No.9
2003.7.25
熊本大学教職員組合
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7月9日「国立大学法人法」成立
声明発表、緊急抗議集会を開催

 7月8日、国立大学法人法案が参議院文教科学委員会で採決され、9日の参議院本会議で可決成立しました。熊本大学教職員組合は即日「国立大学法人法案」成立に抗議する緊急声明(右記)を発表するとともに、学内で記者会見と緊急抗議集会を行いました。遅くなりましたが簡単に報告します。
 記者会見には組合から万羽委員長、井上書記長、木村全大教中央執行委員の3名が臨み、マスコミ4社の取材を受けました。緊急抗議集会には急な呼びかけにもかかわらず、大勢の方に集まっていただきました。万羽委員長の挨拶の後、伊藤書記局員から「大学人の義務を果たすためにー『国立大学法人法案』の国会審議を振り返ってー」と題し、国会審議の報告が行われ、法案審議の主要争点、論点が明らかにされました。討論の中では、大学の自治を守るため、また私たち の労働条件を維持向上させていくために今後果たすべき組合の役割の重要さを改めて確認しました。
 また、すでに法人化が決まっている国立病院、国立大学法人化反対を運動方針に掲げともに闘ってきた県国公からも発言をいただきました。最後に、当日発表した緊急声明を読み上げ、参加者全員の拍手で了承しました。

緊急声明:「国立大学法人法案」の強行採決に断固抗議する

2003年7月9日
熊本大学教職員組合

 本日7月9日、参議院本会議において「国立大学法人法案」ならびに関係5法案が強行可決された。これは、長年の大学人たちの闘いを通じて獲得され、維持されてきた大学の自治と学問の自由を破壊し、憲法・教育基本法の理念を根本から踏みにじる暴挙である。とりわけ教育研究内容に対する行政介入の仕組みは、1886年に公布された帝国大学令でさえ認めていないものであり、その意味で法案の可決は、戦前・戦後を通じた日本の大学の歴史における最大の汚点である。今後、この法律に基づいて、官僚の統制のもとに大学「改革」が進められることになれば、国立大学のみならず日本の大学全体の学問と教育研究に取り返しのつかない災禍をもたらすことになろう。
 この間、法案の国会上程の期間だけでも、国立17大学人文系学部長会議、全国農学部系学部長会議をはじめ、多くの教職員組合、さらには学部教授会、研究科委員会、学生自治会、院生協議会が、要望や反対の声明を公表し、法案の賛否を問うレファレンダム(電子投票による)においては投票者の97%が反対の意思を表明した。また1300人をこえる学者・文化人が「法人法案反対アピール」に賛同を寄せ、「意見広告の会」は全国カンパによる意見広告を4度にわたり実施するなど、大学教員・研究者のみならず、多くの市民が反対の声をあげ、多様な運動が展開された。  私たち熊本大学教職員組合も、国立大学の「独立行政法人化」の問題が浮上して以来、その時々の局面において問題点を分析し声明を公表するとともに、全国の運動に連帯しつつ全力を挙げて反対運動に取り組んできた。
 こうしたわれわれの運動を背景に、国会の場では、野党各党が一致して政府・文科省の追及を行ない、その結果、法案の矛盾と問題点、国会を無視した準備作業やごまかし答弁が次々に明らかとなった。また、労働安全衛生法の適用など法人化への移行に伴う種々の問題にどういう措置が講じられるのか、授業料はどうなるのか、国立大学評価委員会と総務省評価委員会において何がどう評価されるのか、等々、更なる審議の必要性がいよいよ明らかになってきた。また通常の会期内で成立しなかった以上、本来ならばこの法案は審議未了で廃案とすべきものであった。にもかかわらず、採決を強行したことは、審議過程で政府自らがこれ以上墓穴を掘ることを恐れたがゆえに他ならない。
 たしかに「国立大学法人法」は成立したものの、評価委員会の構成、運営費交付金の算出基準等、重要な部分は政令、省令にゆだねられたままである。また就業規則の作成、雇用の継承、役員人事、中期目標・計画の作成など不透明な部分はいまだに多い。今後、非公務員化のもとで、「効率化」や「流動化」を口実にした教職員に対する攻撃も強められるだろう。また業績主義と競争原理の徹底が大学の教育研究内容をゆがめ、学費の高騰や大学の統合・再編によって国民の等しく高等教育を受ける権利が著しく侵害されることになろう。私たち熊本大学教職員組合は、こうした攻撃を許さず、国民ならびに大学でともに働く仲間の権利と福利、大学の自治と学問の自由を守り、学問研究の健全な発展をはかるため、引き続き奮闘する決意である。

 

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