No.39
2002.3.22
熊本大学教職員組合
Tel.:096-342-3529
 FAX:096-346-1247
E-mail:ku-kyoso@mx7.tiki.ne.jp


 
熊大当局は 人権を守れ
--熊大病院で看護婦の切迫流産続発--

増員がなされても多忙化、
9回(4週間)を越えた夜勤回数

 熊大病院のICU(8床)には、01年4月に3人の、同10月に4人の看護婦(いずれも定員外)の増員がありました。しかし、(1)増員とセットで、それまでの透析室勤務の兼任(月・水・金曜日)に加えて、救急外来を24時間担当することになりました。これによって救急患者に対応することになり、現場の緊張度が高まり業務は煩雑になりました。(2)増員とセットでまた、月曜〜金曜は内科外来に1人(救急外来兼任)、中央採血室に2人(1人は8時〜16時30分、1人は8時30分〜12時30分)、脳外科に1人、眼科に1人、透析室1人(月・水・金)の、計5部署に都合6人の応援を出すことにもなりました。
 ICUの8床はほとんど満床の状態で、加えて救急患者も増加しました。新生児、全身熱傷患者などが入室し、ほとんど目が離せない状況でした。処置が増え、超過勤務(とサーピス残業)は確実に増えました。年休は取れませんでした。土日・休日には日勤帯の人手が足りず、深夜の勤務者が残って手伝っているという状態でした。他の病棟に数時間の応援を頼むこともありました。
 他方ICUから他の病棟に応援に行っても、患者の状態を十分把握できないままケアをしなければならず、不安で一杯でした。毎日同じ病棟に応援に行くわけではないので、応援に行っても、覚えられないこともあり、忘れてしまうこともありました。病i練に応援に出るため、逆にICUの受け持ち患者の状態が把握できませんでした。プライマリーナーシングの体制をとっていても、受け持ちの患者に当たるのはICU入室時のみで、担当患者の把握が十分にできませんでした。担当患者の退室時には、勤務外に出てきて、カルテの情報からサマリーを書いている状態でした。勤務時間内に書く時間はありませんでした。
 救急外来の併設にともなう救急患者の増加に対応するため、ICUの夜勤体制は、01年4月から準夜5人-深夜4人になり、01年10月25日から準夜5人-深夜5人になりました。その結果、01年11月11日以降夜勤回数は一人平均9回(4週間)を越え、1ケ月平均では10回に達しました(下表参照)。2月3日〜3月2日の勤務表では一人10ないし12回の夜勤が組まれました。
ICU-救急外来の夜勤実態
   01年10月14日
〜11月10日
01年11月11日
〜12月8日
01年12月9日
〜02年1月5日
02年1月6日
〜2月2日
総夜勤回数 249 271 280 269
夜勤人員数 30.1 29.6 30 28.8



28日間 8.3 9.1 9.3 9.3

夜勤10回6人 夜勤10回9人
夜勤11回3人
夜勤10回11人 夜勤10回13人
1ヶ月換算 8.9 9.8 10 10

過酷な勤務で3人の切迫流産続出
 こうした過酷な勤務によって、ICU‐救急外来では、本年度3人の切迫流産が続出しました。昨年5月に1人目の切迫流産著が、11月に2人目の切迫流産者が、本年1月に3人目の切迫流産者が出ました。2月2日現在1人は産後休暇をとっています。2人は病休をとっていますが、3月末で退職を考えざるをえない状況にあります。
 熊大病院当局は「本人が申請したら、夜勤免除している」と回答しています(病院長交渉)が、妊婦の夜勤免除・業務軽減措置について周知されていません。妊婦はもちろん、他のスタッフもこの制度を知りませんでした。
 たとえ妊婦の夜勤免除・業務軽減がなされたとしても、人員の補充がなされないため、同僚の看護婦の夜勤回数が増え、業務が過重になります。妊婦に「無理しないで、きつかったら夜勤免除できるのだからね」と伝えても、現場の状況の大変さが分かる当人は、「自分が休んだら皆に迷惑がかかる」と思ったのでしょう、「大丈夫」と言いながら仕事をしていました。本当に残念で悔しいことに、3人の切迫流産者のうち2人は、4週間で10回の夜勤をこなさなけれぱならなかったのです。婦長は妊婦の夜勤について気にかけていましたが、他の看護婦の夜勤が増えることも気に病んでいました

熊大当局は人権無視の確信犯
 3人の切迫流産続出という異常な事態の責任の所在は明瞭である。
 (1)熊大病院当局は、夜勤免除・業務軽減などの母性保護の措置−−人事院規則10-7などの内容−−を、看護婦に周知・徹底していない。したがって、「本人が申請したら、夜勤免除している」という回答は、その前提からして全く無責任きわまりない。
 (2)ICU-救急外来の夜勤・業務負担の増加について、熊大当局は01年3月7日の病院長交渉において、次のように回答している。
<看護部長代行> ICUの夜勤が他の病棟よりも多いことは知っている。平均で10.4日、多い人で12回。救急外来もこの1年でみると増えてくる予測はある。今後様子をみでいきたい。現状では3人の増員でやっていただきたい。本当は病棟に増やしたかった。カのある看護婦に実力を発揮していただきたい。実績をみていって対応していただきたい。
<組合>夜勤回数が増えることについて、どのように考えられるのか。
<看護部長代行>lCUで考えなければならない。実績で判断しないといけない。実績をつくってほしい。
 要するに、事前に熊大当局は、ICU-救急外来の夜勤・業務が過重になることを予見していた。のみならず熊大当局は、lCU-救急外来に実績をつくらせる期間に、夜勤・業務負担を増やすことを当然視し、しかもICU-救急外来が実績をつくらない限り、夜勤・業務負担を軽減する意図はなかった。
 (3)熊大当局はこれまで病棟と外来の一元化(病棟の外来の掛け持ち体制)を進めてきたが、これによってほぼ外来専属の看護婦(日勤専従看護婦)は消滅している。つまり、現在の熊大病院には、配置換えという夜勤免除の措置はありえず、妊婦は病棟にとどまり仕事を続ける以外にない。しかし、熊大当局は妊婦の夜勤免除にともなって、人員を増やすという措置を決してとらない。したがって、妊婦の夜勤免除は、同僚看護婦のすでに過重な夜勤・業務負担を、たちどころに増加させる。こうした状況下では、妊婦が夜勤免除・業務軽減などの母性保護の申請を躊躇せざるをえないのは当然である。熊大当局はそもそも母性保護に必要な環境・条件の整備を怠っているのである。明らかに熊大当局は人権無視の確信犯である。

熊大当局は人権を守れ
 熊大当局には、(1)ICU-救急外来の切迫流産続出という事態に対して、いかなる結果責任をとるのか。(2)そもそも母性を保護するつもりがあるのか、ないのか。(3)あるのであれば、母性保護のためにいかなる措置をとるのか。(4)母性を保護するつもりがあるのであれば、母性保護に必要な環境・条件をどのように整備するのか。すなわち、妊婦が母性保護の申諸を躊躇せざるをえない現状を、いかにして改善するのか。また妊婦の夜勤免除にともなって、同僚看護婦のすでに過重な夜勤・業務負担が増加するという現状を、いかにして改善するのか。−−この4点について、来る学長交渉で明確かつ具体的にお答え願いたい。


 

戻る