No.19
2001.12.19
熊本大学教職員組合
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繰り返される無責任な意志決定−新学年暦問題ー

 11月29日の評議会で、新学年暦の2002年度実施が承認されました。教養教育が新学年暦(前期8月2日まで、後期10月1日から)になる一方で、専門教育の新学年暦の実施については各学部に判断がゆだねられたため、2002年度は医学部と教育学部が旧学年暦の使用を決めました。結果として学内で夏休みの時期が3週間以上もずれた学年暦が併用されることになり、とりわけ医学部・教育学部の学生は事実上の夏休みの短縮で大きな不公平、不利益を受けることになりました。こうした事態を引き起こした根本的な原因は、この間の意志決定手続きにあります。なぜこういうことが起こったのかこの間の経緯を含めてお知らせします。

この間の経過
 学年暦の問題は大学教育委員会(委員長:良永副学長、委員:各学部評議員1名+教務委員長)の第3部会で扱われていました。そこでの議論の中心は9月までは3学期制案でしたが、教養教育実施会議をはじめ多くの学部からの反対意見、他大学の実状から、第三部会ではこの案を取り下げました。そこで、第3部会は学期の区分の変更を学年暦問題の中心に据え、11月13日の大学教育委員会には「遅くとも平成15年度までには実施する」という形での報告を行うことにしました。この間はわずか2ヶ月で、部会の審議の中ではクーラーの設置や電気代の問題を理由に強い反対意見が出されました。
 一方、大学教育研究センターでは、10月30日の教務委員会に事務方より二通りの学年暦に基づく行事日程が提案されました。委員会では、第3部会の議論の状況から来年度は学年暦の変更は行われないとの判断が示され、一般的な問題としてそれぞれの案の問題点・利点を検討しました。結果的に来年度の新学年暦適用の是非については審議に付されず、14年度実施を見送ることが共通認識になりました。

11月13日の大学教育委員会
 良永委員長は、第3部会報告を受け「長年検討してきたことでもあり学年暦については2002年度から実施したい」と提案しました。これに対して複数の学部が異議を唱えました。特に医学部は、臨床実習の日程の問題などを理由に学部教育での新学年暦採用は不可能との見解を示しました。委員長は議論が割れた状況にもかかわらず、2002年度を試行期間として実施すると取りまとめました。また、特に二重の学年暦が適用され実質的に不利益を受ける医学部学生については、大学教育研究センター側が配慮を行うとされました。しかし、試行期間が何を意味するのか、配慮の具体的な内容が何かについては、全く不透明です。センター長は12月の教養教育実施会議で「問題が生じたときに不利にならないように対処するということだ」と述べています。

11月29日評議会
 医学部に続いて教育学部からも教育実習や社会指導主事講習会の日程などの理由により新学年暦に移行しないとの判断が示されました。一部の評議員からは、学年暦を二重にしてまで14年度実施を行うべきではないとの見解も示されました。学長は調整の動きを見せましたが、良永副学長の強い意向で14年度実施を最終的に決定しました。

12月5日教養教育実施会議
 センター長が「新学年暦でも旧学年暦でも教養教育の実施は可能」との立場で大学教育委員会に臨んだことについて、複数の委員から疑義が出されました。委員として参加している各学部の教務委員長からも、特に二重の学年暦の状態を生むことについて、来年度実施の決定に批判的な意見が出されました。教養教育実施会議の総意は14年度見送りにあることが鮮明になりました。これについて教務課長からは「多くの大学で学年暦は統一されておらず、問題はない」との主張がなされています。

何が問題か
(1)強引で無責任な学長・副学長の姿勢

 夏休み前に試験を終えるという新学年暦の発想は以前から議論に上っていました。しかし、本格的に検討されたのは、3学期制案をとりやめた今年9月以降です。検討期間はわずか2ヶ月にみたず、各学部での検討は全くというほど行われていません。大学教育研究センターには行事予定案という形で新学年暦を含めた案が提案されましたが、大学教育委員会第3部会の議論が来年度に間に合わせるという切迫した状況で進められていないという情報もあって、新学年暦を採用すべきか否かの議論は行われませんでした。
 このように末端の議論を欠いたまま無理矢理14年度実施を決めたため、学内の議論はかえって混乱しました。空調設備の整備などの環境面、教育指導主事講習などの行事日程、学生の就職活動・教員採用試験など様々な具体的な問題点が噴き出しました(この間の経緯についてはアンテナをご覧ください)。そして、医学部に続いて教育学部も新学年暦を採用しないことを決定したのです。
 このような状況に学長・副学長はどう対応したのでしょうか。評議会で学長は、「専門教育についての新学年暦の使用の判断は各学部に委ねる」と述べました。副学長も評議会の前に教育学部を訪れ、「新学年暦を採用しなくても構わないが、新学年暦の実施に反対はしないでくれ」と要請しました。学長・副学長のこのような姿勢が、夏休み期間が3週間以上もずれた学年暦の併用という事態を生み、結果として教育学部1600名、医学部200名(3年以上は教養教育はありません)の学生に多大な不利益を与える結果になったのです。学長・副学長はじめ大学の管理運営に携わる者は、このような事態を学生にどの様に説明して納得してもらうのでしょうか。


(2)全学的観点からの判断を欠いた評議会
 学長・副学長の姿勢以外に、評議会に臨んだ各評議員の姿勢も問題とせざるを得ません。確かに、評議会では二重の学年暦が実施されることについての根本的な問題が提起され、1時間以上にわたって議論が行われました。しかし、一方でセンター長は「センターとしては新学年暦でも旧学年暦でも可能」という立場に終始しましたし、ある学部長は「うちの学部では新学年暦の採用には問題はないので特に反対しなかった」と言っています。反対の学部も「うちの学部は新学年暦は採用しない」というだけで新学年暦の採用に反対することはありませんでした。
 評議員は各部局から選出されていますが、評議会は全学の運営に責任を持っており、その委員は全学的見地にたって議論することが求められます。問題とされたのは熊本大学として新学年暦を採用すべきか否かとともに、二重の学年暦という事態が必至となった情勢にどう対応するかということですから、自部局の利害に結びつかないからといって我関せずという態度をとるのは許されることではありません。このような評議会の姿勢が学長・副学長の独断専行を許した一因ではないでしょうか。


繰り返される無責任な意志決定
 この間を振り返ってみると、本学の無責任な意志決定のあり方は学年暦の問題だけではないことに気がつきます。非常勤講師の年齢制限も、十分な検討もなく唐突に決定されています。教養教育関係で非常勤講師を多く抱える教科集団では、非常勤講師の確保が困難になると予想されますが、影響についてきちんと検討した気配はありません。情報教育の必修化については、情報化委員会でそれなりの議論は積んできましたが、これだけ大きな規模にする必要があるのかという学部の疑問にきちんと答えたかは疑わしいでしょう。議論の詰めの甘さが、定員の確保の方法についての議論の混乱を引き起こし、準備を大きく遅れさせることになったのではないでしょうか。来年度の新入生から新情報教育カリキュラムが実施されますが、決まっているのは開講時間と教室だけです。6人で60コマを担当するとされている教官については、受け皿の情報基盤センターが設置準備委員会が立ち上がったばかりのため、公募すら始まっていません。22コマは非常勤で確保するとされていますが、どこで計画しているのか全く不明です。優秀な人が集められるのか、採用は4月の授業開始に間に合うのか、新任を4人も抱えた組織で来年度の必修科目の実施が円滑に行えるのか、疑問はふくらむばかりです。

問われるのは熊本大学の意志決定のあり方
 今、緊迫した大学を巡る情勢の中で、いかに速やかに学内合意を形成し全学の力を結集できるかが問われています。そのための学長のリーダーシップも重要です。しかし今回のような学内審議を欠き全学の合意を得る努力を放棄したやり方は、独断専行にしかすぎません。十分な学内審議を行い、学内コンセンサスの形成に努めた上で、果断な決断を下すというのが、本来のリーダーシップのあり方のはずです。

  

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