No.16
2000.9.28
熊本大学教職員組合
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全大教第12回教育研究交流集会in札幌


熊大教組から7名参加



「大学における教育研究支援体制の充実」

 大学における教育研究支援体制の現状と課題について、技術職員、図書職員、定員外職員、行二職員、事務職員、教官など、各層から参加して教育研究支援体制について活発な議論が展開されました。以下に分科会の議論から学んだことをまとめてみます。
 まず、図書館職員について言えることは、大学の図書館に共通して定員外職員の比率が40%程度占めていることです。このことは大学における図書館の位置づけを物語っているのではないでしょうか。図書室や書籍、また、相当数あると思われる研究室が抱える眠っている状態の貴重な文献資料などの分散化された配置により、図書職員の専門性に対する要求が薄れている状況がそこにあります。その一方で、文献・図書の電子化が進行し新しい波がきている状況があります。これからの図書館のあり方を考えるとき、理想の未来像がなかなか見えてこない状況がここにあり、これらのことが図書館職員の雇用問題に陰を落としているような気がします。図書館は大学の研究や教育レベルを推し量るシンボル的な存在ではないでしょうか。このような状況ではたしてよろしいのでしょうか。
 次に定員外職員の問題も切実であります。特に最近は委任経理金によるパート雇用が増える傾向にありますが、諸外国の大学のように定員内職員と時間給的に不利にならない雇用条件を考えていただきたいと思います。また、これから増えるであろう専門性を持った職員のパート雇用についても同様のことが検討されるべきであり、定員外雇用も含めて、雇用する側は先を見通した雇用を行い、そのことに対して責任を持たねばならないと考えます。一方で正規の職員の働きが、パートや定員外職員と同じであってはならないはずであり、その事に対して自覚を促したいと思います。
 技術職員について役割として重要と考えられるのは、○商品化されていない独創的な研究装置の設計や取扱い、○大型で複雑な装置を操作する優れた技術、○研究を行なうための環境づくり、○物を購入する場合において、その製品またはサービスの善し悪しを判断する能力、○研究室の管理、保全能力などが考えられ、直接的に研究や教育に影響が及ぶと考えられます。最近、文部省研修や自主的な研修が行なわれるようになりましたが、上記のような支援効果を挙げるためにはもっと制度面での検討が必要であると思われます。例えば、○研究支援者のための大学における職業訓練コースの設置、○大学における研究支援者養成のための技術訓練、○研究支援者の役割の変化に対応した研究支援者の分類と等級付けの見直しなどの検討実施が必要と考えます。
 事務管理部門も含め、総じて大学における研究支援体制の充実、すなわち職員の資質やサービスの向上が、大学の教育・研究面での社会的貢献に必要不可欠な部分であることを分科会参加者が再確認したと思います。しかし、そこには安定した雇用と信頼関係がなければ成しえない事を当局は認識すべきです。

(参加28大学、34名、記K)



「 技術職員部会 」

 分科会「技術職員部会」は会場に入りきれないほどの盛会でした。内容的には従来の昇格昇級一辺倒から、昨今の独法化の動向から教育研究支援組織としての技術部および教室系技術職員のあり方について真剣に考える空気が感じられ、白熱した議論が展開されました。組織化とは、技術職員が所有している経験と技術力を公開、さらには高度な技術力を持つ、自立した技術職員組織を創造し、大学の教育・研究に広く貢献しながら、結果として技術職員の処遇の改善を図るものと考えるべきでしょう。今回はこのような動きを中心に分科会および交流会から得たものをまとめて報告します。
 組織化の状況 熊本大学工学部技術部で実働化を目指した再組織化がなされており、今回の分科会に参加して、その動きが他大学へも確実に波及してきていると感じました。岩手大学工学部技術部が今年度から組織を改組し、実働化への試行が行なわれており、来年度から本格始動の予定となっています。その他に福井大学工学部、静岡大学工学部、電気通信大学でも同様の検討がなされているようです。他の大学でもこのような試みが各大学の実状に照らしながら行なわれるでしょうが、この分科会での各大学のレポート報告などが大いに参考になり、各大学にしっかりとした基盤を持った教育・研究支援組織としての技術職員組織が確立され、社会的にも認知された大学の技術部が多く誕生することが期待されます。

 研 修 トピックスとして、在外研究員応募規定の改変(昨年までは学長裁量経費の在外研究員経費の応募は教員に限定されていましたが、今年度からは「等」が付き、「在外研究員等経費」として技術職員と事務職員も応募対象となりました。)により、岩手大学では教育改善推進費(学長裁量経費)により、今年度農学部、工学部の技官2名が、アメリカ、カナダの大学や研究機関に学長命で派遣されるとの情報がありました。派遣の目的は「技術支援体制及び技術組織の整備・強化のための視察及び調査」、「IT革命がもたらす先進的教育研究現場の視察及び調査」、「見聞を広げ国際感覚を養う」となっています。このような試みが全国立大学へ反映され、大学の教育・研究支援組織の整備に活かされる日もそれほど遠くはないと思われます。また、福井大学工学部のように学長裁量経費により技術職員研修が実施されている報告もありました。
 昇格・昇級 国立大学の行政職員が他省庁に比べて相対的に処遇が低くなっていること、および団塊の世代の処遇改善が進んでいない状況が東京大学やその他の報告でデータが示されました。以上の事と先述の組織化は関連していると考えられており、我々の技術部が自立し、今以上に教育・研究に貢献できる組織になること、また、技術職員の業務や研究成果を広く公開していくことが待遇改善への近道であると言えないでしょうか。

(参加23大学、2研究所、4高専、48名、記K)



定 員 外 職 員 問 題 交 流 会

 定員外職員問題交流会は集会2日目の15:15〜17:30までと3日目の午前中と、2日間に分けて開催された。京都大・名古屋大・北海道教育大・北海道大・福岡教育大・山口大・室蘭工大・福島大・東京大・山形大・岡山大・埼玉大・金沢大・大阪大・熊本大の15単組から19名が参加し、佐々木全大教副委員長の司会で交流会が進められた。
 初日は熊本大から提出された「医学部における定員外職員の待遇(俸給ダウン)をめぐる問題について」のレポートを中心に議論された。この問題は、全大教を含め加盟単組からも危機感をもって注目されており、熊本大の丸山がレポートの内容について説明した後、参加者から多数の意見等が出され活発な議論が交わされた。
 意見等の中で特に注目されたのは名古屋大からの報告で、報告者本人が数年前、熊本大と同じような状況になり、担当教授が経費負担軽減を図る為、同じ学科の数人の教授に仕事の分担を働きかけた。その結果、複数の講座から申し入れがあり、それらの講座の仕事も引き受ける形をとり、それらの講座にも人件費を負担してもらう事で解決した。
 また、山口大の図書館定員外職員からの報告では、図書館の管理課長から非公式だが"来年度から従来通りの人件費が出せるかどうか困難な状況になってきた"と云われ、熊本大と同じように俸給ダウンが実施される可能性が強いとの報告があった。
 その他の意見として、学長に対し定員外職員の位置付けを明確にさせること。最終的には任命権者である学長に、この事実を報告し学長に回答させる。組合が本人の了解をとり、組合が表面に出て取り組むこと。また、文部省等に対し、定員外職員の雇用概念(臨時・補助・季節職員)を改めさせる取り組みを実施すべき等、の意見が出された。最後に全大教側からメール・手紙等を通じて熊本大の当事者へ応援・激励文を出すことが提案され、参加者全員から了承された。
 2日目は熊本大以外から出されたレポートを中心に議論された。最初に岡山大から提出された「ILOパート労働条約(175号条約)と定員外職員運動」が報告され、報告後意見交換を行ったが、1994年の6月にILO総会で175号が採択され、すでに6年を経過しているが日本政府はまだ批准していないとのことであった。この原因として、日本では175号採択の1年前に「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パート労働法)が成立したためで、条約以上の内容を持つ法律改正を行う考えが政府にはまったく無いところにあるようだ。
 名古屋大からは「法人化と定員外問題」が報告された。報告では、これまで26年間の活動を振り返り、今後の展望を探り出す取り組みが紹介された。その取り組みとして独法化された場合の定員外職員の法的位置付けの学習会や、学内での位置付けを明確にする為に総長への「定員外職員の定員化と待遇改善及び雇用確保に関する要望書」(2000.5)の提出等が報告された。
 京都大からは「独法化等、定員外職員をめぐる諸問題」が報告され、事務組織再編(統合・一元化)と定員外職員、独法化と定員外職員、新再任用制度と定員外職員との新たな処遇格差問題・定員外職員(日々雇)の退職手当問題等、京都大に限らず全国的に問題化されている課題について報告があった。
 2日目の最後は参加者全員による各単組での活動報告等が紹介された。その殆どが定員外職員の組合加入の低さが報告された。特に、室蘭工大からは僅か1名(交流会参加者)のみで"1名では何をして良いかわからない"との意見も出された。全体的には"大学が独法化された場合定員外職員はどうなるのか不安で一杯"との意見が多数出され、全大教への今後の取り組み強化が要望され、2日間にわたる交流会が終了した。

(文責:丸山)



第12回教研集会参加感想文

 現状での国立大学としての存続は難しいが、国は国策としての学術研究や高等教育に責任を持つ必要がある。よって、国の意思を法人運営に反映させる仕組みを持つ独立行政法人制度の仕組みを活用する事が必要となった。
 しかし、独立行政法人通則法を100%そのまま国立大学に適用する事は大学の特性から不適切である事から、今回記念講演にて学術公法人私案の話しがあった。内容は詳しくは理解できなかったが、独立法人化される事は避けられないと思った。大学が独立法人化されることによって、大学附属病院が今後どうなるか動向はきちんと捉える必要があると思った。病院部門がどうなるかとの質問に講師はわからないという答えだった。病院部門が大学の中で唯一収入が望める部門だが教育・研究・医療の立場を守りつつ、現状のように労働強化されないようにしなければならないと思った。

(今田・奈須)


 

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