No.16
2001.11.2
熊本大学教職員組合
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「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告)の問題点 
学内での学習討論集会開く


 去る10月30日、くすの木会館にて、「『新しい国立大学法人像について』(中間報告)は大学を何処に導くか」と題して学習討論集会を行ないました。参加者は約50名、熊本県国家公務員労働組合共闘会議をはじめ学外からの参加もあり、この問題への関心が学外にも広がりつつあることを実感しました。報告は執行委員会から市川副委員長、大学改革検討専門委員会から萬羽委員、さらに熊本県立大学、独立行政法人九州沖縄農業研究センター、熊本私教連、それぞれから補足報告を行なっていただきました。また集会の最後には、声明「『新しい国立大学法人像について』(中間報告)に反対する」を発表しました。以下、報告の内容を簡単に紹介します。
 市川報告は、「中間報告」について、これまでの経過や調査検討会議の構成を紹介しつつ、今回の中間報告の特徴と問題点をわかりやすく的確に示すものでした。最後にまとめとして、中間報告は、「法人化の必要性について説明がない」「通則法と変わらない内容である」「遠山プランの実現をめざすものになっている」「国や企業にとって扱いやすい大学像を示している」の4点を指摘、「中間報告」の法人化案は、大学の教育研究活動にはおよそなじまない内容のものであると結論づけました。
 
萬羽報告は、主に「大学の構造改革」いわゆる遠山プランの背景を明らかにするものでした。氏は、遠山プランが財界の政策文書のたんなる焼き直しにすぎず、その狙いは大学の階層化、さらには国民の階層化であると指摘しました。また財界が、大学教員の人材派遣組織の構想まで提起していることに触れ、法人化の先にある危険な動きも注視しておくべきことを強調しました。
 県立大学からは、9月の県議会での潮谷発言によってにわかに動きはじめた「独立行政法人化」問題について報告がありました。報告者は、県の文書が示す独法化の根拠は、まったく理由になっておらず、単に時流に遅れまいとする発想にすぎないと批判、国立大学の独法化が行なわれれば、なし崩し的に公立に適用され、財政難の自治体では、大学のリストラ強化に悪用されかねない危険を指摘しました。その意味で、県立大にとっても、国立大での私達の闘いはきわめて重要であり、今後の県立大との共闘の必要を改めて認識させるものでした。
 
 熊本私教連からは、私立学校法人における理事会制度の問題点がリアルに示されました。一部の私学では学外理事が、校長や教員の人事を牛耳っている実態が紹介され、一般の教職員の声が反映されず、役員が善意の人であることを前提にした現在の理事会制度の問題が指摘されました。「相当数の学外者」の参加による大学運営という「中間報告」の構想がもつ危険な側面が、私学の事例からいっそう鮮明になりました。

 独立行政法人農業研究センターからの報告からは、先行事例として多くの情報を得ることができました。たとえば、「中期計画には効率化目標として運営交付金の年率1%の削減を明記させられた」「研究は5年で終わる課題しか設定できず、5年後には同じ課題で研究計画が出せない」「次年度に減額される可能性を考え、予算の繰越は実際上できない」などです。また独法化後、組合は労働協約を当局と結ぶことになりますが(50%以上の組織率が必要)、農業研究センターでは、現在のところほとんど以前の待遇と労働条件を維持しています。それは、90%以上の組織率とこれまでの粘り強い独法化反対の取り組みがあったからです。私達が教訓とすべきは、組合の組織拡大と運動の強化が、独法化後の当局との力関係に決定的な影響を与えるということです。

 全体として、「中間報告」の問題点がいっそう明らかになると同時に、今後の運動の課題を改めて確認することのできる学習集会となりました。


  
「中間報告」反対声明の発表について
 熊本大学教職員組合は、声明「『新しい国立大学法人像について』(中間報告)に反対する」を10月29日付けで文部科学省にパブリックコメントとして送付、30日の学習討論集会の場で発表しました。これにいたる経緯についてお伝えします。

 組合は、一昨年以来、国立大学の独立行政法人化に反対の立場を明確にし運動を展開してきました。現執行委員会も基本的にはその立場を継承し、この間の活動を進めてきました。また近く公表が予定されていた「中間報告」に対しては、学内での学習・論議を深めると同時に、声明を公表し、広く国民に訴えることの必要を確認してきました。

 9月27日、文部科学省の調査検討会議が「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告)を公表しました。中間報告は、建前は個別法を予定していますが、内容はほとんど独立行政法人通則法と変わるところがなく、到底容認できるものではありません。執行委員会は直ちに書記長談話を発表し、翌日の28日には、執行委員を含む拡大大学改革検討専門委員会を開き、「中間報告」の内容の分析と反対声明の素案づくりを行ないました。そして10月10日の執行委員会で再度「反対声明」の文案を検討、その後四役で最後の修正を行ない、今回の公表に至りました。

 この反対声明と30日の学習討論集会の議論を契機に、学内論議をさらにいっそう深めるとともに、学内に留まらず、広く世論を結集するため国民との対話と共同を重視した運動の展開に向けて、組合員のみなさんの支持と協力を訴えるものです。

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