2003.11.18 |
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「労使協定」 |
現在、学内で過半数代表者の選挙が行われています。この過半数代表者の役割の一つが労使協定の締結です。今回は労使協定について扱うとともに、過半数代表者の役割の重要性を認識していただき、一人でも多くの教職員の皆さんが過半数代表者選挙に参加するように訴えます。 Q.労使協定とは組合が使用者と結ぶ協定のことではないのですか。 A.違います。いくつかの法定事項について、労働者の過半数を代表する者が使用者と結ぶのが労使協定です。それぞれの事業場において、過半数を組織する組合がある場合には組合が労働者の代表となり労使協定を結びます。しかし、組合が過半数の労働者を組織していない場合には、組合として労使協定を結ぶことはできません。今回の選挙のように労働者の代表を選んで、その人が労使協定を結ぶのです。組合が使用者と交渉し、合意事項を文書でまとめたものを労働協約といいます。これは労使協定とはまったく異なる質のものです。労働協約については別のニュースで解説します。 Q.労使協定を結ぶ事項にはどのようなものがありますか。 A.労働基準法に基づく労使協定事項は以下の通りです。 ①貯蓄金に関する協定(一八条) ②賃金控除に関する協定(二四条但書) ③一ヶ月変形労働時間制度(三二条の二) ④フレックスタイム制(三二条の三) ⑤一年単位変形労働時間制度(三二条の四) ⑥一週間単位変形労働時間制度(三二条の五) ⑦一斉休憩付与原則適用除外協定(三四条第二項但書) ⑧時間外休日労働協定(三六条) ⑨事業場外労働みなし労働時間協定(三八条の二第二項) ⑩専門業務型裁量労働制(三八条の三) ⑪計画年休協定(三九条第五項) ⑫年休手当支払方法に関する協定(三九条第六項) このうち、②、③、④、⑤、⑦、⑧、⑩の事項が今回選出される過半数代表者の権限です。 Q.労使協定は法的にどのような効果がありますか。 A.上記の労使協定事項は基本的に労働基準法に触れる内容です。例えば、賃金控除は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」という労基法24条の規定に反します。宿舎費などを賃金から控除して支給することは労基法違反であり刑事罰の対象になります。労使協定にはその罰を免除する効果があります(免罰効果)。前回述べたように労基法の定める労働条件は使用者が守らねばならない最低の基準です。それを逸脱することを認めようというのですから、過半数の労働者の代表との協定が義務付けられているわけです。ただし、時間外労働などを命じるためにはそれを就業規則に明示していなくてはなりません。労使協定の効果は免罰効果だけであり、時間外労働を命じる根拠にはならないからです。 Q.労使の合意ができず協定が結ばれなかったらどうなるのですか。 A.例えば、時間外休日労働協定が結ばれなければ使用者は時間外勤務を命じることはできません。労働者が時間外に働こうとしても、使用者は1日8時間の勤務時間を守るようにさせないといけません。できなければ労基法違反であり刑事罰の対象になります。使用者側には協定を結ばないという選択はありえず、労働者側は強い立場で交渉に臨めるのです。 Q.時間外休日労働協定で定めなくてはならない事項は何ですか。 A.この協定は労基法36条に基づくので、一般に三六(サブロク)協定と呼ばれます。協定の届出は使用者が労基署に対して所定の様式で行いますが、その際に記載すべき事項は ① 時間外又は休日労働をさせる必要のある具体的な事由 ② 業務の種類(具体的に) ③ 労働者数(対象となる労働者の実数を記入します) ④ 延長することができる時間 (1) 一日について (2) 一日を越える一定期間(起算日も) です。①の事由については、できるだけ具体的に記載する必要があります。これは時間外労働は、あくまで特別な事情の下にのみ行うべきと考えられているからです。恒常的な時間外労働は労基法の趣旨に反します。④の時間数については、指針が示されています。1年単位の変形労働時間制を導入していない場合、1週間につき15時間、1ヶ月につき45時間、1年につき360時間が限度です。これらの事項は必ず協定に入れなくてはなりません。 他に、時間外労働の場合の賃金の割増率(公務員では25%ですが、労基法の規定は25%以上です)、時間外労働を拒否する場合の事由も定める必要があります。 Q.時間外休日労働をさせる事由、拒否できる事由について考えを教えてください。 A.まず、「させる事由」ですが、あまり一般的包括的な規定を置くのは望ましくないと思います。①事故、トラブルなどへの対応②時期的、時間的に加重する業務の処理③入学試験など④会議などが考えられます。「拒否できる事由」については法的に制限される場合のほか、①職員の健康状態②すでに予約済みの行事(コンサートなど)への参加③組合活動などがあるでしょう。どちらも使用者側との協議の中でつめる必要があります。特に組合活動を理由とした拒否は、組合と使用者の間でのルール作りが必要です。 Q.三六協定で決められた時間以上に時間外労働を行った場合どうなるのですか。 A.使用者には割増賃金を支払う義務があります。ただ支払ったとしても免罰されないので、刑事責任を問われる可能性があります。 Q.変形労働時間制とは何ですか。 A.一ヶ月単位、一年単位で日ごとの所定労働時間数を調整する制度です。他に週単位というのもありますが小規模の小売業などに限られており大学には認められていません。例えば、月末が忙しいという職場には、最後の週の所定労働時間を9時間に、その他の週を7時間30分にするということもできます(一ヶ月単位の変形労働時間制)。夏休みの勤務時間を少なくし(あるいは休日を増やし)、繁忙月(教務関係なら1月〜4月でしょうか)の勤務時間数を多くすることも、年間変形労働時間制を導入すれば可能になります。ただし、1日8時間、週40時間という規定は、期間を平均して達成されていなければなりません。 なお年間変形労働時間制の場合、労働日ごとの労働時間は各月の初めに指定すれば良いことになっていますが、一日の労働時間は10時間以内、一週間では52時間以内という制 限があります。また、年間変形労働時間制を導入した場合、時間外労働の時間数制限はより少なくする必要があります。 Q.フレックスタイム制とは何ですか。 A.始業終業時間を労働者の判断にゆだねる制度です。コア・タイムを設け一定の時間の 勤務を義務付ける場合もあります。結果として一日の労働時間が8時間を越える場合もありますが、それだけでは時間外労働とは扱いません。精算期間とその間の所定労働時間を 定めておき、実際の労働時間とを比較して時間外勤務の時間を定めます。実際の労働時間が不足する場合は、次の期間に繰り越す場合と賃金を減額する場合があります。 Q.裁量労働制とは何ですか。 A.業務の遂行の方法や時間の配分などを、使用者が具体的に指示せずに労働者の裁量に任せる制度です。専門業務型と企画業務型の二つがあり、専門業務型は労使協定の締結によって、企画業務型は労使委員会の設置によって導入が認められます。専門業務型裁量労働制の対象業務は労基法施行規則に定められていますが、平成16年1月1日より大学教員が加えられる予定です。ただし、「主として研究する業務に限る」とされており、全面的な導入は困難です。授業を行う教員は労働時間をその裁量に任せられているわけではありません。
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