2004.3.8 |
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3月4日と5日に就業規則の説明会が開催されました。このニュースではその際問題なった拘束時間の30分延長問題について取り上げます。このことについては組合としては労働条件の不利益変更であり、使用者側は不利益変更の合理的理由を説明する責任を負うと考えています。あわせて、拘束時間の30分延長に反対する学内署名に取り組んでおりますので皆さんのご協力をお願いします。
さて、30分終業時刻が延びたってこの長時間労働のもとではたいした問題ではないと感じる職員の方も多いと思います。そういう方には次のことにご理解をお願いします。 1。看護師の現場では拘束時間の延長によって準夜・日勤、日勤・深夜の間隔が7時間になってしまっており、深刻な影響があります。 2。法人化後は予算の枠を理由に超過勤務手当を支給しないことは許されません。経営上の問題で労働者に不利益な扱いを求めるのであれば、まず法人化後の経営状況を率直に説明すべきです。 拘束時間30分延長についての説明とその問題点 説明1 公務員制度では30分の休憩時間の前後に15分ずつの休息時間をとっているが労基法では休息時間がないので1時間の休憩時間をとることにした。その結果、終業時刻が30分遅くなった。 さて、休息時間は人事院規則15-14に定められているものであり、労基法には対応する概念はありません。しかし、労基法に定められていないからといって休息時間を設けることが労基法違反になるわけではありません。実際、手待ち時間(現実の指揮命令下におかれ就労のために待機している時間)という休息時間に良く似た仕組みはあります。休息時間をすべて休憩時間に変えなければ現行の1時間の昼休みは維持できないという説明は誤りです。就業規則の最初の案では前半の15分の休息時間のみ休憩時間に振り替え、結果的に拘束時間の延長を15分に止めていたではないですか。 説明2 公務員制度でも労働時間は8時間であり、休息時間を30分入れることによって実質的に7時間30分にしていた。このようなやり方は法人化後は社会の理解を得られない。 この説明ですと、現在の公務員の労働時間システム自体が社会の理解を得られないとなります。使用者側は人事院規則自体を批判しようと言うのでしょうか。一方、所定労働時間を8時間より短くしている企業も数多くあります。平成10年における1日の所定労働時間の全国平均は7時間40分であり、8時間にしないと社会から理解が得られないという説明は理解に苦しみます。労基法の8時間という規則は使用者が守らなければならない最低の基準であることをお忘れではないですか。 説明3 公務員制度でも労働時間は8時間なのだから何も変わってはいない。 では、8時間の労働時間に含まれていた30分の休息時間はどこに行ったのですか。今まで休息時間は比較的自由に利用できていたはずです。この時間を一方的に奪うのは労働条件の不利益変更にならないのですか。
さて、黒髪事業場での説明会では本田専門員から次の驚くべき説明がなされました。 説明4 休息時間のような勤務時間内に働かなくても良いような制度は認められず、休息時間を置くなら休憩時間とするように労働基準監督署から指導を受けた。 この説明に絶句しました。そこで、説明会終了後に熊本労働基準監督署に問い合わせました。問い合わせに対して、「休息時間を認めないと言うような指導は行うはずがない。休憩時間が30分では労働基準法に違反するのでこのままでは違法だと言う説明を取り違えたのではないか。休息時間30分のうち15分のみ休憩時間に振り替えれば法的には問題ない。終業時刻を30分繰り下げたとしたら不必要に拘束時間を延ばすことになり、労働条件の不利益変更と言われても仕方がない。これは拘束時間の短縮と言う労働基準監督署の方針にも反している。どういう経緯でこのような説明が行われたのですかね。」とのことでした。労働基準監督官の判断には個人の裁量が認められており、人によって判断が異なることもありますが、この件については本田専門員の説明のような指導はあり得ないことが判明しました。 要するに説明会での本田専門員の説明はまったくの誤りです。彼が労働法を理解できずに監督官の説明を誤解したか、意図的に説明会で嘘をついたか何れかとしか思えません。この説明は大学の開催する公的な場で行われたのですから、公的な場で釈明と撤回を行うよう求めます。 労働条件の不利益変更には合理的理由が必要 何故昼休みは一時間のままなのに拘束時間が30分延びるのでしょうか。これを不利益変更にあたらないと言う使用者側の態度に憤りを禁じ得ません。 さて、労働法のもとでは労働条件は就業規則の変更で変えられます。しかし、就業規則の不利益変更は合理的な理由がなければ無効ということは判例で確立しています。 現在の所定労働時間が1日8時間であることを認めたとしても、30分の休息時間を奪うことは明らかに労働条件の不利益変更です。使用者側はこの不利益変更を行わなければならない合理的な理由を明示すべきです。それができないのであればこの提案を撤回すべきです。 資料 最高裁の判断(労働政策研究・研修機構ホームページより) 「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」「合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して決定すべきである」
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