2004.11.1 |
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附属病院における超勤手当カット事件に関連して |
医学部支部組合ニュース(全学配布)でもお知らせしたように、附属病院において10月の賃金支給額から9月分の超勤手当が一部カットされていたことが判明しました。組合の迅速な対応により使用者側は全額支給に向けて努力することを約束しました。しかし、この「事件」はいくつかの問題点を浮き彫りにしました。 ・超勤手当は予算の範囲内でしか出せないという使用者の意識 病院事務部は、このままでは超勤予算が12月で底をつくとの判断から、1月から突然0にすると影響が大きいので今のうちに支給額を減額しようと考えたそうです。公務員制度ではこの措置は止むを得ないものですが、法人化された以上は時間外労働に対して賃金を支給しないということは許されません。実際、熊大の予算案でも予備費の使途として、時間外手当が不足した場合への対応があげられていました。 ・予算不足を理由に超勤時間を少なめにつけるように指導が行われた職場も 始業時刻と終業時刻の正確な把握は使用者に課せられた義務です。職員の自己申告にゆだねる場合にも、正確に申告するように指導するとともに、予算枠などを理由に適正な申告を阻害するようなことはあってはならないとされています(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」2001年)。この行為は、この基準に明白に反します。 厚生労働省は賃金不払い残業を許容してしまう職場風土の改革について、組合と使用者の双方が協力して取り組むように求めています(「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」2003年)。7月に行われた労使協議において、組合から始業時刻・終業時刻を正確に記録することを職員に呼びかけるポスターを人事課と連名で作ろうと提案しましたが、それはこの指針に基づいてのことです。 しかし、使用者側は3ヶ月経過した今になってもなんら明確な対応を示しません。その中で今回の「事件」が生まれたのです。使用者側が勤務時間の適正把握と賃金不払い残業を生む職場風土の改善という当然の努力義務を放置してきたことが、今回の「事件」の最大の原因と考えます。 賃賃金不払い残業の放置は熊大の経営基盤を危うくする 勤務時間を適正に把握せよという組合の主張について、「でも、適正に把握したら次は手当を全額支給しろということになる」と非公式に述べた職員がいます。時間外手当を減らすために適正な把握を行わないというわけです。教職員の皆さんの中にも、予算がないのだから仕方がないとこの職員の言い分を正当化する人もいるでしょう。ここではそのような態度が大学に何をもたらすかを簡単に述べておきます。 労基法のもとでは、法定労働時間を越えて労働させる場合には割増賃金を支給しなくてはなりません。これを怠るのは違法行為であり、使用者は刑事責任を問われることになります。労働者が賃金不払い残業だと労基署に告発すれば、労基署は、当該事業場に調査に入ります。申告は組合が行っても個人が行ってもかまいません。実際、広島大学では組合が告発を行いましたが、九州大学、信州大学では労働者の訴えで調査に入っています。 調査は、まず職員の始業終業時刻を調べることから始まります。正確に記録されていないことがわかれば、遡って調査するよう求められます。大学は、法人化後の職員の労働時間を再調査しなくてはならなくなります。その後、不払いになっている賃金について是正勧告が行われます。昨年、中部電力では2年近く遡って調査を行い、1万2000人の従業員に対し約65億円の支給をしました。事実が明るみになれば、支給しないということはできないのです。 熊本大学でこのような事態が生じれば、教育・研究・医療への影響ははかりしれません。このまま怠慢を続けていけば不払い賃金の総額はますます増大し、大学の存在する基盤自体が危うくなります。経営者としての学長の決断が求められているのです。 組合はまだ労基署への告発は行っていません。それは、賃金不払い残業の解消は使用者と組合とが共同して取り組む課題だとの認識からです。しかし、このまま使用者側が無為無策を続けていくのならば、いずれは今回のような「事件」を契機に労働者の告発が行われかねません。大学の将来を考えれば、組合としても傷口が広がりすぎないうちに告発して問題を明るみに出したほうが良いとの判断をせざるを得なくなります。大学に残された時間は少ないのです。
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