No.38
2000.2.29

熊本大学教職員組合

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看護婦増員(2対1看護)と稼働率の引き上げは矛盾しない
――病院経営方針の転換を!――

 病院長予備交渉(2月16日)において、病院当局は、看護婦増員(2対1看護)については「検討の余地なし」と、「病院長は……一番の目標は稼働率を上げることだと言っておられる。特命です」と回答しました。病院当局は、看護婦増員(2対1看護)と稼働率の引き上げとが矛盾・対立しているとお考えのようです。だとすれば、病院当局の「経営戦略」能力はまことに貧困であると言わねばなりません。
 看護婦の増員による看護体制の整備(さしあたり2対1看護の実現)によってこそ、在院日数の短縮が、真の意味でのそれ(患者負担・医療費の減少)が可能になり、それと同時に稼働率は上昇します。のみならず、病院当局が求めてやまない増収が、それもきわめて効率的な増収が図れます。

 熊大病院の99年11月の実例に基づいて、この「経営戦略」を説明すれば次のようになります。
 この月の一般病棟の1日の患者数(厚生省計算方式)は679(≒678.5)人でした。これはすなわち常時679床が埋まっていたことを意味します。他方、「国立大学病院の運営状況」(99年10月調査時)によれば、平均在院日数は33.3日でした。計算上、11月の一ヶ月間に612人が退院したことになります。したがって、計算上、入院延数(文部省計算方式)は679人×30日+612人=20,982人に、1日平均患者数(同)は699.4人に、稼働率(同)は88.5%になります。
 これが熊大病院の現状です。この現状のどこをどう変えれば、経営は改善されるのでしょうか。基本的な変数は2つですから、方針は2つしかありません。
 ひとつは常時埋まっているベット数を増やす(より多くのベットを常時埋める)という方針です。97年度以降病院当局が、看護婦を削減しながら追求してきたのはこれです。この方針が何を結果したのはすでに明らかです。・4週8休は崩壊し、・週40時間労働制は破られ、・自らが届け出た看護基準を黙殺するという違法状態・行為が繰り返されてきました。あくまでもこの方針に固執するというのであれば、病院当局は、『赤煉瓦』42号(99年2月9日号)、同43号(99年2月9日号)、同44号(99年2月10日号)、同45号(99年2月10日号)、同46号(99年2月10日号)、同50号(99年3月1日号)において、われわれが指摘した諸問題に対して回答すべきです。3月10日に予定されている本交渉の場での回答を改めて求めます。

 さて、いまひとつの方針は在院日数の短縮です。平均在院日数を1日だけ短縮してみます。11月の一ヶ月間に631人(19人の増)が退院できます。したがって、入院延数(文部省計算方式)は679人×30日+631人=21,001人に、1日平均患者数(同)は700.0人に、稼働率(同)は88.6%になります。
 この計算結果が示しているのは、・当然のことながら、この方法によって、保健医療機関として何よりも重要なことに、退院(完治)者が増えるということです。・しかも、退院者数を入院延数に算入するという文部省計算方式の特性のゆえに、在院日数が減れば稼働率が上昇するということです。つまり、常時埋まっているベット数を増やす(より多くのベットを常時埋める)という方法の他にも、稼働率が上昇する方法があるのです。

平均在院日数を短縮できるのか否かが病院経営の核心です。在院日数を短縮するためには、看護婦を増やす以外に方法はありません。看護婦数と平均在院日数には明らかな相関があること、すなわち看護婦を増やせば在院日数が減ること(下表参照)は、すでに医療政策の前提となっています。現に厚生省が、医療・診療報酬制度の抜本的「改革」によって目指しているのは、一般病床における看護婦の増員であり、これによる在院日数の短縮です。具体的には、第4次医療法改正によって、一般病床の看護婦配置基準は、現行の4対1から3対1に引き上げられる見通しです。わが国の「急性期医療における看護職員の配置が欧米と比較して低〔く〕……平均在院日数が長い」という現状認識がその背後にあります(診療報酬体系見直し作業検討委員会)。
 病院経営の鍵が在院日数の短縮にあり、それが看護婦の増員によってしかなしえないとすれば、病院経営の鍵はひとえに看護婦の増員にかかっています。既報のように、99年11月の患者数からすれば、一般病棟では23人の増員によって2対1看護が実現します。これによって、平均在院日数が1日減れば、上記の計算が成立します。それだけではありません。これによって、夜勤看護加算を別にして、少なくとも1億1,000万円の増収になります。「少なくとも」と述べたのには理由があります。この1億1,000万円は看護料の増収分にすぎません。在院日数の短縮とはすなわち、患者の回転率が高まることに他なりませんから、在院日数の短縮にともなって、看護料以外の診療報酬についても増収が予測されます。それゆえ、文部省は、「非常勤看護要員の増員による上位看護料への移行と病院収入の増額調書」(2月8日付け)において、2対1看護を各大学に指導・調査したのです。

 在院日数の短縮は、病院の評価からしても求められています。特定機能病院に対して在院日数の縛りが設けられたのは、98年度の診療報酬改定からです。これは国立大学病院にとって衝撃的な改定でした。全国国立大学附属病院長会議(98年2月19日)において、大学病院指導室長は報告しました。「今回、診療報酬改訂に係る折衝の中で」、「中医協〔中央社会保険医療協議会〕で突如……『特定機能病院でも機能に違いがあるのではないか、例えば在院日数も私大の10数日から40日まで幅があり、高度先進医療を必ずしも全部やっていないではないか』との指摘」を受けたと。「全体として、在院日数短縮が進められる中で、一部には40日に達する入院期間の長さは、大学病院の特性というだけでは説明困難である」と。ここで在院日数が40日と指摘されたのは、他ならぬ熊大病院でした。確かに、その後在院日数は減少しました。もっぱら計算上の操作と患者への負担の転嫁によって。それでも「私大の10数日から」すれば大きな幅があります。そのため、引き続き中医協の会議では、次のような発言が相次いでいます。「特定機能病院でも平均在院日数が倍も違っているのが実態。特定機能病院を2つか3つに分類したらどうか」(99年6月2日)。「特定機能病院の平均在院日数のばらつきが非常に大きく、特定機能病院という一つの概念でくくっていいのか、疑問」(99年1月27日)。「特定機能病院については一定の水準が担保されているという議論は、前提が成り立っていないのではないか」(同)。「本来特定機能病院を取り消してもいい病院まで放っておかれているのではないか」(同)。
看護婦数と平均在院日数に相関があるということは、看護婦を増やさずに一方的に患者数を増やそうとする病院当局の経営方針は、在院日数の延長に帰結します。再開発完了時に、熊大病院は特定機能病院にとどまりうるのでしょうか?

 看護婦数と平均在院日数の関係(95年の病院報告に基づく一般病院の集計)

100床当り 看護婦数 平均在院日数

70人以上

20.7

65〜69

23.1

60〜64

23.4

55〜59

25.7

50〜54

28.2

45〜49

32.9

40〜44

39.3

35〜39

50.7

30〜34

67.9

 〔出所〕http:/www.nurse.or.jp/information/explain/zaiin/zaiin2.html
 〔註〕病床当たり看護婦数を増やせば、在院日数が短縮できるばかりでなく、合併症や二次感染の発生率・死亡率が低下することを示す研究は、数多くある(『週間社会保障』、vol. 50, no. 1905、96年9月23日)。



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