No.23
2003.12.1
熊本大学教職員組合
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法人化後の労働条件改善のため要求書の提出とともに交渉を申し入れました

 今年度の組合の労働条件に関する要求は法人化後にどういう労働条件を構築していくかを据えてまとめる必要があります。とりわけ、法人移行時から実現させなくてはならない項目については、今年度中に交渉を行うことが不可欠です。合意事項は当事者間で文書にまとめるよう求め、来年の4月に労働協約として発効させることを目指します。なお、労働協約を結ぶためには組合規約の改正を行う必要があります。現在、この点を含め組合規約改正案の作成作業を進めています。
 このような考えから12 月1 日学長に対し要求書の提出と交渉の申し入れを行いました。なお、内容には大学運営に関わる事項は含めていません。この点については別途懇談を申し入れる予定です。その他の項目も、法人化前に緊急に交渉すべき事項と組合として主張しておくべき事項に絞り込んでまとめており、従来の学長交渉要求書と大幅に内容が変わっています。このニュースでは要求書の内容とその解説を行います。
 なお、項目の中には過半数組合・過半数代表者としての就業規則についての協議で行われるものもあります。組合の要求の実現のためにどういう形態で交渉を行うべきかを考えながら、早期の交渉実現を図ります。

要求書とその解説

1.労働条件に関する効率的な交渉の実現のため、熊本大学の経営状況、教職員の給与実態を組合に公開すること。
【解説】公務員制度下では労働条件は法律によって定められていました。労働者の待遇改善は国による予算措置を伴うので、経営的観点は不要でした。しかし、法人化後は主な収入は国からの運営費交付金になりその中で労働条件の改善に取り組むことになります。組合の要求に対する当局の回答も「制度がない・定員がない」ではなく「予算がない」に変わってきます。しかし、単に予算がないとの理由だけでは誠実交渉義務に応えたとは言えません。組合の要求に応じる場合どの程度の費用がかかるのか、それが現在の法人経営にどういう影響を与えるのか示す責任があります。
2.定員外職員を職員の意向に基づいて正職員として雇用すること。とりわけ
(1)看護職員、医療技術職員など国家資格を有し、大学独自に選考採用している職種の者
(2)長期にわたり日々雇職員として正職員と変わりのない業務を行ってきた者 については全員正職員とすること。

【解説】定員外職員の定員化の困難さの理由は、定員枠と採用試験です。このうち、看護師など国家資格を持つ人は定員枠のみが問題でした。以前は定員外で採用されても多くは1年以内に定員化されていました。しかし、最近の看護婦増員が定員を伴わない形で行われてきたために、定員外の看護婦は大幅に増えており、定員化されないまま3年の期限を迎えるのではないかという不安が広がっています。その不安を解消するためにも、定員化の方針を明確に示す必要があります。しかも、全員3年以内なので定員化したとしても人件費はそれほど増えません。今後大学が優秀な看護婦を確保していくためにも絶対必要な施策でしょう。
 一方、期限のつかない日々雇職員はすでに25年以上の勤務年数になっています。公務員試験に合格していないというのが理由ですが、正職員との待遇格差は目を覆うばかりです。賃金における正職員との2割以上の格差を公序良俗に反し違法とする判決もあります。抜本的な待遇改善は使用者の責務です。
3.法人化を機にした定員外職員の雇い止めを行わないこと。
【解説】定員外職員は大学の業務の遂行上なくてはならない役割を果たしてきました。しかし、運営費交付金の配分基準すら明らかにされない状況では、法人化後の経営は不透明でありこれを機会に定員外職員を雇い止めにしようとする動きが広がっています。組合は雇い止めの不当性を訴えるとともに、それが事務職員へのさらなる過重負担につながることを訴えます。
4.フルタイム職員を採用する際には、任期は3月31日までとし1日の空白を設けないこと。
【解説】一日の空白は、定員外職員が継続的に雇用されているわけではないという建前を取り繕うために公務員制度下でのみ行われている措置です。しかし、労基法下では一日の空白を置いたからといって継続的雇用ではないと判断されません。むしろ臨時職員の雇用を更新する場合には、できる限り雇用期間を長く取るように求めており、3月31日までとするのは当然です。
5.パートタイム労働者法では通常の労働者を新たに募集する際に、パートタイム労働者に優先的に応募する機会を与えるよう求めている。このことを踏まえ法人化後の職員採用システムにおいては臨時職員が応募しえる形態にすること。国立大学法人の統一採用試験がそのような形態でないのであれば、大学として独自の採用システムについて検討すること。
【解説】統一採用試験についてはまだ内容は明らかになっていません。それが現在の公務員試験を踏襲するのであればパートタイム職員の応募は困難です。
6.臨時職員の待遇を基本的に正職員と同一にすること。
【解説】公務員制度は必要な人員は定員として措置してあるという建前があります。一時的に業務が集中する場合に臨時に人を雇用することがあったとしても、継続的に雇用するという事態は想定されていません。そのため、長期に在職する定員外職員への配慮はなく、正職員との待遇格差が放置されています。これは労基法の均等待遇の考え方に矛盾しており、大学として早急な対策が求められます。なお、この項目の具体事項は臨時職員就業規則(案)に関する協議でも行います。
7.パートタイム職員の手当てについて見直すこと。特に期末手当の支給を実現すること。
【解説】パートのボーナスについては人事院も支給可能との判断でしたが、しかし、文部科学省が支給困難な大学もあるという理由で認めてこなかったものです。法人化後は文部科学省の指導はなくなりますので大学としての判断が求められます。これは前項の要求の一部でもありますが、従来重点要求事項として掲げてきた経緯もあり別項目としました。
8.看護婦確保法の適用に伴い、月8日以内複数夜勤の体制を実現すること。
【解説】法人化に伴い看護婦確保法(看護婦等の人材確保の促進に関する法律)も適用されることになります。それに基づく基本指針には「複数を主として月八回以内の夜勤体制の構築に向けて積極的に努力する必要がある。」と明記されています。熊本大学附属病院では平均月8.9回程度であり早急な対応が必要になります。
9.看護師の夏期休暇について取得期間を弾力化すること。
【解説】夏期休暇は7月から9月の範囲でとることになっていますが、看護師の職場ではそれを保障することが困難です。これを弾力化してゆとりをもって夏期休暇を取得できるようにすることを求めます。予算・人員の措置を伴わないささやかな要求ですが、労働協約の第一号として期待しています。
10.看護助手を行政職(二)表3級相当に昇格すること。
【解説】看護助手の3級昇格は今年度も見送られてしまいました。その理由は医療職(三)の定数を流用しているからというだけです。この項目については、当局の同意がいただけることを確信しています。
11.医療技術職員(診療放射線技師、臨床検査技師など)の夜間における勤務体制については組合との協議を行うこと。その際、職員の過度な負担にならないよう配慮すると共に、必要なら増員を行うこと。
【解説】法人化後は業務当直という形で夜間の業務に対応することができなくなります。これにどう対応するかはまだ明らかにされていません。早急に職場の意見を取り入れる形で検討を行う必要があります。
12.事務職員の昇格における男女格差についてはその実態を公表すると共に、改善のための実行プランを作成すること。
【解説】従来から要求している事項ですが、法人化によって組合の役割が大きくなるので、改善のための実行プランの作成まで視野に入れた要求としました。
13.助手の勤務実態を調査し適正な処遇を行うこと。
【解説】助手はその多くが研究業務に従事していますが、図書管理など教員の事務サポートを行っている例もあります。そのようなケースでは、教員ということで時間外手当も出されません。職種別の定員の縛りがなくなるので勤務実態に見合った処遇を行う必要があると考えます。
14.教員の人事・懲戒については教育公務員特例法の趣旨を踏まえた運用を行うこと。
【解説】法人化に伴い教育公務員特例法は適用されなくなります。ただし、多くの私立大学で教育公務員特例法の趣旨に即した運用がなされています。熊本大学においてもその趣旨を就業規則に盛り込む必要があります。
15.所定内労働時間を1日7時間30分とすること。
【解説】現行の所定労働時間は30分の休息時間を含むので実質上7時間30分です。これは多くの民間企業での水準と一致します。労基法の基準は最低の基準ですのでそれを根拠に8時間とする必要はありません。
16.職員の労働時間の管理を適正に行い長時間労働を無くすとともに、サービス残業を全廃すること。
【解説】サービス残業問題についての大学が取りえる選択肢は、事務量の削減と労働時間管理の工夫で超過勤務自体を削減することしかありません。これを放置し超過勤務が減らなければその分の手当てを支給しなくてはならなくなります。「研究費にしわ寄せが来る」という理由は時間外手当のカットという違法行為の理由にはなりません。
17.時間単位の年休取得を維持すること。
【解説】年休の本来の趣旨は1日単位です。しかし、勤務の多忙化と労働者の生活パターンの多様化で、時間単位の取得は不可欠と考えます。
18.職員の定年を65歳とすること。それが困難な場合には、年金給付年齢の引き上げに合わせて段階的に定年を引き上げること。
19.労基法第68条に基づく休暇(生理休暇)は有給とすること。
20.組合員の職種換・出向・解雇・懲戒については事前に組合との協議を行うこと。

【解説】公務員の身分保障が無くなったとき、個人の力だけで雇用を守るのは困難です。それは組合に団結することによって初めて可能になります。組合は事前協議の労働協約を結ぶことによって、不当な人事異動を阻止したいと考えています。
21.組合事務所の老朽化の現状から代替スペースの確保は急務である。良好な労使関係の維持のためにも組合事務所の確保に責任を持って取り組むこと。また組合への便宜供与として従来から行われてきた掲示板スペースの供与の他、あらたに学内LANへの接続、組合費のチェックオフを行うこと。

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