No.43
2000.4.3

熊本大学教職員組合

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直ちに看護補助10対1への引き上げを


 4月1日より診療報酬が改定されます。入院に関わる重要な改定内容は次の通りです。

  1. 「入院基本料」の新設。これは、従来の「入院環境料」、「入院時医学管理料」、「看護料」、「院内感染防止対策加算」、「入院診療計画加算」を包括したものです。
     「看護補助加算」や「夜間勤務等看護加算」、「入院時医学管理加算」などについては、この「入院基本料」に包括されずに、「入院基本料」に追加する形で算定されます。
  2. 「入院基本料」の点数設定は、病院・病棟の機能別になされます(10種類)。いわゆる「一般病院」には「一般病棟入院基本料」が適用され、特定機能病院には「特定機能病院入院基本料」が設定されます。
  3. のみならず、「入院基本料」には平均在院日数に対応して、群(I群とII群)の区別が導入されます。平均在院日数が28日以内であれば・群が、29日以上であれば・群が適用されます。つまり、病院の機能別区分と同時に、平均在院日数に応じた病院の種別化が進行するわけです。卑俗な言い方をすれば、<優れた大学病院>と<劣った大学病院>の区別が進みます。
  4. 看護補助加算の簡素化。従来の看護補助加算のうち13対1(と8対1)が廃止されます。

 特定機能病院入院基本料<一般病棟>は下表の通りです。

特定機能病院入院基本料<一般病棟>I群 (平均在院日数28日以内)
 
看護職員
配置
平均在院日数
基本
点数

看護補助加算

個別の入院患者に対する
入院期間に応じた加算・減算

15対1

10対1

54

80
-14日
15-30日
180日-
入院基本料1
2:1以上
28日以内
1,216
   

512

207
▲50
入院基本料2
2.5:1以上
28日以内
1,113
1,167
1,193
512
207
▲50


特定機能病院入院基本料<一般病棟>II群 (平均在院日数29日以上)
 
看護職員
配置
平均在院日数
基本
点数

看護補助加算

個別の入院患者に対する
入院期間に応じた加算・減算
15対1
10対1
54

80

-14日
15-30日
180日-

入院基本料1

2:1以上
29日以上33日以内
1,256
   
372
167
▲30
入院基本料2
2.5:1以上
29日以上33日以内
1,153
1,207
1,233
372
167
▲30


 さて、熊大病院では、本年1月より「13対1看護補助加算」を算定していますから、4月1日からの改定によって、さしあたり一般病棟の看護補助加算を10対1に引き上げるのか、それとも15対1に引き下げるのかの選択を迫られています。
 病院長交渉では、「2対1が可能でそうなれば、こんなにいいことはない」、「2対1は実現したいというのが夢」などの回答がありました。と同時に、2月8日付調書(定員外看護婦の増員による2対1看護の現実性についての調査)については、「先行投資しても改善してゆけるものなら改善していこうということが窺われる」との回答がありました。また、北海道大学長に対する会計検査院の指導(定員外看護婦の増員によって夜勤回数を減らすようにという内容)については、「今まではしたことの結果で責められていたが、これからはしなかったことで責められる時代。心がけていかねばならない。工夫して地域に密着した病院を自分たちで作っていかないといけない」との回答がありました。
 こうした回答からすれば、当然に看護補助加算は直ちに10対1に引き上げられるものと思われます。加えて、さしあたり以下の2つの観点からしても、看護補助加算の引き上げが当然のことと思われます。

(1)増収の観点からして
 看護補助を15対1に引き下げると、・看護補助加算についてみれば、62点から54点への8点の減点となります。入院患者数を679人(99年11月の一般病棟の患者数)とすれば、年間で約2,000万の減収となります。・基本的な入院料全体(入院基本料と入院基本料加算)についてみれば、減収の額はさらに増加します。下表は、一定の時点で退院した場合の基本的な入院料の合計点数を示したものです。

退院の時点 14日 25日 30日 33日 40日 50日 80日 120日 190日
旧入院料
A 看護補助10:1 21,014 34,725 41,600 40,808 49,390 61,650 94,430 132,230 184,490
B 看護補助13:1 20,762 34,275 41,060 40,214 48,670 60,750 92,990 130,070 181,250
C 看護補助15:1 20,650 34,075 40,820 39,950 48,350 60,350 92,350 129,110 179,810
新入院料
D 看護補助10:1 26,000 35,030 42,030 40,719 49,350 61,680 98,670 147,990 216,570
E 看護補助15:1 25,636 34,380 41,250 39,861 48,310 60,380 96,590 144,870 211,890


引き上げ率 AとDの比較

23.73

0.88
1.03

-0.22

-0.08

0.05
4.49
11.92
17.39
CとEの比較
24.15
0.90
1.05
-0.22
-0.08
0.05
4.59
12.21
17.84
BとDの比較
25.23
2.20
2.36
1.26
1.40
1.53
6.11
13.78
19.49
BとEの比較
23.48
0.31
0.46
-0.88
-0.74
-0.61
3.87
11.38
16.90

〔註〕「新入院料」は特定機能病院入院基本料・群入院基本料2によって計算。「旧入院料」には、加算入院時医学管理料(110/100)、院内感染防止加算、入院診療計画加算(入院中1回)を加算。「新入院料」には、入院時医学管理加算(14日を限度)、紹介外来加算(同)、紹介外来特別加算(同)、診療記録管理体制加算(入院初日)を加算。

 どの比較においても、入院期間14日(以内)の時点と80日超の時点について、引き上げ率が高くなっています。前者は今回の診療報酬改定の特徴のひとつである「超急性期評価への傾斜」を反映しており、後者はこれまで「病院からの患者を追い出し」を引き起こしていた「入院時医学管理料」の急激な逓減の見直しを反映しています。
看護補助13対1を15対1に引き下げた場合(「BとEの比較」の欄を参照)には、25日と30日時点(すなわち15〜30日の期間)の引き上げ率がきわめて低く、1%に達していません。今回設定された点数は基本的に2002年3月まで継続しますが、この低引き上げ率が今後の物価上昇率を下回ることは確実です。のみならず、熊大病院の平均在院日数の33日時点と40、50日時点(すなわち31〜60日の期間)については減点になっています。要するに、看護補助13対1を15対1に引き下げた場合に、入院期間が15〜60日の患者を抱える病院の経営は悪化します。熊大病院の一般病棟の全ての患者が33日で退院するとすれば、年間で約2,700万の減収となります。
 ありうる選択肢は10対1への引き上げより他にありません。


(2)2対1看護への「橋渡し」の観点からして
 1/2.5+1/10=1/2 です。1/2.5は「2.5対1看護」を、1/10は「10対1看護補助」を意味しています。つまり、上記の等式は、「2.5対1看護-10対1看護補助」の算定に必要な看護要員(看護婦と看護助手)数が、患者2人に対して看護要員1人を配置するのに必要な看護要員数と同一であることを示しています。
 現在、「2.5対1看護-10対1看護補助」を算定している病院では、「患者2.5人に対して看護婦1人の比率」(2.5対1看護)を上回る看護婦が配置されており、計算上の「余剰」数があります。他方、看護助手は少なく、看護助手数だけでは10対1に足りません。そこで、看護婦の計算上の「余剰」数を看護助手数に読み替えて、「10対1看護補助」を算定しています。「2対1看護」とは、患者2人に対して看護婦1人のことですから、この「余剰」数が患者数の10分の1に達すれば、それは「2対1看護」の実現に他なりません。上記の等式はこのことを意味しています。というよりも、「2.5対1看護」で最上位の看護補助を算定すれば、「2対1看護」への移行が準備できるように、看護料の体系が設計されているのです。
 熊大病院の一般病棟については下表のようになります。

現員(実人員)数
看護婦数 317
看護助手数 14
331
2.5対1看護-10対1看護補助の
算定に必要な看護要員数
2.5対1看護必要数 272
10対1看護補助必要数 68
340
 〔註〕患者数は679人(99年11月)で計算。看護要員数は99年11月の数値。看護婦の外来兼務者(実人員)数を20、看護助手のそれを2として計算。

 9人の増員によって「10対1看護補助」への引き上げが実現します。ただし、4月1日より定員外看護婦5人と定員内看護婦1人が一般病棟に増員となるために、わずか3人の追加増員によって「10対1看護補助」への引き上げが実現することになります。

 わずか3人の追加増員によって、「2.5対1看護-10対1看護補助」が実現すれば、2対1への移行には、残り14人(=看護助手数-)の看護婦の増員が必要なだけになります。

 「これからはしなかったことで責められる時代」であり、「先行投資しても改善してゆけるものなら改善していこう」という姿勢が求められているとすれば、新年度からなすべき事はただひとつのはずです。

 次号では、再び増員の具体的手だてについて触れます。



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