No.2
2006.6.7
熊本大学教職員組合
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学長の回答はあまりに貧弱!!
−合理性無き賃金切り下げに異議通知書の提出をー

 4月1日付けの就業規則改正に基づく賃金切り下げが強行されてから2ヶ月が経過しました。この間、組合の呼びかけに応えて351人の職員が学長に対し異議申し立てを行いました。5月25日、異議申し立てを行った職員の自宅に学長名での回答文が届けられました。このニュースでは、異議申し立ての趣旨をもう一度確認するとともに、学長回答文の問題点を明らかにします。
学長は就業規則改正の合理性を示す必要がある
 まず、異議申し立ては就業規則の改正ではなく、改正された就業規則に基づいて賃金切り下げ(労働条件の不利益変更)を強行したことに対し行ったものです。最高裁判例によれば、就業規則の改正によって労働条件を不利益に変更することは原則として許されないとされています。一方、就業規則の変更に合理性がある場合には、個々の労働者において、これに同意しないことを理由にしてその適用を拒むことはできないとしています。今回の不利益変更は、明らかに「合理性」を欠いており、就業規則改正に基づく賃金切り下げは違法行為です。異議申し立て書は、この判例に基づいて個々の職員が労働条件の変更不同意の意思を明らかにするとともに、従前の労働契約内容に従って賃金を支給することを求めたものです。
 ですから考えられる大学の対応は「職員の要求を認め、従前の就業規則に基づいて賃金を支給する」か「就業規則改正の合理性を述べ、職員の要求を退ける」かのいずれかです。要求を拒否するのであれば、改正の理由ではなく、改正の内容に「合理性」があることを示さなくてはなりません。この点からみると今回の回答文はあまりにお粗末なものと言わざるを得ません。以下、項目ごとに批判を行います。

最高裁判例での合理性の判断要件

@ 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
A 使用者側の変更の必要性の内容・程度(賃金等の重要な労働条件については高度の必要性が求められる)
B 変更後の就業規則の内容自体の相当性
C 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
D 労働組合等との交渉の経緯
E 他の労働組合又は他の従業員の対応
F 同種事項に関する我が国社会における一般的状況

学長回答文の各項目を合理性判断要件から検証する
  1. 人事院勧告が職員の給与を考える上での有力な参考資料になることは否定しません。しかし、人勧どおりに給与を決めなくてはならないという法的義務はありません。実際、キャンパスごとの地域手当額をそろえる大学など人勧と異なる扱いをしている大学は少なからずあります。
  2. 経営状況について言えば、2006年度の運営費交付金は増加しています。特殊な増加要因を除いても、減額はそれほど大きい額ではなく、少なくとも平均4.8%という大幅な賃金削減を行わなくてはならない経営状況とは言えません。実際、地域手当の関係で減額が殆ど無い大学もありますが、経営状況が苦しく賃金を大幅に引き下げるという話にはなっていません。将来見通しについても触れられていますが、具体的な根拠のある数字が示されたことはありません。確かに2007年度の運営費交付金が給与構造の見直しを踏まえたものとして算定された場合には、賃金引下げの高度の必要際があると判断されるかもしれませんが、それは来年度に向けた話です。
  3. 法人化の際、「一定期間は現行の国家公務員給与制度を準用する」としたのは、あくまで2003年度における国家公務員の給与制度です。国家公務員の給与制度が大幅に変わった以上、それに従うか否か検討の必要が生じるのは当然です。
    以上、3項目のどれをとっても合理性判断要件A「高度の必要性」の根拠にはなりません。
  4. 現給保障ですが、当分の間とされているように将来にわたるものではありません。また退職金の算定には現給保障分は含まれません。この措置を取ったとしても労働条件の不利益変更であることは疑問の余地がありません。なお、合理性判断要件Cに「代償措置」がありますが、これは所定労働時間を短縮する、退職年齢を引き上げるなどで、総合的な労働条件が改善されるような措置を言います。「現給保障」は激変緩和措置であり賃金切り下げの「代償措置」ではありません。
  5. 組合と3回交渉を持ったことは事実です。しかし、その場で歩み寄りの姿勢を見せることは一切無く、特別都市手当の改善を行うなという人件費削減につながるような要求すら無視しました。合理性判断要件Dは交渉を行いましたというだけで済まされるものではありません。
  6. 確かに他の国立大学法人や熊本県も賃金切り下げを行いました。しかし、詳細を見ると対応は様々です。例えば熊本県では経過期間中の昇給抑制を行わないこと、今後の職員の昇格改善に努力することが約束されています。高専でも7級ポストの増が約束されました。勤勉手当を増額すると回答した大学もあります。合理性判断要件Fについても全大学がまったく同じように対応しているわけではありません。
以上見てきたように学長の示す理由は合理性判断要件に照らしてあまりに貧弱な内容です。一方、労働者の被る不利益の程度は生涯賃金で1666万円(30歳教員の場合)を上回る大幅なものです。今回の就業規則改正によって賃金切り下げを強行したことが違法行為であることは明白です。

組合はまだ賃金交渉を継続する用意がある
 実は、労働条件切り下げにおいて組合との合意は合理性判断の重要な要素になります。組合は大学評価システムや運営費交付金システムの問題から、賃金について大学に完全な裁量権があるとは考えていません。閣議決定によって人件費削減を迫られている事実もあります。給与構造見直しによる俸給表改定に準じて、基本給表改定を行わなければならない事情も理解します。しかし、その不利益に対して様々な代償措置が検討される必要があります。例えば所定労働時間の削減(法人化を契機に実質的に30分延長された経緯があります)、勤勉手当の増額(経営状態が不透明なときに、基本給ではなくボーナスによって待遇改善を図ることは企業で広く行われています)、入試手当の増額(今回導入された手当額は私立大学よりはるかに低く、昨年度までと比べても実質減額の場合もあります)、昇格改善(大学の賃金水準の低さは他省庁より昇格状況が劣悪なことによります)、教育研究調整額の新設(国大協も同様の手当を要求していた経緯があります)などがあります。これらの代償措置は今からでも導入が可能です。使用者側は現状の違法状態を解消するためにも、これらの方策について実現の可能性を探るとともに、再度組合との賃金交渉に応じるべきです。

組合は粘り強く賃金交渉を継続し、
代償措置を求めます。

そのためにも
異議通知書を学長に届ける取り組みを継続します。

様式は執行委員が持っています。
記入後、組合にお持ち下さい。


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