No.25
2001.12.21
熊本大学教職員組合
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統合・再編、「トップ30」問題、学内では何が起こっているか?!

 国立大学の再編・統合と国公私を含むトップ30大学の重点化を掲げた文科省の「大学の構造改革方針」いわゆる遠山プランならびに国立大学「法人化」は、全国の大学関係者の間に様々な論議を呼び起こしている。組合でも、この間、反対声明の公表や学習集会などに取り組んできた。では学内において、この問題はどのように議論され、どう具体化されようとしているのか、その現状を伝え、問題点を指摘しておきたい。
〈統合・再編をめぐる学内の動き〉
 11月の評議会で「再編・統合に関する懇談会」「独立行政法人化調査検討委員会」「教育・研究組織の将来像調査検討委員会」の発足が決定した。公表された組織図によれば、再編・統合問題に関しては、「運営会議構成員」と「学長が必要と認める者若干名」によって構成される懇談会の場で、本学の方針が検討されることになっている。すでに12月20日から審議が開始されている。しかし再編・統合プランに関する文部科学省のヒアリングは1月の予定である。このような差し迫った状況のもとで、果たして十分な議論がなされるのか、きわめて疑問である。学内の論議を欠いたまま拙速な判断が下されるのではないかと危惧される。
 また11月22日に「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」報告書が出され、教員養成系大学・学部の再編・統合の方針が打ち出された。教育学部では、企画委員会の中に特別部会をつくり、統合後のシュミレーション作業等を行なっている。本学が仮に統合する側の大学になったとしても、「在り方懇」の新課程廃止の方針にともない、人事配置にかかわって、組合としては看過できない問題が生じることも懸念される。また一大学が、複数の県の教員養成、現職教育等に関わらなければならないなど、教職員のこれまで以上の負担増も予想される。いずれにせよ、統合後の熊本大学における教員養成の在り方は、学部教職員の合意と同時に全学的な立場から、さらには複数の都道府県における教員養成・教育の観点から十分な論議が行なわれる必要がある。それゆえ統合に関わる議論の経過は、広く大学内に公開されるべきであろう。また同時に、今回の「在り方懇」報告自体の問題性、つまりこの報告が、教員養成制度の充実に本当につながりうるものなのか、その原理的検討が求められている。
〈学内での「トップ30」をめぐる動き〉
 「トップ30」を目指して欲しい旨の学長の考えが示されて以降、学内でも「トップ30」に向けた動きが表面化してきた。理系では、自然科学研究科で具体的な動きが起こっている。自然科学研究科では、先月、企画会議で「トップ30」申請準備の具体化が決定された。対象としては「環境・バイオ」「情報通信」「ナノテクノロジー・材料」「エネルギー」「製造技術」「社会基盤」「数学・物理学」「地球科学」の8分野を設定。専攻の枠を越えたグループ申請を想定し、「環境・バイオ」「情報通信」「ナノテクノロジー・材料」の3分野については、14年度申請に向け、直ちにシナリオ(中期計画)づくりに着手するとしている。また「他大学と戦える」教官編成にすることが明記されている。
 そもそも「トップ30」は、部局単位の申請であって、学部内での議論は不可欠の前提であろう。「トップ30」をめざそうという部局では果たして十分な論議が行なわれたのだろうか。たとえば、文学部では、学部内で何の論議も経ないまま、ある委員会の委員長名で突然「トップ30に向けて科研費申請をよろしく」といった主旨のメールが送られ、後で問題になって取り消されたという経緯があった。
 また、大阪大学では、学長の「トップ30に入れない専攻はつぶすこともある」という脅しに近い号令の下、教員が申請に向け急き立てられているというが、「トップ30」に対して「バスに乗り遅れるな」的に飛びつくことの是非についても指摘しておきたい。まず問題なのは、この政策が果たして正しく機能するかどうかである。東北大学では、大学評価・学位授与機構に対して「評価」の仕方がでたらめだと抗議の声を上げた。それは「地学」と「化学」での評価基準の設定がまったく異なっていたことがわかったからである。また「トップ30」政策の予算自体が半減されるなど政策自体も不確定な要素を抱えている。
 組合としては、遠山プランの具体化にあたって、トップの独断専行ではなく、十分な学内論議を保障することを要求する。また論議の際、具体化の中身だけでなく、この政策自体についての原理的な検討がなされなければならないのは言うまでもない。

 

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