No.63
2001.6.8
熊本大学教職員組合
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2000年度 学長懇談報告

日時: 2001年4月27日(金)11:00〜12:10
場所: 熊本大学学長室
出席者: (当局) 江口学長、角地事務局長、糸永総務部長、熊谷人事課長、田代人事課長補佐、石坂人事課専門員、本田人事係長
(組合) 丸山執行委員長、新井副執行委員長、首藤書記長、村里書記次長、高橋執行委員

<当局>
今日の学長懇談は1時間を予定している。まず学長から交渉項目について回答し、その後、組合からの質問をうける。そのようにすすめたい。
<当局><組合>自己紹介。
<組合>本日はご多忙中にも関わらず、学長をはじめ当局の皆様にもご出席いただき感謝している。組合は発足以来、熊本大学で働く教職員が安心して働ける職場、また働き甲斐のある職場を目指して、これまで取組んできた。この懇談も、その一つの取組みだ。その点を十分考慮していただき宜しくお願いしたい。

1. 看護婦増員及び待遇改善について   12/11要求書1
(1) 増員によって2:1看護体制を実現して労働条件を改善すること。
1) 夜勤体制を3人以上に強化して回数を月8回以下にすること。
2) 救急外来に適正な人員配置を行うこと。
3) 年次休暇の取得日数を全国平均(14日)に引き上げること。
4) 超過勤務時間が短縮できるような体制を整えること。

<学長>病院長の努力は理解している。改善が必要な事柄については二人三脚でやっている。13年度の看護婦増員が全国平均以上の23名の確保には感謝している。国家公務員への世間の風当たりが厳しい中、全国で773名もの増員は評価すべきだ。病院は大変だということは聞いているが、一度に充足することはできないが、大学としてできることからやりたい。

2. 国立大学の独立行政法人化について   12/11要求書5
(1) 国大協「設置形態検討特別委員会」と文部省「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」において審議が行われているが、通則法に基づく独法化には反対という学長の立場に変化はないか、見解を示すこと。
(2) 運営会議ワーキンググループによる中間答申(最終報告を含む)「国立大学の現状と熊本大学の在り方について」は、独法化の妥当性や問題点の検討を欠き、審議手続きのあり方にも問題がある。この答申の内容、審議手続き、ならびに今後の扱い方に関する見解を示すこと。

<学長>
(1)通則法は大学にそぐわないし、通則法に基づく独法化には反対ということを鮮明にしており、不変である。通則法では制度設計できない。自民党、文教部会の麻生氏もそのように言っている。ただし、法人格を得ることには意味がある。自律性の確保が大事だ。英・仏・独など、外国では法人格が与えられている。経費の割合は産業界から4〜5割、残りを国からで運営すべきだ。米の州立大も同じだ。現在財務会計制度委員会委員を務めているが、国としても調査検討中である。
(2)中間答申についての手続は誤っていない。運営会議のメンバーとして各学部の長も参加している。学生、職員、教官の一人一人が関心を持ってほしいので、議論の場を広げて頂きたい。特に学生の関心が低いのは残念である。日常的に議論して学長へ対案を示してほしい。WGにも独法化を念頭に置かないでと言ってある。中間報告をフィードバックし、意見の集約をして最終報告を出した。運営会議での今後の改革の指針にしたい。実施は今後評議会にかけてからとなる。

3. 大学の組織運営体制について   12/11要求書6
(1) 今年度、設置・導入された運営諮問会議、ならびに副学長制度の今後のあり方に関する見解を示すこと。
(2) 運営会議から大学教育研究センター長が外れている現状は、教養教育の実施や改革をめぐる審議に大きな支障をもたらしかねない。このことに関する見解を示すこと。
(3) 地道な教育・研究を継続的に支え得る今後の予算配分方法の具体的内容を明確に示すこと。
(4) 教養教育への貢献は予算的に評価されるべきだが、前年度に比べ今年度「教育用図書および教材費」が大幅に削減された。このことに関する見解を示すこと。

<学長>
(1)メンバーには大学を熟知している方、関心を頂いている方を地元や関西・東京から選んだ。助言勧告について100%いいなりになるつもりはない。一般的な批判を諮問答申に主体的に取り入れながら判断する。副学長は現在2名だが5〜6人必要だと思う。学長にリーダーシップを集中させるのは無理。分担したり、委員会設置により学長以外で可能なものは決めてもらう方が円滑に運営執行できる。大学は企業とは違い、学生、教職員の考え方の整合性を求める必要があり、ワンマンではだめだ。
(2)当初は支障を懸念し、実際センター長と副学長の間の意思疎通が円滑に行かないこともあったが、副学長が教養教育の代表も兼ねた形でうまくいくようになった。直接大教センター長に会って相談もしたし、大学教育委員会にはセンター長もメンバーである。運営会議の情報は、直に副学長からセンター長に伝わるので、まず心配はない。
(3)地道な教育研究というが、教育研究はすべからく地道である。日本では研究者の質の良し悪しとは別にカレントな研究に金が出る傾向があるが、カレントなものは実はピークを過ぎている。本当はこれから先を見通しできる基盤的なものであるべきで、予算は大学が自主的に自由配分することが望ましい。全部ぶんどり合戦にしたら大変だ。
(4)大教センターの予算は減額された。背景に平成12年度から教育研究特別経費がすべてカットされたことがある。しかし、学長裁量経費による補填を行い、8900万円から8100万円へのダウンで削減率は一番小さい。

4. 教員の「任期制」について   12/11要求書7
(1) 日本人教員の任期制は教育・研究の専門性に応じて導入することができるとしているのに対して、外国人教員の任期制は外国人であることを理由に一律に任期を設ける点で現行の「熊本大学外国人教員の任期に関する規則」は差別的である。外国人も日本人と同様の扱いにするよう現行の規則を改正すること。

<学長>不合理という空気もあるが、評議会でもそう簡単に改正できない。中国、韓国、ヨーロッパ、米等それぞれの国の方の考え方が異なり、一律でない。差別的と考えるのは短絡的だ。混乱を生むものについては将来の検討課題。必用に応じて任期制で無い場合も視野にいれる。

5. 教官の待遇改善について   12/11要求書16
(1) 現在進行中および今後予定される改革の中で、教員の身分、教育・研究環境が悪化しないよう人員をきちんと確保すること。特に、教養教育の全学的運営の主旨を確認・徹底すること。

<学長>1、2年生の時だけに教養教育をというのは間違いと思う。学士4年間、院、博士課程のそれぞれの期間常に行われるのが真の教養教育である。教養の先生が先生の希望で移籍したのは誤りと思う。学部の先生の意識革命がないといけない。教育に対する評価を、待遇改善に向けて公平に行なうのは大変で、その方法を模索中である。

1. 看護婦増員及び待遇改善について   12/11要求書1

<組合>重要なところで待遇が改善されていない。救急外来の看護婦に出席してもらっているので話を聞いて欲しい。
<学長>現場に立ち入る機会がないので聞かせてほしい。非常勤の方の労働は知っている。自分も病院に行ってみて受付が明るくなり、対応が良くなったと感じる。皆さんの努力が感じられる。大学の付属病院は将来、特定機能病院としての機能を発揮しなければいけない。風邪とかは一般の病院で、大学病院は難病や研究を必要とする患者を受け入れるべきである。看護婦さんの仕事量も増える。人と金がいることで、容易に解決はできないが、改善に向けて努力したい。病院長に話はしたのか。
<組合>定員外看護婦が23名増員され、2:1看護が実現したが、看護補助者(病棟婦)を半分に削減され、看護婦がその業務を行なわなくてはならなくなった。そのためプライマリー看護も出来なくなっている。超勤や遅れ勤務などを行なわなければならない状況だ。また、救急外来ではICUからの看護婦の持ち出しになっており、夜勤回数が以前よりさらに増加し、10〜11回になっている。教授が外傷の専門であることから、交通事故や呼吸停止・心拍停止などの重症な患者が搬送されてくる状況にある。0.68人という看護婦の配置では不安だ。改善をぜひお願いする。
<学長>そのようであれば心配だ。過重労働や患者に危険な状況があれば改善しなければならない。
<組合>増員による2:1が生きていない。患者も病院を選ぶ時代であり、2:1体制は事故も少ないはずなのに、病棟婦削減で良い2:1体制が保てない。2:1体制は県内では大学病院が一番遅れていると思っている。
<学長>改善を看護部に話したら如何か。医学部は臓器別診療体制なので、教育も整合させていかなくてはいけない。組織上混乱もあろうが、一方では実績も上げたい。どうしても無理が出る。病院長と協議してみたい。

2. 国立大学の独立行政法人化について   12/11要求書5

<組合>学長の通則法による独法化には反対という立場を確認できたのは良かった。
<学長>通則法による独法化には反対という立場は不変だ。
<組合>しかし、国大協の長尾委員長の試案では、「国立大学法人法を独立行政法人の基本的な枠組みを参考にして作る」とあり、危惧している。
<学長>長尾私案は10数ページもあり賛否両論ある。通則法下の独法化には100%反対だが、法人格を持つことはいいと思う。
<組合>旧帝大と異なり、いわゆる「地方大学」は法人化することにすら危機感を持っている。
<学長>国大協内でも様々な立場がある。蓮見委員長も決をとらない。とったら割れるのがわかっているのからだ。旧帝大・地方国立大という考え方は止めるべきだ。そのような発想では熊本大学は良くならない。ただ反対するだけでなく、建設的な対案を出してほしい。
<組合>組合の基本的な立場は、教育・研究・労働条件の悪化の阻止だ。
<学長>だったら、待遇改善だけを問題にしたらどうだ。
<組合>組合はボトム・アップの審議が行なわれる事を主張してきた。学長は、大学構成員の関心を高めるため議論の場を広げるべきだと述べたが、「中間報告」に対する意見聴取が、あのような無謀な日程で満足に出来るわけがない。その間、全学に対する活発な議論を呼び掛けたのは組合だ。

3. 大学の組織運営体制について   12/11要求書6

<組合>やはり、大教センター長が運営会議から外れていると、現場からの要望への対応が難しい事がある。
<学長>当初、戸惑いはあったようだが、現在ではうまく対応できていないとは考えていない。
<組合>個人の資質で、円滑に運営されるかどうかが決まるような体制はおかしいのではないか。先程副学長を増やす話が出たが、センター長が副学長として運営会議に出席する事もあり得るということか。
<学長>それはどうか。
<組合>大教センターではコピーを制限させられる。予算も大幅に削減された。現場からは、これは教養教育を軽視しろという事か、という声が上がっている。
<学長>大教センターがコピーの制限するのはおかしい。しかし、学部のコピーも使用していいはず。教養部廃止後は、全学的運営が原則だ。教養教育の重要性に鑑み、全学協力体制に向けて改善がなされてきている。

4. 教員の「任期制」について   12/11要求書7

<組合>今回の特例改正措置については、組合としても評価している。しかし、誰よりも当事者たちが、差別的だと感じ、不安に思っている事を認識して欲しい。

5. 教官の待遇改善について   12/11要求書16

<組合>「教養の先生が先生の希望で移籍した」というのは事実と異なる。
<組合>強引な説得を受け、希望もしていないところに行かざるを得なかった教員も多い。一方、旧学部教員の教養教育への意識は相変わらず低く、抜本的な解決には何一つなっていない。教養教育関係の委員には、依然として旧教養部教員ばかりを選ぼうとする傾向にあるのが現状だ。


 

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