

<労働者の生活と権利は不安定に>
 「公務員型」であっても地位が安定するわけではない。定削については総定員法の枠外に出ることで一旦は免れるかに見えるが(実はこれすら定かではない)、次ぎは評価に基づく不効率部門の改廃によりドラスチックな定削がありうる。給与や労働時間については、給与法、勤務時間法の適用除外とされ、使用者との労働協約によって定められることになる。柔軟性は高まるが、それだけ危険が高い。定員外職員の地位も一層不安定となる。厳しい定員管理と能力主義による賃金管理が待ち構えている。

<独立行政法人化反対の国民運動の展開を>
 国民の共感を得ることのできる取り組みをいかに展開しうるかが鍵である。「効率化」「定削」の論理は学問論、教育論を欠落させており、基礎研究や長期的展望に立った学問研究を阻害し、国民のための教育研究の発展を否定するものである。授業料は法人の直接収入とされていることから、安易な授業料の値上げが予想され、国民の教育費負担を増大させる。また、労働条件の改悪問題については他の公務員労働者と連携した取り組みが必要である。


 教研集会終了後の9/20には文部省案が示され、今後10月には地方ブロック学長会議、11月には国大協総会が予定されています。今こそ学内、学外において国立大学独立行政法人化反対の広範な運動を巻き起こして行く必要があります。





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