No.17
2003.11.12
熊本大学教職員組合
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法人化後の労使関係Q&Aシリーズ 2
「就業規則」

 法人化後、私たちは事業主と個別に労働契約を結んで働くことになります。しかし、何も基準がなければ契約内容はどんどん切り下げられかねません。それを防止し、労働者を保護するために作られたのが労働基準法(以下では労基法)です。
 労基法はまず賃金労働における最低の条件を示し、それに違反する行為には刑事罰を課します。次に、10人以上の労働者を雇用する事業主に対し労働条件を明示した就業規則を作成し労働基準監督署に提出することを義務付けます。しかも、就業規則の提出の際には労働者代表(シリーズ1 「過半数代表者」参照)の意見を添えなければなりません。これによって、労働条件に労働者の声が反映しやすい環境を作ります。
 就業規則に労基法に触れる内容があるときには、その部分は無効になり労基法の規定が適用されます。個々の労働者の勤務条件は労働契約によって定められますが、その内容は就業規則を下回ってはなりません。以上を図示すれば下のようになります。

           労働者の意見
               ↓
労基法の基準≦就業規則の基準≦労働契約
(個々の労働者の実際の雇用条件)
   ↑
最低の基準      →より良い労働条件

 現実には、就業規則を上回る条件で労働契約を結ぶ労働者はまれでしょうから、私たちの労働条件は就業規則によって決められると見て差し支えありません。なお、就業規則で定められた労働条件を改善するためには、労働者が団結して使用者と交渉し労働協約を結びます。これは組合の最も重要な役割であり、詳細は別のニュースに回します。
 以上みてきたように就業規則は就業する際の規則ではなく、私たちの労働条件を明確にするために作られるものです。それを使用者に守らせることによって労働者保護を図るのが目的なのです。ですから、使用者には全労働者に就業規則を周知する義務があります。また、就業規則を作成・変更する場合には労働者代表の意見を聞かなければならないのです。このような就業規則の役割を認識して、労働者代表は使用者との協議に臨む必要があります。

Q.就業規則にはどのような内容が記載されるのですか。
A.まず、絶対的必要記載事項として、@始業終業時刻、休憩時間、休暇などA賃金の決定、支払いの時期、昇給などB退職などの3項目があります。これは必ず記載しないといけません。次に、相対的必要記載事項があります。これらは該当する制度がある場合には必ず記載しなくてはならない事項です。大学では、退職手当、共済組合費の負担、表彰制裁などが該当します。これらの記載事項が労働条件を明示するという就業規則本来の役割です。労働者代表は示された労働条件が労基法などに整合しているか、自らの要求がどこまで取り入れられているかなどをチェックします。これ以外に何を書くかは使用者の判断によります。労働者代表は労働者の自由と権利を制約させないという立場から意見を述べる必要があります。

Q.自由と権利を制約させないとは具体的にどういう意味ですか。
A.就業規則は労働者の労働条件を体系的に示す規則です。ですから、就業規則を読めば労働者の義務だけではなく権利も分かるようにする必要があります。例えば「使用者は時間外労働を命じることができる」という規定が無限定におかれていれば、時間外労働の拒否は就業規則違反になってしまいます。時間外労働を命じるための事由を明示するとともに、時間外労働を拒否できる事由も定めておく必要があります。(この事由は労使協定で定めることもできます。)
 また、職務専念義務のような包括的ないかようにも解釈できる規定を盛り込むことも問題です。労働者は勤務時間に使用者の指揮命令下におかれることは明らかですが「すべての注意力を職務のためにのみ使う」などということができるはずはありません。またそれを客観的に判断することもできません。職務専念義務違反が多くの場合組合活動つぶしに利用されてきたことを忘れてはなりません。

Q.労働者代表が就業規則に意見を述べたとき、事業主はそれに従わないといけないのですか。
A.就業規則は基本的に事業主が作るものです。残念ながら労働者代表の役割は副次的なものに止まります。ですから、労働者代表の意見を聞くことは義務付けられていますが、それに従うことまでは求められていません。ただし、労働者代表の意見聴取は労基法の労働者保護の理念に基づいて行われるのですから、当局側には個々の意見に誠実に対応する義務はあります。意見に基づく協議は不可欠であり、意見書だけ出させて後は一切無視するという態度は法の理念に反します。

Q.事業主が就業規則の労働条件を切り下げた時、個々の労働者はそれを拒否できますか。
A.就業規則の不利益変更に合理的理由があれば拒否できないという判例があります。組合の団体交渉によって、不利益変更を撤回させるような取り組みが必要です。

Q.就業規則は職種ごと事業場ごとに作られるのですか。
A.基本的には一本です。ただし、別規則に委ねる項目も多いでしょう。特定の職種に固有な別規則もあるかもしれません。そのような場合は本則に委任規定をおいて関係を明示します。また、別規則も含めて就業規則なので、全体を労働基準監督署に提出しなくてはなりませんし、過半数代表の意見聴取もすべての規則に対して行われます。
 ここで注意すべきはパートタイム労働者(通常の労働者より、所定労働時間が短い労働者)の扱いです。パートタイム労働者を雇用する際にはパートタイム労働者のための就業規則を作らなければなりません。そして、パートタイム労働者の過半数を代表する者の意見を聞くよう努めなくてはなりません。これは義務規定ではないのですが、パートタイム労働者の代表(過半数組合または過半数代表者)をきちんと決めておく必要があります。

就業規則は私たちの労働条件を定める文書です。それに労働者を代表して意見を述べるのが過半数代表者の役割です。組合では、附属病院事業場では過半数組合としてこの意見表明を行います。黒髪事業場および本荘・大江事業場では推薦候補をたてて過半数代表者選挙に臨み、信任を得た場合には過半数代表者を全面的に支援しながら意見聴取に対応します。選挙は27日に行われますが皆さんのご協力をお願いします。

資料 就業規則の必要的記載事項


 必要的記載事項は、労基法89条に列挙されており、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項とに分けられています。

<絶対的必要記載事項>:必ず記載しなくてはならない事項
@始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合の就業転換に関する事項
A賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締め切り及び支払い時期並びに昇給に関する事項
B退職に関する事項(退職手当を除く)

<相対的必要記載事項>:何らかの定めをする場合は必ず記載しなくてはならない事項
Bの2 退職手当の適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
C臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金に関する事項
D労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
E安全衛生に関する事項
F職業訓練に関する事項
G災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
H表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
I前各号のほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される事項

 なお、@の「休暇」には、育児・介護休業法による育児休業及び介護休業、任意に与えることとしてる慶弔休暇、夏期休暇等も含まれる。

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