No.39
2000.3.17

熊本大学教職員組合

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自民党内に「国立大学法人」案が浮上

 3月6日、共同通信は自民党内の「教育改革実施本部高等教育研究グループ(座長・麻生太郎元経企庁長官)」による「国立大学法人化案」(以下、麻生案)を報じた。そこでは独立行政法人の制度を国立大学に適用することは不可能とされており、特例法による「国立大学法人」の制度化が提唱されている。今後どのように進むか予断を許さないが、文部省の「検討の方向」(昨年9月20日に発表)に対するこれまでの政府・自民党の反応とは大きく変化したものであり、注目に値する。また、文部省の「検討の方向」が特例措置による案だったのに対し麻生案が特例法を提案していることも大きな違いだ。

 報道によれば麻生案には「大臣が各大学に目標を示したり、学長を任命・解任するシステムは国と大学の関係として不適切」との指摘や、「文部科学省に置かれる評価委員会が業績評価を適正に行えるのか」と疑問が取り入れられている。従来、政府・自民党は定員削減の数合わせのため、独立行政法人という大学とはおよそ相容れない制度を、大学に押し付けようとしてきたが、自民党内からも、それに対する危惧の念が示された。これは、組合ばかりではなく、国大協、各大学、学会などから反対の声が広くあげられてきたことの成果である。

 しかし、麻生案はあくまで独立行政法人通則法に対する特例法によって国立大学を法人化しようというものである。例えば、「大臣が各大学に目標を示すのは不適切」と述べているにもかかわらず、「各大学の意見を尊重して中期目標を作成する」に止まっている。独立行政法人は、企画立案部門と実施部門を分け、実施部門のみを独立させるという発想のもとに構想されているので、法人の目標を作成するのは、企画立案部門(すなわち政府)とならざるを得ない。独立行政法人から出発して法人化を考える限り、国立大学にふさわしい法人化が出てくるはずはない。

 その他にも、麻生案には「経営担当の学長補佐機関の設置」「任期制の導入」など、重大な問題が含まれている。報道された案は原案の段階であり、麻生委員会は3月中に結論を出す予定といわれる。この案が最終的にどのような形になるのか、政府・自民党内でどのように扱われていくのか、事態を充分注視していく必要があろう。

【東京大学の国立大学法人制度研究会】
 独行法反対ネットワークからの情報によれば、東京大学に近日中に「国立大学法人制度研究会」が発足する。麻生案との関係は不明だが、任務として
  1)「通則法+特例法」での大学への可否を検討し、骨子を作る
  2) 1)がダメな場合、別途の法人制度を検討し、骨子を作る
が掲げられており、独立行政法人とは別の制度を視野に入れていることが注目に値する。3月中に議論を始め、4月中(遅くとも5月初め)には結論を出す予定だ。

 国立大学協会は3月8日に理事会を開催しているが、その内容はまだ明らかになっていない。しかし、麻生案が特例法を構想しているので、今後その方向に大きく動き出す可能性がある。しかし、特例法と言っても国立大学の在り方として重大な問題を孕んでいることは前述のとおりである。国大協には、麻生案に大学の将来を託すのではなく、自らの在り方について積極的に発言していく姿勢を求めたい。

 現在、熊本大学教職員組合は、学長交渉に向けて準備を進めている。組合は、懇談の場で学長の見解を質すとともに、熊本大学の将来の在り方を検討するための全学的な議論の場を求めていく。


資料 麻生案のポイント(共同通信3月6日)

 一、大臣が学長を任命・解任するシステムは諸外国にも例がなく不適切。 

 一、国立大学を法人化する場合の法人名称は「国立大学法人」が考えられる。

 一、各大学の自由な運営が保障されるよう以下の点に留意し、独立行政法人通則法に修正を加えた特例法に基づいて移行する。(1)教員人事は各大学の主体性にゆだねる(2)教育研究に関する業績は専門の第三者評価機関による評価にゆだねる(3)企業会計原則を適用する場合は、大学の特性を踏まえる—など。

 一、法人化した国立大学の経営を強化するため(1)経営担当の学長補佐機関を置く(2)学長に大学運営に見識を有する適任者が選ばれるよう選任の在り方を見直す(3)経営担当副学長を置き適任者を学内外から募る。

 一、法人化後の国立大学に第三者評価機関による評価を義務付け。大学自ら
活動の実態を積極的に公表。大学運営諮問会議の機能を充実強化する。

 一、国立大学で教員に対し任期制を導入。優秀と認められた教員に対しては任期の付かない在職権が付与されるような教員人事にする。

 一、高等教育・学術研究への公的投資を欧米水準並みに拡充。税制面で民間からの寄付金の支出が促進されるようにする。

 一、国立学校特別会計の借入金返済や国立大学の施設整備を円滑に進める仕組みを設ける。



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