No.20
2001.12.18
熊本大学教職員組合
Tel.:096-342-3529 FAX:096-346-1247
E-mail:ku-kyoso@mx7.tiki.ne.jp


11/17-18 全大教医科系大学教職員懇談会
110名の参加で意見交流
国公立大学病院の医療の質と
安全を確保するための運動を!!

報告1

 11月17日から18日の2日間神戸で開催された医大懇に熊大教職組より13名(教官1名、看護助手5名、看護婦5名、保育上1名、書記1名)が参加しました。
 それぞれが問題意識を持ち各分科会に出席し情報収集、意見交換で交流を深めました。

集会宣言

 21世紀最初の第12回医大懇は、テロと米英報復戦争という大変な事態の中で行なわれました。
 全国から17大学110名が震災後6年を過ぎた神戸に集い、国公立大学病院の状況と私たちの運動について真剣に討議しました。
 政府は、構造改革の掛け声の下、昨年にひきつづき大幅な医療制度改悪を進めようとしています。長期にわたる景気の冷え込み、失業者の増大で保険料を払えず病院にかかれない人が増えているのに、医療費の負担増を強いるのは、“痛み”の限界を越えています。
 国公立大学病院は、特定機能病院でありながら貧弱な看護体制の下におかれてきましたが、私たちのこの間の運動で大幅な増員(今年度889人の非常勤職員が増員され、来年度約400人の非常勤職員が増員される予定)をかちとってきました。しかし、大学の構造改革・法人化に向け、文部科学省から「増収」を強く指導され、職場は入院日数短縮と稼働率アップなどの効率化・合理化が進められたため、多忙を極めており、いつ事故がおきてもおかしくない状況です。
 医療制度の改悪も、国公立大学病院の効率化・合理化も、小泉「構造改革」路線によって進められてきました。
 私たちは、広範な国民・医療労働者と手を結び、医療制度改悪に反対するとともに、国公立大学病院の医療の質と安全を確保するため、より高い看護基準を要求して運動していきます。
 また、私たちは命を守る職業人として、無差別テロと報復攻撃を許さず、憲法違反の自衛隊海外派遣に反対し、いかなる戦争にも協力しないことを警って、集会宣言とします。

2001年11月18日
第12回医科系大学教職員懇談会

記念講演

「構造改革と日本経済」

講師 山家 悠紀夫 氏(神戸大学大学院経済学研究科教授)

 第一勧銀総合研究所取締専務理事から今年の4月に神戸大学に異動された山家氏の話しは,「中学生時代,熊本大学病院に3ケ月入院し,お姉さん看護婦さんに優しくしてもらった思い出がある」というおもいもかけない思い出話から始まった。
 記念講演を貫くテーマは「小泉構造改革の内容と問題点」であった。経済といえば難しい内容を予想しがちであるが,非常に身近な問題であった。以下では,いくつか印象に残ったことを列挙して講演の内容を紹介する。
  • 2001年から始まる急速な景気後退は構造改革のためである。
  • 2000年末までの景気回復時では企業の設備投資は十分回復したが,消費支出が回復しなかった。これは企業収益が増えたにもかかわらず春闘ベ-ア率が減少したことと対応している。つまり,国民の不安が取り除かれなかったことが問題である。
  • 現在残っている不良債権はまだなんとかやっている企業の債権であり,無理に不良債権の整理を進めると倒産・失業が増え,景気が悪くなる。むしろ,不良債権が増加することになってしまう。
  • 景気回復に必要なものは消費回復であり,そのために20人学級の実現,介護従事者や看護婦の増員などが有効な政策である。
  • 日本の財政赤字は660兆円(国民一人あたり500万円)もあるので,改革で痛みをともなうのは仕方がないと政府はいっているが,GDPに対する純債務の割合では欧米に比べても小さく,決して危機的状況ではない。むしろ,構造改革をすすめてさらに不況になっていく方が問題。
  • 99年末で家計に1024兆円の貯金(不安の現れ)があり,この貯金で政府や企業の赤字分を補ってもまだあまりがあり,海外に投資されている。
 温厚な話し方と会場の暖房が利き過ぎたため居眠りをする参加者も時には見うけられたが,経済を病院の中の事例で説明してくださり,わかり易い内容だった。特に日本の財政赤字の本質は大きな驚きであった。医大懇の記念講演会で経済を取り上げたのは始めてとのことであったが,非常に有意義であり,今後の運動にプラスにしていく必要があると痛感した。

 

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