2003.10.27 |
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「過半数代表者」 |
来年4月より熊本大学は国立大学法人熊本大学に移行します。これに伴い私たちの身分は公務員ではなくなり、労働基準法(労基法)、労働組合法(労組法)などの労働法が完全適用されます。組合の役割を含めて私たちの労働関係は大きく変質します。 さて、10月23日の評議会において「熊本大学が国立大学法人熊本大学に移行することに伴う労働基準法等に規定する労働者の過半数代表者選出等に関する要項」が定められました。これにより労働条件の枠組みを労働法に基づく仕組みに変えていく作業が本格的に始まります。そこで、労働法における労働関係構築の仕組みをシリーズで解説することにしました。まずは過半数代表制の趣旨と仕組みを扱います。なお、今回の要項の作成経過などに関する問題点は別のニュースで述べることにします。 Q.過半数組合・過半数代表者とは何か A.労基法は労働者が働く際の最低の基準を定め、それ以下の条件で働かせることを禁止しています。しかし、現実には労基法の基準だけでは職場は成り立ちません。典型的なのは時間外労働です。労基法では一日の労働時間を8時間に制限しており、それを超えて労働を命じるのは労基法違反です。使用者には刑事罰が課せられます。ただし労働者の代表と協定を結んでいる場合には刑事罰は免除されます。この協定の当事者になるのが過半数組合・過半数代表者です。 もし、事業場で組合が過半数を組織していれば自動的に労働者代表になります。これを過半数組合と呼んでいます。過半数を組織していない時は、何らかの方法で労働者の代表を選びます。これを過半数代表者と呼びます。以下では過半数組合と過半数代表者の場合をあわせて過半数代表と呼んでおきます。 過半数代表は、労使協定を結ぶ権限のほか、就業規則に意見を述べる権限、労働安全衛生法に基づく衛生委員会の委員を推薦する権限などが与えられますが、選出の際は委任される権限を明記して行わなければなりません。 Q.事業場とは何か A.労基法の適用単位であり、労働基準監督署が労働条件が法令を守って運用されているか判断するための単位です。主に地域的な条件で判断され、別々の地域にあるものを一つの事業場にまとめることは、あまりに小さくなりすぎる場合を除いてできません。ただし同一地域にあっても異なる業種の場合には別の事業場にすることが可能です。熊本大学では、黒髪、本荘・大江、附属病院、京町の4つの事業場が置かれますが、これは以上の判断によります。 ただし、今後の組合と使用者との関係を事業場ごとに作らなければならないというわけではありません。組合は全学にまたがる単一組織として使用者に対していきます。 Q.選挙というが有権者の範囲はどうなるのか A.労働者の代表を選ぶのですから有権者は全労働者です。経営を委任された学長と役員である理事を除けば全員が労働者です。ただし、理事であっても講義などを行いそれによって賃金を得ているのであれば、役員兼労働者の扱いになって有権者の範囲に入ります。 また、非常勤講師、ティーチングアシスタントなども労働者です。ただし、勤務の態様から有権者としないケースが多いようです。労働基準監督署はこのような例外的な扱いも認めています。 Q.労働者なら誰でも過半数代表者になれるのか A.労基法施行規則第6条では「管理監督者」は過半数代表者になれないと定めています。「管理監督者」とは
Q.そうすると地位の高い人が労働者代表になるケースも出てくるのでは。組合としてそういうことを許していいのですか。 A.一般に課長補佐は管理監督者ではないというのが通例です。ですから、極端な場合人事課課長補佐が労働者代表になるなどということも法的には起こりえます。組合はそんな事態にならないよう、過半数組合を目指すとともにできなかった場合でも過半数代表者の候補を推薦して選挙に臨みます。 最初から組合にとって都合の悪い人を被選挙権者から外せといういう意見があるかもしれません。しかし、過半数代表制は労働者保護のために法的に定められた制度であり、組合の都合で恣意的に制度を運用させるのは過半数代表者の権威を傷つける可能性があります。組合は法人化後の大学の運営のあり方も含めて今後慎重に検討します。 Q.では、人事課長補佐も組合に入れるようになるのですか。おかしいではないですか。 A.違います。過半数代表者になれる資格と組合員になれる資格は違うのです。労組法第2条では、「役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの」は組合ではないと定めています。人事課長補佐は明らかにこれに該当しますから組合員にはなれません。組合員の資格を具体的にどう定めていくかは、組合のあり方とも関わる重大な問題です。基本的には、法的に許される範囲で最も広くなるように定めたいと思っています。
資料:関係法令等 労働基準法第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。 労働基準法第41条 (前略)労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。 2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者 労働基準法施行規則第6条2 (過半数代表者は)、次の各号のいずれにも該当する者とする。 一 法第四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。 二 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。 資料:過半数代表の権限 労基法により過半数代表との労使協定が必要な事項は以下の通りである。 ①貯蓄金に関する協定(一八条) ②賃金控除に関する協定(二四条但書) ③一ヶ月変形労働時間制度(三二条の二) ④フレックスタイム制(三二条の三) ⑤一年単位変形労働時間制度(三二条の四) ⑥一週間単位変形労働時間制度(三二条の五) ⑦一斉休憩付与原則適用除外協定(三四条第二項但書) ⑧時間外休日労働協定(三六条) ⑨事業場外労働みなし労働時間協定(三八条の二第二項) ⑩専門業務型裁量労働制(三八条の三) ⑪計画年休協定(三九条第五項) ⑫年休手当支払方法に関する協定(三九条第六項) また、雇用保険法(施行規則一〇二条の三など)や育児・介護休業法(六条など)にも労使協定を要件とする制度が存在する。他に労働安全衛生法などに基づき設置される労使委員会の委員を推薦・指名する権限を持つ。 |