No.30
2006.2.2
熊本大学教職員組合
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入試手当の新設・夏季一斉休業の実現を確約!!
労働条件の改善についての団体交渉報告(1)

 1月25日、労働条件の改善についての団体交渉が開催されました。これまでにも既に4回の交渉が開催されてきましたが、組合活動の基本とも言える教職員の労働条件の改善に関わる交渉としては、今年度始めての開催となります。このニュースでは、12月7日に提出した12項目の要求事項のうち、一定の成果が得られた3つの要求についてご報告します。
 ◆ 「入試手当」の新設
 組合は、独法化移行時から一貫して入試業務に関わる手当の新設を要求してきました。要求の詳細については、赤煉瓦No.4(2005年7月29日)をご参照いただくとして、交渉の結果のみをお伝えすると、使用者側もようやく改善の必要性を認識し、「入試手当」を新設する方向で給与規則の改正案を検討中であることを明らかにしました。
 これまでの入試業務手当は、便宜的に時間外手当として支給されてきたため、法的にも実質的にも非常に不安定なものであっただけに、「入試手当」の新設は大きな進歩と言えます。実は、この「入試手当」の新設については、1月12日開催の部局長等連絡調整会議の報告連絡事項としての取り扱いが予定されていたのですが、急遽取り下げとなったという経緯があります。その理由は定かではありませんが、今回の交渉では、本年度の入試には間に合わないため、改正規則の適用は2006年度以降になるとの見通しが示されました。また、手当の対象となる試験の範囲や、対象となる業務、金額等の具体的提案こそありませんでしたが、規則の改正にあたっては組合との交渉に応じる用意があることを明言しました。新たに設置される「入試手当」が業務の特殊性と実態に即して適正に支給されるよう、その運用も含めて検討を進めていきます。
 ◆ 夏季一斉休業の実現
 今回の交渉に当たって、夏季一斉休業の実現を新規に要求しました。これは、基本的に教職員の労働条件の改善を目的とするものですが、使用者側が率先して導入を進めるべき性格を有する事項でもあります。組合は、半期制の導入が計画の段階にあった時点から、夏季の電力消費が大学の財政を圧迫する危険性を指摘し、学年暦の変更に対しては異議を唱えていました。しかしながら、学年暦の変更は強行され、懸念が現実のものとなり、デマンド警報に怯えながら授業や業務を実施するという異常な事態が長年にわたって手付かずのまま放置されてきました。法人化以前は規則の制約により対応が困難であったとも言えますが、労働管理に関する大学の裁量が拡大された法人化後も、より厳しい財政状況の中で適切な対応を行わなかった事実は、使用者側の経営努力における怠慢と見做さざるを得ません。
 使用者側は、組合の要求に応じ、夏季一斉休業を2006年度から実施することを確約しました。また、休業の実施に当たっては、特別休暇を新規に設定することで対応するとの方針が示されました。有給休暇の拡大は、待遇の確実な改善であり、組合活動の大きな成果として位置づけることができるでしょう。なお、医療職に従事する職員については、その業務の特殊性から、一斉休業の対象から除外されることになりますが、その代償として応分の待遇改善が図られるよう、今後も取り組みを継続していきます。
 ◆ 有期雇用職員の待遇改善  有期雇用職員の待遇は、勤務時間を除いて通常の職員と均等であって然るべきだと組合は考えています。しかしながら、社会一般のフルタイムやパートタイムに比較しても著しく低く処遇されている熊本大学の有期雇用職員の現実を考慮すれば、均等待遇の実現以前に、同種の業務に従事する正規職員との処遇の均衡を確保することが先決です。均等・均衡待遇を獲得目標とした取り組みの成果として、これまでにも、医療系技術職員の雇用中断日の撤廃や、パート職員への夏期休暇の付与等を実現させてきましたが、今回の交渉でも一層の成果を上げることができました。
 使用者側の改正提案では、(1)フルタイムの医療系技術職員について、給与の月給化や諸手当・有給休暇の拡大、共済加入等、常勤とほぼ同等の待遇とすること、(2)医療技術職員以外のフルタイム職員についても雇用中断日を撤廃することが約束されています。とりわけ前者に関しては、格段の前進であると評価できるでしょう。ただし、この点について使用者側は、医療技術職員が国家資格を有していることを均衡待遇の前提条件として挙げています。しかしながら、国家資格の有無を以って医療技術職員以外のフルタイム職員を差別的に取り扱うことは不当であると言わざるをえません。有期雇用職員の待遇は、同種または同等の業務に従事する正規職員の待遇との均衡に十分配慮して決定されるべきだからです。正規職員との間に著しい業務内容の違いが存在しない以上、均等・均衡待遇の実現は使用者の義務であり、組合は、今回の交渉の成果を大きな足がかりとし、全ての有期雇用職員の待遇改善に向けた要求を今後も継続していきます。
 ここで紹介した事項以外にも、高齢者雇用安定法の改正に基づいて使用者側が導入を検討している継続雇用制度の運用について組合との交渉事項として対応する確約を得た他、一定の成果を得た要求項目もありますが、その反面、多くの要求が、予算財政上の理由や、使用者の言う「いろいろと問題がある」という説明にならない理由で、一考だにされず否定されたことも事実です。むしろ、それらの事項に関する種々の発言によって露呈した使用者側の無責任さと不誠実さが、いくつもの貴重な改善事項の存在を掻き消してしまったというのが、交渉全体を通した印象でもあります。
 学年暦の弾力化や、外国人教員の処遇、医療技術者の待遇改善要求に関して、労務担当理事等が取った使用者としての見識と資質を疑わざるを得ない対応については、次号以降で報告します。

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