No.35
2001.2.21
熊本大学教職員組合
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2対1看護には相当数の看護補助者が配置されている
−−病棟婦(看護補助者)の大幅削減問題(その1)−−

 来年度、熊大病院には定員外看護婦23名の配分(増員)がなされます。ところが、この裏側で、看護補助者(病棟婦)を現在の半分にまで削減しようとする計画が浮上しています。看護婦が増えても、看護補助者が大幅に削減されようとしているのです。これによって、これまで看護補助者が行っていた業務を看護婦がこなさざるをえないことになり、看護婦の増員が医療事故の防止や看護業務の改善に全く繋がらないことになります。

第1表 全国各種病院の一般病棟の看護補助者数(実人員)
患者100人当たり看護補助者数 熊大病院の一般病棟に換算した場合の看護補助者数
全国平均 7.40 50.02
2対1病院 5.36 36.22
2.5対1病院 6.02 40.71
3対1病院 11.45 77.42
一般病院 10.62 71.77
総合病院 5.87 39.65
特定機能病院 5.48 37.02
都道府県立 3.34 22.61
市町村立 5.05 34.14
日赤 5.61 37.96
済生会 6.78 45.80
私立大学 7.47 50.48
国立病院(厚生省) 4.34 29.31
国立大学病院 2.75 18.59
熊本大学病院 2.18 14.75
(典拠)『日本看護婦協会調査研究報告』,No.50,pp.39-41,118により計算。

 第1表は、全国各種病院の一般病棟の「入院患者100人当たり看護補助者数(実人員)」を示しています(日本看護協会「95年病院看護基礎調査」)。第2表は、全国の2対1看護の一般病棟の看護要員(実人員)の構成を示しています(同「96年病院看護職員の需給状況調査」)。
(註)両調査はいずれも実人員数調査であるため、熊大病院の一般病棟の看護補助者(看護助手)数については配置数16.75人から外来兼務者2名を減算して、14.75人として計算。患者数については、00年10月の患者数683人から特定入院料患者数7人を減算して、676人として計算。看護婦数については配置数342人から、外来兼務者19名を減算して、323人で計算。

第2表-A 看護要員の構成〔単位%〕
2対1看護の一般病棟 熊大病院の一般病棟
看護婦 84.3 95.6
准看護婦 7.6
看護補助者 8.1 4.4
(典拠)『日本看護協会調査研究報告』,No.51,p.14.

第2表-B 看護婦・看護補助者1人当り患者数
2対1看護の一般病棟 熊大病院の一般病棟
看護婦 1.76 2.09
看護補助者 20.1 45.68
(典拠)同上。

 この2つの表から、熊大病院一般病棟には看護補助者(看護助手)が少ないこと、2対1看護でも相当数の看護補助者が配置されていることが、明かです。

熊大病院の一般病棟には看護補助者(看護助手)が少ない

 国立大学病院の一般病棟の看護補助者(看護助手)は各種病院の中で最も少なく、熊大病院の一般病棟の看護補助者(看護助手)はそれよりもさらに少ないことが分かります。熊大病院の一般病棟では、国立大学病院と比較して3.84人の、2対1病院と比較して21.47人の、私立大学病院と比較して35.75人の不足となります。こうした看護補助者不足のため、熊大病院では看護補助業務の一部を、病棟婦(外部委託)によって補完せざるをえないのです。
 驚くべき事に、熊大病院当局はこのそもそも少ない看護補助者をさらに削減する計画を企てています。国立大学医学部附属病院長会議(00年6月22日)に提出された資料の中で、熊大病院当局は現在8人の定員内看護助手を遠からず全廃する計画を明らかにしています。つまり、熊大病院当局は、病棟婦であれ、看護助手であれ、看護補助者を大幅に削減しようというのです。
 それと同時に、熊大病院当局は入院患者数をさらに増やす計画を明らかにしています。すでに熊大病院では96年から99年の3年間に、看護要員数にほとんど変化がないまま、患者数(退院患者数)が一方的に30%増加しました。現在熊大病医院当局は稼働率90%-平均在院日数28日以内という目標を掲げていますが、これを患者数に換算すると99年度と比較して10.2%、96年度と比較すれば43.1%増えるということになります(第3表参照)。患者数が増えれば必然的に看護業務や看護補助業務が増えます。にもかかわらず、熊大病院当局は看護補助者の大幅削減を企てているのです。熊大病院当局は、患者数の増加に伴って増える看護補助業務を、いったい誰に担わせるつもりなのでしょうか。

第3表 患者数の増加
稼働率 平均在院日数 1カ月あたり退院患者数
96年度 86.1 40.8 497.1
97年度 89.1 40.0 522.1
98年度 89.8 34.0 617.1
99年度 88.8 31.9 645.6
熊大病院の目標 90.0 28.0 711.5

相当数の看護補助者の配置無しに2対1看護はありえない


 『経営戦略特集号』第9号は、2対1看護を熊大病院の「当面の目標」としています。診療報酬上2対1看護では看護補助料を算定できません。にもかかわらず、2対1看護の一般病棟には相当数の看護補助者が配置されています。前掲第1表によれば、標準的な2対1看護の一般病棟には、患者100人あたり5.36人の看護補助者が配置されています。これを熊大病院の一般病棟に換算すれば、36.22人の看護補助者が配置されている(熊大病院では看護補助者が21.47人不足している)ことになります。
 また前掲第2表は、2対1看護の一般病棟の看護要員の構成および看護婦・看護補助者1人あたりの患者数を示してます。看護要員の構成からしても、看護補助者1人当りの患者数からしても、熊大病院の一般病棟の約2倍の看護補助者が配置されていることが分かります。 要するに、2対1看護とは、相当数の看護補助者の配置によって成立しているのです。「新看護体系では、2対1看護料をとる場合は看護補助者料はあわせて算定できないが、実際には相当数の看護補助者が配置されている」(『日本看護協会調査研究報告』、No.51、1997)のです。
 全国の病院は相当数の看護補助者を配置しているだけでなく、今後3年間に、看護補助者を「現状維持」(53.4%)ないし「増員」(16.69%)する計画を明らかにしており、「削減予定」の病院は10.29%にすぎません(第4表参照、日本看護協会「00年看護職員需給状況調査」)。熊大病院のように看護補助者の削減を構想している病院は、少数派です。それどころか、熊大病院のように、患者数の大幅な増加と同時にそもそも少ない看護補助者をさらに大幅に削減することを計画している病院は、皆無のはずです。

第4表 今後3年間の増員計画〔%〕
増員予定 現状維持 削減計画 未定 無回答
看護職員 48.0 37.3 2.5 8.7 3.5
看護補助者 16.6 53.4 10.2 11.7 8.2
(典拠)日本看護協会「2000年病院における看護職員需給状況調査の概要」

 

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