No.22
2000.11.6
熊本大学教職員組合
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「国立大学の現状と熊本大学の在り方について」
今こそ慎重かつ活発な学内議論を!


運営会議WG「国立大学の現状と熊本大学の在り方について(中間報告)」を提出

 今年5月に運営会議の下に設置されたワーキンググループ(以下、WG)が、10月19日「国立大学の現状と熊本大学の在り方について(中間報告)」を運営会議に提出しました。この「中間報告」は、副学長を座主とし、学長特別補佐1名、各部局の推薦を受けたメンバーにより発足したWGで10回の検討会議を経てまとめられたもので、すでに全学教職員に配布されています。(HP: http://www1.jimu.kumamoto-u.ac.jp/syomu/wgindex.htmでは、「中間報告」とともに議事録も公開しています。)なお、来年1月までには「最終報告」が提出される予定です。
 報告書全体は、WG設置目的等を述べた「I. はじめに」、国立大学の独立行政法人化問題に関連した資料の抄録を中心とした「II. 国立大学の置かれている状況の変化」、熊本大学の将来像と具体的改革案を提示した「III. 熊本大学の在り方」、「IV. おわりに」の4章で構成されています。
 WGは、第6回の会議後、新たに指名委員を加え、「教育部会」、「研究部会」、「地域連携・国際交流部会」、「組織運営部会」の四つの部会を設けました。今回の報告の主要部分は、それぞれの部会における検討結果をまとめた「III. 熊本大学の在り方」における熊本大学改革のための具体的な提案といえるでしょう。私たちは、様々な議論の場が設けられ、この「中間報告」の提言をめぐり慎重かつ活発な検討が行われることを願ってやみません。




運営会議WG「中間報告」に対する疑問点

 しかしながら、この「中間報告」の検討の方向性、ならびに今後の取り扱われ方に関しては、首をひねらざるをえない点が見受けられます。
 まず、独立行政法人化問題とこの報告書、あるいはWGとの関係です。周知の通り、国立大学協会は、独立行政法人通則法を国立大学にそのままの形で適用することには強く反対するという姿勢を堅持することを表明し、熊本大学長もこの立場を支持しています。「中間報告」も「I. はじめに」でこうした状況について、「国立大学に関する独立行政法人化の内容や法整備がなされていない現段階で、独立行政法人化そのものや、法人化後の熊本大学の在り方を論ずることができないことを意味している」と明言しています。にもかかわらず、その後の検討課題・提案の記述においては、「独立行政法人化後は」、「今後の独立行政法人化に向けて」、「法人化後を念頭においた取り組み」といった表現が少なからず見られます。独法化は前提なのか前提でないのか、暗黙の前提と考えた場合でも、念頭に置かれているのは「独立行政法人通則法」なのか「国立大学法人法」のような別物なのか不明で、検討の方向性あるいは前提が極めて曖昧であると言わざるをえません。
 報告書は、「II. 国立大学の置かれている状況の変化」の結論で、「全国の多くの大学関係者は、行財政改革や教育行政の観点のみから問題を取扱う不当性、危険性について見解を発表してきた」事実に言及し、国大協「設置形態検討特別委員会」と文部省「調査検討会議」に対して、「機会あるごとに、国立大学としての意見を反映させる努力を払うべきであろう」と述べています。しかし、この報告書からは、反映させるべき意見が見えてきません。それはとりもなおさず独法化に対する態度が曖昧だからではないでしょうか。そもそもこのWGが整理すべきだったのは、独法化関連の資料ではなく多くの大学関係者が指摘する問題点であり、ほかでもないこの報告書こそが国大協や文部省に対する意見反映のための重要な手段だったはずではないのかという疑問を拭えません。
 また、今後の「中間報告」をもとにした今後の全学議論に関しても、強い危惧の念を禁じえません。たしかに、「IV. おわりに」で、「今後は、中間報告に対する本学構成員の幅広い御意見を伺った上で、さらに、WG会議及びWGに設置された4つの部会の検討によって、最終報告の作成に取り組みたい」という意思表示がなされています。しかし、「パブリック・コメント」という形で吸い上げられた意見がどの程度「最終報告」に反映されるのかは極めて不透明です。そもそも、WGは報告書作成に至る過程で「できるだけ広く全学的範囲の意見がWGの議論に反映するように、各部局からの委員が、それぞれの部局での意見を吸収」したとしていますが(「I. はじめに」)、このような意見反映の事実は本当にあったのでしょうか。組合の調査によれば、ボトム・アップの手続きが行われた部局は皆無で、現実には意見反映が軽視されています。限られた時間という制約の厳しさは大いに斟酌されてしかるべきでしょう。が、その場合にはその事実に基づき、今まさに「中間報告」に関して本格的な学内議論がなされるべきではないでしょうか。ところが、「IV. おわりに」における、広い意見聴取を謳った後の結論は次のような驚くべきものです。「改革は、本学の構成員1人1人が真剣に考えて取り組むことが必要である。このため、運営会議には、WGの提案した内容を確実に実行に移していただくことを強く求めたい。」これでは、真剣に改革に取り組む本学構成員の条件とは、WG案を承認することである。すでに各部局での意見吸収はすんでいるのだから、今後の「パブリック・コメント」も提案内容に沿わないものは「最終報告」に反映させない、と言っているようなものではないでしょうか。




慎重かつ活発な学内議論を

 このような問題点の指摘は、「学内審議」や「ボトム・アップ」を盾に取った揚げ足取りに過ぎない、と考える向きもあるかもしれません。しかし、この報告書に見え隠れする強引な改革への衝動は、上述した報告の主要部分である「III. 熊本大学の在り方」にも色濃く反映されている可能性が高いと思われます。もちろん、多岐にわたる提案事項の中には多くの大学構成員が有意義とみなすような提言もあり得るでしょう。しかし、現場を知る構成員、あるいは今までその分野で議論を積み上げてきた構成員にとっては予想だにできなかった提案が含まれている可能性は否定できません。
 私たち組合は、このような性格の「中間報告」がいつのまにか「最終報告」として一人歩きする事態を回避するためにも、今こそ開かれた議論の場が様々なレヴェルで設けられ、そこで国立大学の現状と熊本大学のあり方について慎重かつ活発な学内議論が行われることを強く主張します。組合としても、今年中に討論会等を開催したいと思います。その場を有意義なものにするために、内容・形式等に関して御提案がございましたら組合事務所まで是非お寄せ下さい。



 

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