No.46
2006.3.31
熊本大学教職員組合
Tel.:096-342-3529 FAX:096-346-1247
E-mail:ku-kyoso@union.kumamoto-u.ac.jp
PDF版はこちら


賃金大幅引き下げに根拠無し
組合の論点紹介(5) 昇給・勤勉手当のインセンティブ付与は待遇改善といえるか
賃金カットで浮いた経費はインセンティブの付与に使うという議論にごまかされてはならない

 使用者側は賃金カットで浮く経費を1億6千万円と答えてきました。その使用方法について団交で回答を求めたところ、若年の係員層の給与改定の経費4700万円、ボーナス引き上げ分2200万円、臨時職員の待遇改善分4800万円など、総計で1億2900万円が新たに発生するので差し引き3100万円しか使えないとの説明がありました。人件費全体の説明ではないので正確な理解は困難であり、ここ数年の人件費の正確なデータと、就業規則改定後の人件費の正確な見積もりを示すよう求めていきます。
 さて、賃金切り下げで浮く経費について使用者側は従来「昇給・勤勉手当によって優秀な教職員にインセンティブをつける」と答えてきました。しかしこれも公務員制度の焼き直しという考えですから、まず人事院勧告の内容を紹介します。

公務員制度での昇給と期末勤勉手当
 従来の昇給は普通昇給と特別昇給(定数の15%)でした。号俸を4分割した上、成績によってAランク(8号俸昇給)Bランク(6号俸昇給)Cランク(4号俸昇給)Dランク(2号俸昇給)Eランク(昇給なし)の5種類に分けるというのが勧告の内容です。Aランクが従来の特昇に相当しますが、これについては中間層(現行の級で4〜8級)で5%以内という枠がつけられています。Bランクが20%以内ですが、昇給幅が通常より半分良いだけなので、特別昇給枠を振り分けたに過ぎません。かかる経費は現行の制度と変わらないのです。なお、管理職層(行政職(一)では7級(現行の9級)以上、教育職では教授が対象)はA10%B30%と優遇されています。
 勤勉手当は2005年度の給与改定で引き上げられ、特定幹部職員以外の職員の成績率について、標準が100分の71に、最高が100分の145に引き上げられました。しかし、これによってインセンティブをつけようとしても、総額が(勤勉手当基礎額+扶養手当月額+調整手当月額他)の総額の100分の75以内(現行の給与法での数値)と定められています。
 昇給と勤勉手当をインセンティブの付与に使おうとしても、定められた枠の中での取り合いに過ぎないのです。これでは労働条件の改善とは言えません。

使用者側にはまともに待遇改善に取り組む姿勢は無い
 熊大職員のラスパイレス指数の低さは上位級の少なさが原因です。理事は以前の団交で昇格改善の必要性を認めています。しかし一方で「級別定数があるので勝手に上位級を増やすことはできない。退職金は認められた範囲でしか措置されないので大学の負担になる。」と回答しています。抜本的な改善を行う意思は無いのです。昇給についても、同様な理由で昇給枠を守る姿勢です。
 勤勉手当についてはどうでしょうか。これは退職金には跳ね返りません。その年度での財政状況を見ながら、インセンティブ付与に利用することはできるはずです。しかし、就業規則で自ら総枠を定めており、定められた枠の範囲内の工夫に過ぎません。賃金大幅カットで浮いた経費をどう使用するかということにはなっていません。

インセンティブ付与は賃金では行わないのですか?
 3月15日の団交で学長は「従来、浮いた経費はインセンティブに使うと言ってきたが、使える経費が予想外に少ないので困難である」という趣旨の発言をしました。東京との賃金格差は優秀な教員確保の障害にならないかとの質問にも「教育研究環境の整備の中で優秀な教員を確保したい」と答えるにとどまり、具体的な対策を示しませんでした。改善はまったくなしで、ただ賃金のみカットするという方針がますます明らかになりました。
 組合は、今回の賃金削減を強行するのであれば、それに加えて特別都市手当の廃止、役員報酬のカット、管理職手当の見直しなどの経営努力を求めます。そしてそれらにより浮いた経費を昇級枠・昇給枠の拡大、勤勉手当の増額、などの目に見える形で職員の労働条件の改善に使うことを要求します。公務員制度の焼き写しではなく、熊本大学の実態に合った賃金制度を早く構想すべきです。

赤煉瓦目次へ