「国立大学法人法案の概要」に断固反対し、法案の即時公開を求める声明
2003年1月20日
熊本大学教職員組合執行委員長 篠崎 榮
熊本大学教職員組合はこの度、「国立大学法人法案の概要(骨子素案)」(2002年12月25日付)というこれまで非公開の文書(以下「概要」)を入手しました。この概要によると、「国立大学法人」は、法人化される国立大学の設置者として規定されています(総則1)。そのため、学校教育法第2条で規定されている学校設置者(国、地方公共団体、学校法人)のうち「国」を「国(国立大学法人を含む)」に修正しようとしています。
本組合はこれまで、文部科学省がすすめてきた国立大学の法人化構想について、1999年10月から始めて、2001年10月、2002年3月の反対声明によって一貫して、この構想が人類の福利と平和に寄与すべきわが国の大学の教育・研究の将来に禍根を残す危険性が高いことを指摘し、反対してきました。その構想は文部科学省調査検討会議がまとめた「新しい『国立大学法人』像について」(最終報告、2002年3月)に示されましたが、この報告書に対しては国立大学協会も、「法人化後の国立大学に関する学校教育法上の設置者は国であるとの基本的な枠組みは堅持する必要があること」を強く要望してきました。
ところが、今回明かになった概要は、国立大学関係者のみならず何より文部科学省自身が上記の最終報告書で提言していた「学校教育法上は国を設置者とする」方針を真っ向から否定するものといえます。「国」ではなく「国立大学法人」を設置者とする、いわゆる間接方式では、「国立大学」という名称をもった大学に対する財政責任を国家が負わなくてよい、ということを含意します。これは、政府内の有力省庁が意図している国立大学の民営化を法的に準備するものと解される、文部科学省の見過ごしにできない背反行為です。
その他、この概要では、大学の自主性を奪い、大学を国家戦略および企業経営の論理に従属させる構想がいっそう顕著になっているなど、およそわが国の国立大学の将来に関心をもっている市民の方々が座視できない内容をもっています。
私たち熊本大学教職員組合は、この概要から読み取れる法人法案の成立に断固反対し、このような内容の法案が閣議にかけられることに重大な懸念を表明するとともに、文部科学省に対して、この概要から推してすでに作成済みではないかと目される「国立大学法人法案」をただちに公表し、閣議および国会審議の前に広く市民と大学関係者に情報公開することを強く要求します。
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