No.35
2004.2.9
熊本大学教職員組合
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熊本大学の制度設計もこれで決まりか?
  三次案に見る制度設計の問題点

 1月23日,法人制度設計委員会は「国立大学熊本大学の制度設計(三次案)」を取りまとめました。この文書は2月2日に熊本大学ホームページに掲載されましたが,今後の意見聴取については扱いはなく取りまとめ方法についても説明はありません。おそらく近日中に正式な文書として確定するものと思われます。昨年7月に検討状況が出されてから一次案二次案を経てようやく決定されようとしています。多岐にわたる検討課題に長期間精力的に検討を続けられてきた法人制度設計委員会の委員の皆さんに敬意を表します。
 組合では各段階での意見聴取の際に,意見を述べてきました(内容については組合ホームページをご覧ください)。その一部は案に取り入れられましたが多くの点は受け入れてもらえませんでした。1月7日に行われた学内説明会において,意見があれば直接出すようにとのことでしたので,重点項目を5つに絞り込んで最後の意見書を出しましたが,三次案でも意見が反映されることはありませんでした。このニュースでは,この意見書を通じて述べてきたことを中心に三次案の問題点を指摘するとともに,法人化後の大学運営の中で改善するよう訴えます。

問題点1 部局等の位置付けについて
 「部局等は,役員会で策定する全学的な方針に基づき,教育,研究,地域貢献・国際貢献などの具体的業務を遂行する。」
 この文章では,方針の策定は役員会で行い,部局等は単なる具体的業務の遂行機関になってしまいます。しかし,部局等は部局の目標・計画も審議・立案する責任があります。役員会の全学的な方針もそれらの部局等の案を基礎に全学的な方針を策定するはずです。であればこの規定に問題があるのは明らかです。組合では「部局等は,役員会で策定する全学的な方針を踏まえ,教授会の議を経て,教育,研究,地域貢献・国際貢献などの具体的業務を遂行する。」とするよう提案してきましたが,最後まで変更されませんでした。

問題点2 学長解任審査手続きについて
 提案では,解任請求があった場合まず書類審査を行い,不備がなかった場合には学長選考会議の3分の2以上の賛成で意向聴取を行うことになっています。しかし,この方法には重大な問題があります。解任の意向聴取を行うことは,解任することとは異なりますから,書類に不備がなければ意向聴取に移るのが当然です。仮に却下する場合がありえたとしても,却下のための具体的な基準は定めておく必要がありますし,その基準に基づかない恣意的な判断は許されるべきではありません。
 しかも,3分の2以上という要件はどこからくるのでしょうか。この点について学内説明会では「不利益処分を行うには3分の2以上の賛成が必要」と説明されましたが,解任と解任のための意向聴取の実施とはまったく質が異なります。「政争を起こさない」という説明もありましたが,解任請求には有権者の3分の1以上の賛同または経営協議会及び教育研究評議会構成員の半数以上の賛成が必要ですから,解任請求があったということはすでに政争状態になっていると判断できるのではないでしょうか。であれば,意向聴取を行い政争に早期にピリオドを打つのが最善の措置のはずです。学長選考会議が学長を支持する立場から意向聴取に反対(3分の1以上でよいのです)するとしたら,政争はむしろ泥沼化してしまうのではないでしょうか。

問題点3 管理体制図について
 「戦略的な施策作りが必要な会議」の下に推進本部等を置いて執行を担うとされていますが,経営協議会・教育研究評議会との関係が示されていません。「戦略会議」で立案した施策は経営協議会・教育研究評議会の審議を経てから執行に移すことを明記すべきです。

問題点4 再雇用について
 「再雇用する際には,欠員状況,在職時の勤務実績,健康状態,勤務意欲,再雇用しようとする職への適性等を勘案して行う」
 高年齢者雇用安定法の趣旨をまったく無視した表現です。欠員状況というのは法人化後は公務員の定員という概念がなくなるので意味を持ちません。なお,この法律は現在改正が検 討されており,65才までの雇用確保を努力義務から義務になる予定です。再雇用を希望する職員は基本的に再雇用する枠組みを作るべきです。

問題点5 職務専念義務について
 「その勤務時間及び職務上の注意力すべてを職責遂行のために用い,熊本大学がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」
 法人化後の労働は労働契約に基づいて提供されます。労働者の義務は勤務時間に業務命令かにおかれ誠実に労働を提供することです。これについては誠実義務に規定されています。「注意力すべて」ということは非人間的な状態を強いるものであり削除すべきです。
 以上が二次案への意見として重点項目に掲げたものです。なお,追加の問題点として次を指摘しておきます。

問題点6 教員の任期制について
 労基法第14条では期間を定めて労働契約を認めています。しかし,大学教員等に任期を付する法律が私立大学教員にも適用されることを見れば,教員への任期は基本的に特別法である任期制法に基づいて行われるべきです。なお,外国人教員の任期の根拠になっていた特別措置法は法人化後は適用されません。

 最初の三つの問題点については今後の学内議論の中で改善していくよう求めます。後半の三つの問題点については就業規則の議論を通じて,また要求書に基づく交渉を通じて改善を目指していきます。また,ここに述べた以外にも多数の問題点が残されています。組合としては教職員の皆さんのご理解とご協力を頂きながらその改善に努力していく決意です。

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