No.48
2003.5.23
熊本大学教職員組合
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衆議院での「国立大学法人法案」
強行採決に抗議する!!

  5月22日の衆議院本会議において国立大学法人他関連6法案が、民主、共産、自由、社民党の反対にもかかわらず、可決され、参議院に送付された。法案は、4月3日衆議院本会議での趣旨説明・ 代表質問、その後4月16日からはじまった文部科学委員会審議の中、数々の重大な問題点が明らかにされ、慎重審議が求められる状況にあった。しかしながら、5月16日文部科学委員会において、 法案の採決が委員長の「職権」により強行可決され、衆議院本会議採決に到った。今後は、5月23 日の参議院本会議での趣旨説明を経て、参議院文部科学委員会での審議が予定されている。だが、これまでの衆議院審議の経過からも明らかなように、この法案の可決は暴挙以外の何物でもない。

1.許されない強行採決
  5月22日の衆議院本会議採決に至る経緯として、5月16日の衆議院文部科学委員会の審議、採決の模様を報告しておきたい。この日の委員会には大学関係者70名(熊大からは2名)が傍聴に参加した。採決を急ぐ与党議員は審議時間の短縮を狙い質問を放棄し、午前中は定数の半数程度の委員しか出席しないまま審議は進められた。鳩山議員(民主党)が現時点でほとんどの大学の施設が「労働安全衛生法」の基準を満たしていないことに触れ、「2004年4月になって違法状態が解消されないなら、法案を凍結せよ」と追及したところ、河村文科副大臣は「そうならないように予算措置を含め努力する。予算措置は補正予算で、対処する」と答えた。しかし、その後、児玉委員(共産党)が補正予算の対処について追及したところ、「とっさに個人的願望を述べた」と答弁し、予算措置についてなんら根拠がないことが明らかになった。また法人の債務資料等、審議を行うための基礎資料を文科省が提出可能なのは5月末になってからであることが明らかになるなど、衆議院での審議自体を軽視し、強 引に法案を通過させようという姿勢が露骨に示された。野党議員の審議継続の訴えを無視し審議は打ち切られ、民主党からの修正案の否決後、国立大学法人化関連6法案は可決された。続いて異例の10項目にもわたる附帯決議が採択され、委員会は終了した。

2.与党も認める問題点
  与党である保守新党の熊谷代表でさえ5月13日の記者会見で、法人化が「結果として大学の自治や学問研究の自立を損ない、官僚支配になってしまう」危惧を表明している。附帯決議には「大学の自主性・自立性を尊重」という表現が繰り返し用いられているが、これは法案そのものが大学の自主性・自立性を崩壊させる危険をはらむことを如実に示すものでしかない。「中期目標」「中期計画」によって教育研究内容を規制され、文科省に設置される評価委員会によって業績を評価され、権限を強化された学長と「役員会」に運営され、どのようにして「大学の自主性・自立性」が可能なのか。
  たとえ法案が成立しても、48以上の政令、省令が今後制定される必要があるという。そして「労働安全衛生法」「労働基準法」などを2004年4月に遵守することが不可能であることも明らかになっている。それでも今国会で法案を成立させることにいかなる正当性があるのか。

3.遠山文部科学大臣の無責任ぶり
  審議において、遠山文部科学大臣は説明責任を放棄しているだけでなく、大臣の資質を疑う答弁を繰り返している。2004年4月時点での現行労働関係法令の遵守が可能かという質問に対して、「現在も人事院規則に違反しているわけですから」と答えた。法律違反の現状を放置してきたとすれば、自らの文部科学大臣としての責任をどのように考えているのか。また児玉議員(共産党)が、労働安全衛生法の適用について、「努力するという決意表明ではなく、結果責任がとれるのか」と迫ったの対し、「いいじゃない」と開き直った不規則発言を行い、委員会室は騒然となった。このように法律を軽視する問題発言を繰り返す大臣がそもそも法案を提出する資格などあるのか。

4.国大協は総意を明確に示せ
  国大協は現時点まで臨時総会を開催せず、総会での検討により総意を問う手続きを行っていない。国大協法人化特別委員会に至つては、「国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について(検討案)」なる文書を各国立大学長に送付するなど、違法・脱法行為を企図している。国大協法人化特別 委員会が5月22日(木)、国大協理事会が5月30日(金)、国大協総会が6月10日(火)に予定されている。「6月10日の国大協総会前には参議院の審議を終わらせない」と野党議員が述べている。 国大協は当事者として、主体的に法案に対する総意を明確に示すべきである。

5.レファレンダムに投票を!
  「国立大学法人法案の賛否を問う国立大学全体投票」への投票を重ねて呼びかけたい。第一期の投票結果は、賛成79票(2.7%)に対し、反対が2851票(97.3%)であり、国立大学構成員の圧倒的多数が 反対していることを明らかにした。この結果は国会議員のみならず、新聞報道でも広く紹介された。
  現在、第二期(5/10-6/13)の投票が行われており、参加をお願いしたい。
(詳細はhttp://ac-net.org/rfr
  熊本大学教職員組合はこの間、法案の閣議決定に対する反対声明の発表および記者会見(2月28日)、 県国公と連帯した街頭宣伝活動(3月27目、5月22日)、「法人化法案学習会」開催(4月24日)、「全労連キャラバン行動」への参加、地元国会議員、県、市などに対する要請書の提出(5月12日)など、学内外で幅広く法案の廃案を訴えてきた。また国会審議についても、傍聴行動の参加(4月16日、5月7日、14日、16日)、全国の組織と活発に交流し、国会審議に参考となる資料の提供などに協力してきた。現在、参議院文部科学委員会委員に対しても、「国立大学法人法案」の地方公聴会の開催を要請している。廃案を目指し、今後も粘り強く取り組みを続けよう。



 

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