現在、学内の多くの教職員は、国立大学の「法人化」について、すでに3月の文科省調査検討会最終報告でその内容がほぼ固まり、そのプランにしたがって着々と法案化作業が進められているものと認識しているかもしれません。現に「法人化」に向けた学内準備作業もそのような認識の下で進められています。ところが、実際には法案化の作業は大幅に遅れ、いまだにその内容の骨格すら明らかにされていません。それは何故でしょうか。
去る11月29日に行なわれた全大教の国会要請行動の中で、衆議院議員の石井郁子氏から、11月27日の衆院文部科学委員会での工藤智規高等教育局長とのやりとりが紹介されました。そこで明らかにされたのは第一に、独立行政法人化後の国立大学の設置者を国とするかどうかは、「政府部内で調整中であり、決まっていない」(局長答弁)という事実です。つまり、政府内の議論は、設置者の問題で大きくぐらついているのです。第二に、そのように法案の中身がまったく不確定であるにもかかわらず、文科省が一方的に決めた法人化スケジュールのもと、「中期目標・中期計画」の記載事項なるものが各大学に配布され、事細かな記載事項が押し付けられているという問題です(これについては石井議員の追及もあってか、その後修正されたものが大学に届いています)。詳しくは資料1、2を参照ください。
また同様のことは、12月6日の組合主催による学習会「法人化と労働問題」の中でも、講師の田端博邦氏からも指摘されました。文科省の方針に対しては、これまでに財務省や経済産業省からの批判があり、さらに内閣法制局からも法律的な問題でクレームが出されています。法人化構想は、大学の設置形態、財政制度、管理運営、人事制度のどれをとっても混迷状態にあり、最終報告を不動のものとして考える必要は決してないというのが田端氏の分析です。
当初私たちは、文科省が3月に公表した制度設計にしたがって、事態は推移するものと予想していました。しかし、「法人化」について、文科省はもはや当時者能力を失っているのです。このままでは、文科省の指示の下に進められている各大学の「中期目標・中期計画」の作成作業もまったく無意味なものになってしまう可能性すらあります。
また12/12に公表された政府の規制改革会議第2次答申は、当初原案に「国立大学の民営化」を盛り込んでいました。その後、文科省との意見調整の結果、原案からははずされ、「各大学が立てる中期目標の実施期間が終わってから検討する」(12/13付朝日新聞)ことになりました。このままでは、「法人化」は、「民営化」への一里塚となってしまう危険性があり、「法人化」の中身も関係者の想像を絶した不適切なものとなる恐れが多分にあります。
今こそ、法案の阻止に向け、あるいは、少なくとも法案の内容をより良いものに変えさせるために、大学人の力を結集すると共に、世論を巻き込んだ広範な運動を推進、強化していくが求められています。組合員の拡大とともに国会請願署名のさらなる集約に引き続きご協力お願いします。
資料 石井氏の国会質問の抜粋
(衆議院ホームページより)
- 石井(郁)委員 きょうも国立大学の法人化問題でお聞きをいたします。国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議の最終報告に沿って法案化の作業が進められているというふうに聞いておりますけれども、この検討会議の報告書を三月に出されました。最終報告の「新しい「国立大学法人」像について」の中では大学の設置者についてどう述べていたのでしょうか、ちょっと確認させていただきます。
- 工藤政府参考人 本年三月の調査検討会議のレポートでございますが、いろいろな御議論を経まして、一つには、中期目標、中期計画でございますとか、業績評価等を通じました国の一定の関与、それからそれの裏に、国の予算による所要の財源措置が前提とされているということが一つでございます。もう一つには、大学の組織運営とは別に、法人自体の固有の組織は設けないということを原則として制度設計しましょうということもございます。
それらのことも考慮しまして、この報告書では、学校教育法上の位置づけとしては、国を設置者とするという提言がなされてございます。
- 石井(郁)委員 そうだと思うんですね。法人化後の大学の設置者については、学校教育法上は国を設置者とするというふうにされていました。ところが、今どんな議論の状況になっているかということで申し上げますと、九月二十日の国立大学協会、今後、国大協というふうに呼びますけれども、第七回国立大学法人化特別委員会で、国立大学法人化に関する法制的検討上の重要論点ということが新たに示されているんですね。 その一つに、法人化後の国立大学に関する学校教育法上の設置者は国であるとの基本的な枠組みは堅持する必要があることというふうにしています。これに対して、文科省の大臣官房清水審議官からこのような発言がございました。法人化後の大学の設置者については、学校教育法上は国を設置者とすることで努力していきたい、これは議事メモに記されているわけであります。
この努力していきたいということをわざわざ言わなければいけないというのはどういうことなんでしょうか。これは、政府部内に何か異論があるとか、あるいは異論があるとすればどこからどういう異論が出されているのか、基本的な問題ですので、ちょっと明確にしていただきたいと思います。
- 工藤政府参考人 この調査検討会議のレポートをまとめるに当たりましては、大変多くの方々の熱心な御議論を賜りまして、しかも、既に経緯は御存じのように、既に発足してございます独立行政法人の制度を活用しながら、そのままでは国立大学にはなじまない部分が多々ございますので、大学にふさわしい制度設計をしようということでこのレポートがまとめてございます。
そのために、これまでの独立行政法人通則法と違う点、多々ございます。一つには名称のあり方もそうでございますし、運営組織のあり方、あるいは法人イコール大学の長の任命のあり方、あるいは中期目標とか評価のあり方についても、既存の先行しております独立行政法人とは違う仕組みを考えていかなきゃいけない。
今の設置者の問題もその一つで、これは、既に先行しております法人には学校教育法上の学校がございませんから、これは新たな問題ではございますが、それらを含めてすべて今政府部内で調整中でございまして、そういう意味で、私どもの姿勢としては、この三月のレポートを基本として政府部内で調整し、その方向での実現を見るべく汗をかいているということを申し上げたのが今の表現ではないかと思います。
- 石井(郁)委員 どうも、はっきりしていただきたいと思うんですけれども、今調整中ということ自身が、私、そういうことになっているのかと大変驚いているんです。一部では、内閣法制局から異論が出ているというふうにも伺っているわけですけれども、要するに、法人化後の大学設置者は、国なのか、あるいは国が設置する法人というような形になるのか、そこのところは枠組みにかかわる重大な問題ですから、やはり今はっきりしておいていただきたいと思います。調整中とはどういうことですか。どうなるんですか、それは。もしかしたら、設置者は国ということが変わり得るかもしれないという含みですか。
- 工藤政府参考人 本件は、私どもの心づもりとしては、次の通常国会で御審議を賜るべく法案作業を準備しているわけでございますが、先生がかねがねおっしゃっていますように、まだ法案ができていないのでございます。一つずつ決めていくという作業手順もございますけれども、先ほど申したような、いろいろな従来の独立行政法人とは違う仕組みでの制度設計で、関係各方面と御相談しながら今準備しているところでございますので、まだ決まっていないというのが事実でございます。
ただ、私ども、基本としては、この三月にまとめられた方向で、各方面に当たりながらその実現を目指しているという状況なのでございます。
- 石井(郁)委員 今の段階でこの設置者は国ということでの統一見解は持てていないという状況だということは、私、大変大きな問題をはらんでいるというふうに思います。
国大協が、先ほど申し上げましたように、法制上の重要論点、これは譲ることができないという形で出されているにもかかわらず、これさえも今クリアできていないという状況でしょう。これは本当に大変な問題です。だから、それもできないで強引に事を進めるということが、今いろいろ大学内外に混乱を引き起こしているんじゃないでしょうか。
大臣にここでちょっと角度を変えてお尋ねをいたしますけれども、大学の中期目標、中期計画という問題につきまして、私もたびたび取り上げてまいりましたが、その私の質問に対しまして、このように御答弁されていらっしゃいます。国立大学法人につきましては、大学の自主性、自律性を尊重する観点から特例を考えているわけでございます、中期目標と中期計画は、あらかじめ各大学において一体的に原案を検討する、そして、中期目標においては、文部科学大臣は、各大学から提出された原案を十分尊重し、大学の特性を配慮して定めるということになっておりますと御答弁されていたと思います。
ところが、今どんなことが起こっているか。十一月五日、これも国大協の第九回国立大学法人化特別委員会に、中期目標・中期計画の項目・記載事項というのが配られましたよね。杉野大学改革推進室長がそれをもって説明をされたわけでございます。こうなりますと、文科省が、記載事項、重要事項、かなり詳細なのを配ったわけですから、大学の自主性、自律性どころか、文科省による目標、計画のいわば大学への押しつけということになりませんか。いかがでしょうか。
- 遠山国務大臣 私が先般お答えいたしました点、委員がお読みいただきましたけれども、その点はいささかも変わっておりません。今御指摘になりましたのは、中期目標について、記載する事項は一体何なのかということについて項目を示したというお話でございます。
今、法人化に向けて準備を自主的に各大学で進めてもらっているわけでございます、その記載事項のイメージについて極めて高い関心がありまして、作成指針を示してほしいと大学側からの強い要望があるわけでございます。要するに、中期計画で何を定めたらいいのかということが明確にならない限り、その中に盛り込むべき中身は自分たちで自由にできるけれども、一体どういう項目を考えたらいいのかということがわからない、ついては、それについてイメージを示してほしいということがございます。
また、調査検討会議の最終報告におきましても、中期目標の作成指針などを提示することが望ましいと書かれているわけでございます。
このために、中期目標に関する、現段階において文部科学省としての考え方を事務的に取りまとめて、国立大学法人化特別委員会を設けて検討を行っております国立大学協会に対して検討素案として参考までに提供したものと承知いたしております。
要するに、各大学が自主的に、自分たちの目標なり、あるいは未来の計画について考えるのは当然でございまして、しかし、どういう点でそれを書きあらわしていったらいいのかという点については、それはイメージが欲しいということはこれまた当然の要求でございまして、それに対して担当の方でそのことについて一つの素案として提供しているということでございまして、何ら私が先ほど申し上げたことと矛盾することではございません。
- 石井(郁)委員 先般も議論がございましたけれども、やはり目標とか計画とかというのは、それは運営交付金にもつながることでもありますから、評価にもつながることでありますから、大変慎重な検討が要るんだということが大きな前提としてあると思いますけれども、私、文科省が配付いたしましたその項目・記載事項というのを見まして、しかし余りにも細目に及んでいるんですね。それでちょっと驚いているんです。これはあくまでも参考として配ったと言われますけれども、今皆さんがこういうことを提示したら大学がどのようにこれを受け取るかというのは、これまでの文科省と大学との関係でもう重々御存じのはずなんですよね。それは余りにも細目だ。
例えば、学士課程における教育の具体的目標にどんなふうに書かれているか。専攻分野以外の分野に関する体系的な知識、外国語能力、情報リテラシーの修得などについて学生が身につけるべき学力等に関する具体的な目標ですよ。それから、幾つかピックアップですけれども、想定される望ましい卒業後の進路、国家試験受験・合格率等に関する具体的目標、また、大学教育における産業界、地域社会との連携の推進方策、技術移転や共同研究についての具体的な目標やリエゾンオフィス等の体制整備、こういうことがずっと並んでいるんですよ。それも、二重丸と一重の丸とに区別されているわけです。今申し上げましたのは全部二重丸で必要的記載事項です。だから、これらは必要的記載事項ですよという形でずっと項目が並べられているということです。一重丸は、各大学の状況等に応じて記載する事項例となっている。
だから、参考例だったら、記載する事項例ということならまだしもというか、ありますけれども、必要記載事項というのは一体何なんでしょうか。こういう枠組みがいわばすべての大学に示されると、これはもう画一的枠組みそのものじゃないですか。必要記載事項ということがありますので、では、これが入らないと中期目標、中期計画というのは認可されないというふうに文科省はお考えなのでしょうか。
- 工藤政府参考人 おめもじの資料は、あくまでも、上に検討素案・未定稿とありますように、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、大学からの要請もありまして、何らかのイメージのためにお示ししたわけでございますし、ここにありますように全くの未定稿でございます。
これから、各大学からのいろいろな反応も含めて、十分もっとリーズナブルな方向に改善していかなきゃいけないとは思いますが、むしろ、これに至ります沿革としましては、調査検討会議のレポートをまとめられるに当たりまして、各大学でいろいろこのイメージをまとめてみましたら、大変膨大なものになったのでございます。このレポートの参考資料で示してございますが、余りにも膨大であるがために、これじゃかえって作業が大変だねということで、もう少しスリム化しながらでも、せめてこういうことぐらいは事柄として必要ではないかという御参考のイメージで、検討いただくための資料なのでございます。これで拘束しようということとか、中身まで私どもが立ち入って何か言っているわけでは決してないのでございます。
- 石井(郁)委員 確かに、この三月の調査検討会議では中期目標、計画の枠組みのおおよそが示されたんですね。だから、各大学はそういうことに沿っての作業をしてきたと思うんですよ。しかし、今お話しのように、どうもそれでは目標たり得ないというか、評価する計画たり得ないということになったのかなと私は思いますけれども、こんなに細かなことを、記載事項を出されると、今未定稿と言われましたけれども、これは事実上確定的なものとして下の方では受け取るんですよ。よく御存じじゃないですか、そういうことは。しかも、一つの案として出される。
だから、大臣は先ほど、最初の御答弁は全くいささかも変わりないと言われまして、それは大変、そうであるべきだと思いますけれども、要するに、各大学が自主的に決めるんですよというのが今までの文科省の説明なんですよ。しかし、これはどこに自主性があるんですか。こんな細かなことまで、教育研究の内容まで、同じように、同じ枠組みですべての大学が書かなければならない。これは、自主的なもの、自律的なものだというのは全くのごまかしだということになりませんか。
私は、国が大学の目標までこうやって画一的に決める、そういう法人化になるとすれば本当に日本の大学というのはやはりだめになると思いますよ。だから、今まで、法人化で自主性、自律性が高まるというのが文科省の説明でしたけれども、そしてそういう大学を法人化に向けてずっと歩ませてきましたけれども、結局、最後のところに来て、それほどの自主性は認められない、目標、計画のところでがんじがらめになっているということじゃありませんか。私は、こういう法人化作業はやめるべきだというふうに思います。
それで、加えて問題なのは、やはり文科省は本当にルール破りをしていますよ。もう一つのことを申し上げたいと思うんです。
国大協には、もうまさに法律が成立したかのように、いろいろなことが今押しつけられています。国立大学法人の運営交付金の算定基準、今申し上げた中期目標、中期計画の記載事項の課題がございます。それから、会計関係諸規程モデルについて、何々大学の会計規程をつくりなさい、法人ですから会計規程をつくりなさいと。それから大学の物品管理規程もつくる、大学の不動産管理規程もつくるということがどんどん説明されています。これは、今お話しのように、参考案とか未定稿などとして、国会で追及されたら困るということで、逃げられるように取り繕っているようでございますけれども、このようにやりなさいというものなんですよ。確定的なものです。
国立大学の運営交付金の算定基準では、管理運営に必要な経費として、毎事業年度の管理運営部門の常勤職員にかかわる人件費、退職手当を除いてということでは、次のような数式で決定しなさいと数式がずっと載っていますね。それから、学部、大学院学生等の教育に必要な経費はこういうものです、研究に必要な経費などは以下の数式によって決定すると。だから、もう法人化ということで、具体的なこういう準備作業を各大学に事細かに指示が出ているわけですね。
これらは法律が成立して初めてできる話じゃないんですか。国会に法律が提出されていません。また、国会の事情で、これは成立するかどうかもわかりません。また、どんな内容で成立するかもわからないじゃありませんか。それなのに、こういうことを大学に持ち出して作業をさせる、実務などさせる、そういう権限はどこにあるのでしょうか。御答弁ください。
- 工藤政府参考人 国立大学の法人化については、お立場によっていろいろ御意見があるかもしれませんが、少なくとも、この三月のレポートをまとめるに当たりましては、大変多くの大学関係者にも御参画いただきながらまとめてきてございます。
その中で、議論の終息、終盤に至りましてふと思ったのでございますが、大変激しい議論、いろいろありましたけれども、みんな思いは同じで、もっと国立大学をいいものにしよう、この法人化の制度設計によってはそれが可能になるではないか、いいことはもっと早くやろうということでは、各界、各方面からの御参画の方、一緒だったと私は理解してございます。
そういう中で、来年の通常国会にお願いしようとスケジュールしてございますけれども、その後できるだけ早く移行するためには、各大学それから私どもも含めて、それぞれの立場でいろいろな準備が必要でございます。もちろんまだ法案は出してございませんし、成立してもいないわけでございますが、仮にその法案、法人化という方向で予定のスケジュールでいくとなりますと、事前に準備することが結構ございまして、各大学でも、国大協の総意として、もう準備に入ろうじゃないかということで、自主的に御準備をしていただいているところでございます。
そういう中で、今の運営費交付金につきましても、では実際にどれぐらい各大学にお金が来るんだろうか、それが不安でなかなか制度設計しにくい、あるいは検討しにくいという声も寄せられている中で、実際こういうイメージですよと、数式いろいろ使ってございますけれども、突き詰めて言えば、従前の、前年度までの国のお金をある程度勘案しながら教育研究に不自由ないような算定をして、それを運営費交付金ということで行うんですけれども、学生数とか教職員数とか、一定の数値的な基礎で算定できる経費もございますけれども、必ずしもそれだけで一律にいきませんので、そうでない部分は特定運営費交付金という形でちゃんと考えていますよ、実際こういう方向になるのではないでしょうかというイメージを大学の希望によってお示ししたまででございまして、別にこれで確定したとかということじゃなくて、各大学の検討に資するための、あくまでも参考の資料なのでございます。
- 石井(郁)委員 確かに、国大協の側から、そのイメージが欲しいとか、どういうふうにしたらいいのかとかいうことがあったかもしれません。しかし、それに対して文科省としては、法律が通っていないんだからそういうことはできない、そういうふうに言うのがあなた方の立場なんじゃありませんか。私は、役所としては、法律ができない以上やれないというふうに回答すべきだというふうに思います。
しかも、この法人化の問題というのは、他省庁にもまたがっているでしょう。文科省だけじゃないでしょう。どうですか。今申し上げましたように、運営交付金の算定基準の問題だとか、それから中期目標や計画の問題だとか、そういう幾つかの問題、あるいは設置者の問題等々で、他省庁が本当にこれは承認していることなんでしょうか。
今、私は、運営算定基準だとか会計問題とか、そこにちょっと限定して申し上げてみたいと思うんですけれども、これは他省庁の承認の上で、文科省としてこれでやれますという話をされているんでしょうか。確認しておきます。
- 工藤政府参考人 最初申し上げましたように、これまでの先行独法とかなり違う制度設計の部分がございますので、その部分については、今各方面と折衝をし、調整している最中でございます。
ただ、先ほどの、例えば会計基準もそうでございますし、運営費交付金のあり方もそうでございますが、先行の独法の例を参考にしながら、かなりリーズナブルなものとして枠組みを示しているわけでございまして、別にこれで決まったとかということじゃなくて、考え方として、大体こういうふうなことをしながら、算定などしながら、ちゃんとした交付金が行くんですよということを大学にお示ししながら、大学の不安感を払拭し、いたずらな混乱とかむだを排除したいというのが私どもの本旨でございます。
来年通常国会で御審議いただく際に、むしろもっと鋭い御質問があるのではないでしょうか。私ども、こういう準備をしなければ、法案を出したはいいが、ちゃんといくのかねという厳しいおしかりもいただくのかもしれません。私ども、せっかく制度改正する以上は、万全を期して誤りなきようにしたいということで、いろいろな準備を大学ともどもさせていただいているところなのでございます。
- 石井(郁)委員 今のお話のように、決してこれは確定的ではない、運営算定基準だとか会計の問題でもというお話ですね。もちろんそうだと思うんですよ、確定していたら大変なものですから。しかし、そこには他省庁とのまだ十分な調整の余地もあったり、まだそういうことを含んでいるということでしょう。
しかし、そういうものを大学に投げかけて、今大学は、中期計画、目標も、そしてこういう種類の運営交付金関係の問題でも膨大な作業をしているんですよ、実際。これは大変な作業も要るでしょう、国立大学が法人化に行くわけですから。本当にその作業で、事務量で、忙殺されているんですよ。ところが、それはもしかしたら無になるかもしれないじゃないですか。そういうものを含んでいるんでしょう。私は、これは一番、当の大学に対して、大学人に対して大変無責任なやり方だと思いますよ。こんなこと進めていいのかという意味で、私は、これは法制定以前に、本当にこんなことやるべきじゃない。調整もついていない、承認もされていないことをやるべきでないということを強く申し上げておきたいんです。
加えて、もう一点ですが、何とこの十一月には国立大学法人化についてのスケジュールまで示されているでしょう。これは最後に大臣に伺いたいと思うんです。これも驚くような中身です。
十一月上旬には中期目標等の記載事項をつくる、十二月下旬から来年の一月にかけて中期目標等の記載事項等を各大学に提示する、二月に引き続いて各大学において中期目標の原案等を検討する、三月から四月、各大学は検討中の中期目標等の原案について適宜事前の相談、調整をする。だから、もう事前の相談、調整をする。法案も通っていない、私たち法案もまだ見ていません。どんな法案かもわからないのに、こういう事前の調整まで進めていく。これはもう本当に文科省の越権行為そのものじゃないですか。これはもう官僚の暴走行為ですよ。大学の自主性、自律性などどこにもないじゃありませんか。これではもう文部科学省立大学ですよ。どうですか。
- 遠山国務大臣 かつても御説明したと思いますけれども、国立大学の法人化につきましては、去る六月の閣議決定で、平成十六年度を目途に開始するとされておりまして、我が省としては、次期通常国会への提出を目指して関係法案の作成準備をしているところでございます。
スケジュールにつきましては、では各大学としてはどうしたらいいのかということで、頻繁なる問い合わせもあり、そうした要望を踏まえて、準備の参考に供するべく示したところでございます。
先ほど来御指摘のような私どもの作業がもしないとすれば、平成十六年に独法化をするということについて大混乱がむしろ起きるのではないか。各大学の戸惑いを事前に解消して、しっかりした準備をしてもらうために、今私どもとしても、各大学も大変でございましょうが、設置者としてやるべきことをやっております。
- 石井(郁)委員 もう時間ですが、一言。
このスケジュール表では、来年の四月から五月にかけて国会の法案審議がされる、五月末に成立する見込みだ、もう国会のことが、全部予定、こういうふうになっている。こんなことでいいんでしょうか。国会の上に文部科学省があるんですか。
私、けさの新聞で驚きました。これ、規制改革会議、国立大学民営化を提言でしょう。どんどん、事態はどうなるかわからないことをいっぱい含んでいるじゃありませんか。まさに国会情勢も、政治もそうじゃありませんか。そういう中で、こういう文科省が一方的に大学に作業を押しつける、この中身を押しつけるというのは、本当に官僚の傲慢そのものだということを指摘して、この文書はもう撤回すべきだということを要求して、質問を終わります。
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