--国大協法人化特別委員会が
違法・脱法行為を企画--
「国立大学法人法」をめぐる国会情勢は、自民党が5月9日の文部科学委員会理事懇談会において、14日の委員会質疑後の法案採決を要求、それに対して野党側は「審議は始まったばかり、無責任になる」と一蹴、さらに自民党側も「14日の審議をみて考える」と述べるなど、いよいよ緊迫の度を増している。こうした中、5月7日付けで国立大学協会の法人化特別委員会(石弘光委員長)から、「国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について(検討案)」なる文書(以下「要請事項案」と略)が各国立大学長あてに送付されたことが明らかとなった。この文書は,法人化後の制度運用等に関する政府への要望を国立大学協会として取りまとめるためのものである。ところが,この文書は,現在,第156回通常国会で審議中の「国立大学法人法案」によって2004年4月から国立大学を法人化することは不可能であることを如実に示している。
〈違法・脱法行為を企図〉
第一に、要請事項案II−1では「各種法令の適用に関する運用上の協力と配慮」が要請されているが、「法人化(ママ)へ移行する経過的期間」であることを理由に、「労働基準法」や「労働安全衛生法」等に関して「弾力的な運用」といった措置や配慮を認める条項は当該法令には存在しない。たとえば労働基準法は、最低限の労働条件の確保を罰則規定の下で厳格に実現させるための法律であり、その「各種届出義務」の猶予などそもそもあり得ない。国立大学が自らこのような違法・脱法行為を要求することは、大学の社会的責任からみても、一社会構成員としての道義にてらしても断じて許されるものではない。またこの要請事項自体、来年4月法人化が適法的には実施し得ないことを如実に示している。
〈財政的・時間的に破綻〉
第二に、II−3では「移行に伴う新たな必要経費の確保」が要請されている。移行に伴う(正確には移行前の)新たな必要経費としては、「労働安全衛生に対する計画的な対応への必要経費」、「財務会計システム等の構築のための経費」、「出資財産(土地・建物等)の確定・整理・評価・登記」があげられているが、その額は、たとえば旧7帝大の場合、数10億円から100億円程度と言われている。これらは、法案が今国会で成立したとしても、移行前である今年度に支給されるという保証は全くない。また時間的な問題も深刻である。たとえばII−3にある土地「登記」に関しては、名義変更の法的確認作業が必要で、来年4月までには到底間に合わないと言われている。
このように財政的にも時間的にも、2004年4月の法人化が適法的には実施し得ないことは明白である。国立大に比べ小規模な現行独立行政法人の場合でさえ、通則法成立後の移行期間は1年9カ月あった。それに対して「国立大学法人法案」はすでに11カ月を切っているのである。
〈要請事項が自ら示す法案の根本矛盾〉
第三に、要請事項案IIIでは、「制度連用」に関する要請が9項目34点にわたって列挙されている。しかしながら、このような要請事項を掲げなけれぱならないということ自体、国立大学はもはや「国立大学法人法案」を受け入れることができないことを明白に示している。法自身の運用問題や関連する他法の適用延期・猶予・免除などを審議中から要求しなければならない法律など本来法の名に値しないものであり、その意味で、「国立大学法人法案」の扱いは廃案以外にありえない。
〈「もはや廃案以外にはない」の声を学長・国大協に結集しよう〉
以上のように「要請事項案」は、「国立大学法人法案」が、違法・脱法的措置をとることなしには法人化が実現し得ないというような悪法であり、同時に国立大学にとってけっして受け入れることのできないものであることを、あらためて内外に示すものである。しかもこの文書は、各大学に対して違法・脱法行為を求めるというきわめて反社会的なものである。熊本大学教職員組合は、5月15日締切とされている国大協特別委員会への回答書に、この要請事項案は、「違法・脱法措置をしなければ2004年4月からの法人化は不可能であることを示すものである。大学が違法・脱法行為に加担することはできない。したがって、国立大学法人法案は廃案とすべきである」と明記し、国立大学の総意をまとめるための国大協臨時総会の開催を働きかけるよう、学長に対して要望書を提出した。また石特別委員会委員長にも同様の趣旨の抗議文を送付した。
なお本学においては、この「要請事項案」を各学部に降ろし、15日の運営会議までに意見集約を行なうという措置がとられた。各学部は、国大協特別委員会の動きに手を貸すことなく、学長に対して「もはや廃案以外にはない」の声を結集しよう。
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