No.9
2005.8.24
熊本大学教職員組合
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2005年度定期大会で特別決議採択

賃金不払い残業の早期解消を求める特別決議

 法人化後の労使関係における最大の懸案事項の一つは、長時間労働の蔓延とそれに伴う賃金不払い残業の放置である。
 この背景には、職員の労働時間を適正に把握しなければならないという、使用者の当然の義務が全く果たされていないことがある。一見,適正に把握されているところでも、附属病院のように労働時間に位置付けるべき業務について、労使の捉え方に違いがあり、結果的に賃金不払い残業を生んでいる実態もある。
また、業務の効率化が進んでないこと、すなわち、削減可能な業務をそのまま放置している実態も、この事態を悪化させている要因と言える。さらには、職員の中に賃金不払い残業も仕方がないとする意識(厚生労働省の指摘する賃金不払い残業を生む職場風土)があることも問題である。
 この超過勤務問題には、これまで取られてきた人員削減政策が大きく影を落としていることは明白であり、賃金不払い残業の解消に当たっては、業務の効率的削減は無論、根本的には、業務量に合わせた適切な人員配置を行う必要がある。特に、超過勤務時間の業務内容が通常業務で占められている附属病院では、適正な職場環境とは言えない状況にある。
 このように、これらの事項を一つひとつ検討・是正していくこと以外に、この長時間労働の問題の解決はあり得ない。
 そこで、私たち教職員組合は、さる7月25日に大学側との労使協議を行った。
 その中で使用者側は、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する規準」を遵守し、始業終業時刻を正確に記録することを速やかに全職員に周知すると約束した。
 また、8月中には、始業終業時刻の適正把握方法を決定し、迅速に実行に移すこと、並びに、実労働時間データに基づく組合との話し合いも継続して行うことも表明した。
 併せて、学長と組合執行委員長による賃金不払い残業撤廃宣言を出すことも検討されることになったが、そうすることで業務を命じる立場の人に明確なコスト意識を徹底させることができ、業務量の削減にも結びつくはずである。また、それぞれの組織の実情に即した解消案を検討することもできるようになるはずである。
 私たち熊本大学教職員組合は、全教職員の職場風土を改善するべく一層の取り組みを進め、充実した、働きがいのある職場作りの実現に向けて努力することをここに誓うものである。
 右、決議する。
     2005年8月3日            熊本大学教職員組合2005年度定期大会

「国家公務員の給与構造の見直し」に断固抗議し、就業規則の不利益変更を阻止するための特別決議

 6月21日、政府は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」、いわゆる「骨太の方針2005」、を閣議決定した。「小さくて効率的な政府」実現の施策として、資金の流れ、仕事の流れを官から民、国から地方へと変えるとともに、公務員数の純減を含む公務員の総人件費削減を敢行する姿勢を明らかにしている。また、「国家公務員の給与構造の見直し」の具体的措置として7月22日に人事院が労組側に提示した勧告内容には、基本給の5%削減に加え、中高年においては更に最大2%の減額、および調整手当ての廃止に伴い新設される地域手当による地域間格差の拡大を図る方針が明確に示されている。
 これら、人件費削減を強行する政府の方針は、国立大学法人、とりわけ熊本大学を含む地方大学の存続に甚大な影響を及ぼすことは必至である。国家公務員の給与の切り下げは、地方公務員の給与削減、地域における消費の衰退という悪循環をもたらし、ひいては地方における国民の教育を受ける機会を著しく損なうことになる。
 また、「給与構造の見直し」は、地方における教育を衰退させるのみならず、国立大学法人職員の給与にも直接波及する危険性を孕んでいる。なぜならば、政府は骨太の方針における法人職員の人件費を抑制する取り組みとして、運営費交付金を見直す方針を明らかにしており、さらなる財源抑制の実施が見込まれることに加え、現行の国立大学法人の給与基準が実質的に国家公務員の給与に準拠するものであるという事実が存在するからである。
国立大学法人法が準用する独立行政法人通則法は、法人職員の給与支給の基準を「社会一般の情勢に適合したもの」となるよう定めると規定している。現行の給与基準は、法人化移行時の人事院規則に定める俸給表に準じたものであり、人事院規則の改正を以って社会一般の情勢の悪化と見做し、人事院勧告を法人の給与基準に直接反映させる慣行を敷いているのである。また、人事院規則改正による寒冷地手当の廃止に伴い就業規則の不利益変更が相次いで実施された経緯に加え、熊本大学においても、使用者側は「国家公務員の給与水準を十分考慮した適正な給与水準となるよう努める」こととし、「国家公務員の例に準じた措置」として行った退職時特別昇級制度の廃止に際して、組合および教職員に対する十分な事前説明を怠るという前例を残している。仮に使用者側がこの悪しき前例に従い、人事院規則の改正に準じた就業規則の不利益変更を行うとすれば、既に存在する大学間の待遇格差を助長し、大学間の適正な人員の流動を阻害することになり、待遇において中央に劣る地方大学では有能な人材の流出に拍車が掛かることになる。
 法人化以前の定数抑制・削減政策により、大学職員の給与は常に不当に抑制されてきた。現に、2004年度における国立大学法人職員の給与水準は国家公務員の給与額を平均で83.4パーセントと大きく下回っており、とりわけ中高年における格差は顕著である。このような現状において望まれることは、抑制された待遇の改善でこそあれ、決して国家公務員の俸給表の切り下げと平行した待遇改悪であろうはずはない。なお、文科省は、6月17日の国立大学法人学長等会議において熊本大学の質問に答え、「今回の人事院勧告により、地方における俸給水準が引下げられたとしても、各国立大学法人の運営費交付金が減額されるようなことはない」と明言しており、使用者側は今回の給与構造の見直しに準じた就業規則の不利益変更を行う根拠を既に失っている。
 私たち熊本大学教職員組合は、これまでにも『給与構造の「見直し」に関する要求署名』等において、他の単組に抜きん出る活動の成果を挙げているところであるが、今後も政府に対する抗議の声を弱めることなく、他団体との連携の下、「給与構造の見直し」を理由とする運営費交付金削減の阻止に向けた全国的な要請活動を強化していく。また、学内・外情勢の迅速な分析に基づく要求提示と協議における徹底的な追及を活動の核とし、幅広く、かつ、効果的な反対運動を展開することをここに宣言する。
 右、決議する。
     2005年8月3日             熊本大学教職員組合2005年度定期大会

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