No.54
2001.4.18
熊本大学教職員組合
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熊本大学事務一元化アンケート結果解析

  熊本大学教職員組合は、熊本大学で事務が一元化されれば、深刻な問題が起きる可能性があるので、その実施に慎重であるべきだと主張してきました。実施4ヶ月後には、その影響についてアンケート調査を行い、結果を学長交渉資料として提出しました。しかし、このアンケートは一元化実施間もない頃であったことから、幾分かの戸惑いや不慣れさが含まれ、事務一元化の本質を探るまでには至りませんでした。その反省から、実施から一年以上が経過した現在、一元化の前後で仕事の効率化や業務量に変化を感じているかどうか等を調査するアンケートをもう一度実施しました。その集計結果については既に「赤煉瓦」No.33(1月29日号)でお知らせしましたので、ここでは集計結果の内容について実施目的に視点をおいた分析と考察を行います。
 回答は設問に対して幾つかの選択肢があり、その選択理由については複数回答も可能としました。また、自由記述形式も採用したのは、文章による回答は回答者自身の言葉が述べられ、現状を把握する上できわめて重要な情報を提供してくれるものと考えたからです。

 まず、このアンケート集計結果の解析にあたって、前提となる事項を整理しておきます。
(1)アンケートは、平成12年12月1日現在で熊本大学に所属する事務官、事務補佐員のすべてを対象に行いました(アンケート配布総数:476)。そのうち回答を得たのは52通であり、回収率は約11%です。この回答率からみて、アンケートの集計結果が統計的な意味で母集団全体の意志を十分に反映しているとは見なせないかもしれません。しかし、自由記述の中には職場の上司や同僚に気軽に言えるような内容でないものが多く見られることから、これらの声は氷山の一角と考えるのが妥当ではないでしょうか。少なくとも、一元化による現実の影響の一端は間違いなく知ることができます。
(2)アンケートの回収は職場区分に基づいていなかったことから、回答と職場との関係を把握することはできていません。ただし、まとめて回収した医学部の回答数は20でした。
(3)部局による違いがあるとの指摘は文章回答の中にもみられます。職場および職種によって回答しにくい外的および内的状況があるかも知れませんが、この点についての考慮はしていません。
(4)一元化に対する賛意より、疑問や要求を持つ人の方が回答をよせる割合が高い傾向にあるかも知れません。しかし、少なくとも表明された結果は一元化のあり方に何らかの検討を求めるものであると認識します。
 以上のことを考慮しながら、アンケートの集計結果を解析します。

○事務一元化は事務処理の効率性を高めたか?
「Q1.事務一元化前後を比べて、事務処理の効率性は高まったと思われますか。」
 この問いに対する結果は、「非常に効率的になった」は1、「少し効率的になった」は11で、両方あわせてこの問いへの回答数のほぼ1/5でした。事務処理量の軽減と時間の使い方の効率性だと考えられているようです。また、「移行期による混乱のため、効率的になったとは言い難いが、問題点を改善し、分担を明確化していけば効率性は高まると思う。但し、人員削減は続くので、事務処理量は減ることはない」との見解も出されています。
 他方、「少し効率が悪くなった」とする数は10、「非常に効率が悪くなった」とする数は14であり、両者を併せて回答数のほぼ1/2となります。「変わらない」が3、あるいは「わからない」が11であり、「効率的になった部分と反対の部分がある」とする文章回答もあります。しかし、たとえば「一元化前は学部内に庶務・会計等あり、すぐいろいろな事がその場で解決できたけれど、今は契約室(会計等)まで連絡をとったりして、かえって面倒で、不便です」という回答に代表されるように、今回のアンケートを見る限り、一元化によって全体的に事務処理の効率性が高まったとは考えられません。むしろ非常に効率が悪くなったと感じている回答が多くみられ、一年以上を経過した後も一元化の効率面での効果は上がっていないのではないでしょうか。従って、慣れ・不慣れの問題ではなく一元化そのものが本質的で重大な不十分要因を含んでいると考えられます。

○事務一元化は仕事の負担を軽減したか?
「Q2.事務一元化前後を比べて仕事の負担に変化がありましたか。」
 事務処理量が変わらなくても、Q1で問うた処理効率が悪くなれば、仕事の負担は増えたと感じることになるでしょう。「非常に減った」は2、「少し減った」は6でこの問いの回答総数に対して約1/6です。他方、「少し増えた」は17、「非常に増えた」は11で半数以上におよび、「変わらない」6、「わからない」11よりも高い率です。半数以上は仕事の負担が増えたと回答していることになります。
 Q1およびQ2に対する効率化および仕事負担の回答で「わからない」がともに11あったことで、事務一元化の影響を直接受けない職種もかなりあることがわかります。が、「(例えば事務局への問い合わせなど)単純な仕事の処理量が増加した」など一般には効率性が悪くなり、仕事負担が増加したと感じている人が少なくないことが明らかになりました。「相変わらず事務局が学部へ仕事を回し、調査物や資料、掲示依頼は多く、一元化の意味がない」や「一元化の前と変わらないどころか逆に増えています」、「特に現場(学部の窓口)の事務職員の救済は急務です」、「現場を厚くしないのでこの難局は乗り切れません」など、単に仕事面だけの問題に留まらず、人的配置や人事に関する不満が述べられています。これらの内容は、ストレスによる健康被害や人間関係への悪影響を示唆しており、緊急に改善されなければなりません。

○事務一元化は労働時間の短縮を生み出しているか?
「Q3.事務一元化前後を比べて労働超過勤務時間に変化がありましたか。」
 ここでは労働超過勤務(すなわち、超過勤務手当の付かない、いわゆるサービス残業)の時間の増減を問うものですが、月10時間以上の減は1、それ未満の減は3であったのに対し、「変わらない」が21で最も多く、次いで「10時間以上」増えたとする回答が9、10〜5時間および5時間未満がともに4でした。これまでと変わらないとする回答が最も多かったことに目を奪われると見過ごされますが、文章回答には次のような表現があります。
  • 1〜4月、家に帰れないことも何日もあった。
  • 家に帰って寝るだけ、家庭崩壊寸前です。
  • 8:00〜夜○:○○ 16時間労働も2〜4月は連日続いた。これは労働法違反ではないか。
  • サービス残業を通り越している。これは組織的な犯罪である。
 このような激しい不満は、部局での労働負担の偏りが明らかに生じており、極端な加重労働を強いられている部門があることをはっきりと示しています。根本的な改善が急務です。

○事務一元化は教官、学生の賛同を得ているか?
「Q4.事務一元化について、教官、学生の反応はどうですか。」
 これは教官と学生の反応に関して事務職員がどのような意識を持っているかの問いかけですが、「教官、学生の中にも事務処理上の戸惑いが少し感じられる」とするものが23で最も多く、次に「従来に比べて教官、学生から事務処理上の不満が多く寄せられるようになった」とするものが13ありました。これは「わからない」が7、「特に反応がない」が6に対して圧倒的であり、多くの教官および学生が一元化から一年以上経過した後も戸惑いや不満を抱えていることが知られます。特に文章回答にあるように、「学部での細かな対応が出来なくなり」とか、「窓口、特に学部の状況は悲惨極まりない。学生サービスの低下は避けられない」、「学生への窓口の縮小、減少は今後もっと考えていかなければならないが、教官については、このような事務量が増加しているのに事務官数が削減されている現状を理解してもらい、もっと積極的に大学の一員としての業務を受けもってもらいたい」や「部局事務が非常に冷たく、部局事務の存在意義がないと教官から相談を受けたり、話しを聞かされた」にも示されているように、事務一元化が、学生と事務官、ならびに教員と事務官の関係にも直接影響を及ぼしていることがわかります。

 「一元化により仕事の責任の所在がより不明となり、部局事務の仕事の無責任さが非常にめだつようになった」や「中途半端に一元化した為、学部の機能はマヒしている。一人でも病気や事故で欠員が生じれば、その学部の業務はストップする。事実、このままでは'親の死に目にも会えない'と不安である」等の自由記述は、事務一元化が仕事そのものの増加や効率の問題に留まらず、職場環境、人間関係や健康問題、家庭崩壊にまで至りかねない大きな問題を抱えていることを如実に示しています。「元のままがよっぽどよかった」とは、多くの事務職員の正直率直な気持ちではないでしょうか。

 以上の考察を踏まえて今回の事務一元化アンケートを総括しますと、効率、仕事量、負担量、対応、いずれをとっても従来より優れていると判断する状況にはありません。むしろ、事務一元化により、事務の効率性の低下、仕事負担の増加、超過勤務時間の増加、および教官、学生に対する対応の不備が生じていることが読みとれます。「一元化への移行期間が短かった為、職員へのPR不足と担当者も戸惑いながらの状況。いろいろな点で"たらい回し"が多くなったように感じる。見切り発車の感が強い」と一元化そのものの欠陥を指摘する回答もあるように、定員削減問題や独立行政法人化問題とも絡み、事務一元化は早急に改善や見直しを余儀なくされている状況にあると判断されます。特に学部事務の効率の悪化や処理量の増大、その処理のための超過勤務、教官、学生への対応の不十分さを解消するためには、緊急かつ適切な人員配置が求められています。

 
私たち熊本大学教職員組合は、今回のアンケート結果を大学当局に提示し、大学当局がこの結果を真摯に十分検討し、大学の事務職員の働く環境と健全な人間関係の保持を目的として、早急な改善策を示し、かつ実行するよう強く要求するものであります。


 

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