No.20
2005.11.17
熊本大学教職員組合
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国大協が配布した大学教員「参考給与表」の問題点
シリーズ「人勧準拠のココが問題」(4)

 熊本大学における事務・技術職員の国家公務員と比較した給与水準(ラスパイレス指数)は83.4です。一方、大学教員については95.1となっています。「熊大職員にも民間並みの賃金を」という要求は大学教員についてはどうなるのでしょうか。国大協が配布した大学教員「参考給与表」に各大学は従うべきなのでしょうか。

大学教員のラスパイレス指数の意味
 現在、国家公務員教育職俸給表(一)適用者(以下、教育職(一)表)は防衛大学校教員などごく一部の省庁附属の教育機関にしか残されていません。ですから、各大学が発表している国家公務員との給与水準の比較指標は、法人化前の2003年度における教(一)職員との比較なのです。ほぼ100になるのは当然のことで、95.1になっている原因は調整手当が支給されていないことにあります。本質的に同じものを比較しているのですから、この数字は2003年度以降の給与水準の変動の意味しかありません。

大学教員「参考給与表」の作られ方
 従来から、人事院は教育職(一)表の賃金水準の変更を、職種別の官民比較に基づいて行うのではなく、行(一)との均衡のもとに行ってきました。今回、行政職俸給表(一)の水準を平均0.3%引き下げたのですから、教育職(一)表も0.3%切り下げになるわけです。
 ただし、人事院の作成した教育職(一)表は国立大学教員のためのものではありません。そこで国大協は法人化直前の教育職(一)表等に今年度の人事院勧告を反映した場合における給与表の作成を、人事院の外郭団体である日本人事行政研究所に依頼し、各大学に賃金改定の参考資料として配布したのです。
 ですから参考給与表は人事院勧告を適用した場合のモデル計算です。大学教員の賃金のあるべき姿などは一切考慮されず、行政職(一)表との均衡で2005年度の0.3%削減、2006年度以降の平均5.5%削減、6級新設等が盛り込まれました。結果として人事院作成の教育職(一)表とまったく同じ内容です。国大協は何のために高い金(?)を払ったのか理解に苦しみます。

大学教員の給与水準は民間(私立大学)との比較により決めるべきである
 人事院は官民比較対象外の職種についても職種別年齢階層別の平均給与月額の調査を行っており、その中には大学教員も含まれます。まずその結果を紹介しましょう。

私立大学教員の年齢階層別平均給与月額(時間外手当・通勤手当を除く)
年齢助手講師助教授教授
20〜24225,151   
24〜28268,815286,121  
28〜32334,006359,493396,827 
32〜36384,752411,538459,487 
36〜40409,747444,405494,752547,044
40〜44441,945478,497520,407581,075
44〜48448,311499,257546,072615,385
48〜52500,447542,888572,527654,996
52〜56491,087549,779604,328683,558
56〜 526,160579,066618,885722,120
全体389,842464,592546,830687,635
平均年齢36.6歳41.3歳46.5歳55.9歳

 皆さんの賃金と比べて如何でしょうか。熊本は調整手当の支給対象外なので5%程度少ないのは納得できるのですが、それ以上の格差を感じる人が多いと思います。組合は大学教員の職を特別視するわけではありません。しかし、学歴の高さ、最初の就職までにかかる年数など、行政職(一)との比較職種である事務職員とはまったく異なる条件下にあるのですから、あるべき給与水準についても事務職員と切り離して検討されるべきです。人事院はそれをしてこなかったわけですが、国立大学や国大協にはそのような検討方法を考える責任があります。

大学教員に地域給を導入するべきではない
 もう一つ問題なのは大学教員について地域給を導入することです。参考給与表は人事院勧告が適用された場合のモデル計算なので、地域給導入も当然に組み込まれています。しかしそれによって東京の大学と地方の大学間に18%の給与格差が生まれることには重大な疑問があります。第一に、教育・研究の評価は全国一律の基準で行われているのに、それを担う教員の賃金に生計費格差以上の差をつけることは許されるかということです。第二に、地方の教授の賃金が都市部の助教授の賃金を下回ることです。同一年齢の教授と助教授の賃金格差は最大7万5千円程度ですが、これは助教授賃金の18%を下回ります。地方大学の教授は東京の大学の助教授より賃金が低くなります。地方の大学は優秀な人材の確保がますます困難になります。第三に、従来から国が主張してきた教員の流動化に逆行することです。若手では職種による賃金格差が小さいので、地方への転出は大幅な賃金減をもたらすからです。
 国大協は大学教員に地域給の考えは適用しないという方針を示すべきです。崎元学長には、熊本大学の将来に関わる問題との立場から国大協への働きかけを強めるよう求めます。

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