No.7
2006.7.13
熊本大学教職員組合
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相変わらずの安易かつ杜撰な任期制導入!?
――五高記念館に5年任期の助教授   
   蔑ろにされた教育研究評議会・教授会――
 さる6月22日(木)開催の「学内共同教育研究施設等の人事等に関する委員会(五高記念館)」において,本学にまた一つ教員任期制を導入することが「決定」されたそうです。今回,新たに教員任期制が導入されるというのは,「熊本大学ユニバーシティ・ミュージアム構想」に基づいて五高記念館に配置される学長預かりの助教授ポストです。
 公募要領等の資料をもとに,この任期制の条件等を整理すれば次の通りです。
ポ ス ト: 五高記念館の助教授。
任  期: 5年。再任可(ただし,65歳定年退職制度あり)
「大学の教員等の任期に関する法律」に基づくもの。
研究分野: 特に専門分野は問わない(五高記念館に関わる高等教育史や文学に関する分野はもちろん,熊本大学ユニバーシティ・ミュージアム構想に基づいて自然科学系,医薬系,芸術系など特に専門分野にこだわらない幅広い分野からの人材,またこれらにまたがる学際的分野からの人材を求める)
採  用: 2006年12月1日以降。
 今回導入されるというのは「大学の教員等の任期に関する法律」(以下,「大学教員任期制法」と略す)に基づく任期制ですが,その導入手続きは極めて杜撰であり,学内の意志決定を蔑ろにし,「大学教員任期制法」に著しく違反したものと言わざるを得ません。また,本学の充実・発展のうえでも疑問視せざるを得ない導入です。ここでは,その問題点を具体的にお伝えします。

部局構成員に報告しない「人事委員会」

 第一の問題点は,「学内共同教育研究施設等の人事等に関する委員会
(五高記念館)(以下,「人事委員会」と略す)の「決定」なるものが各部局の構成員にほとんど報告されていないことです。五高記念館配置の助教授に任期制が導入されることを,このニュースで始めて知った方も多いことでしょう。それもそのはずです。6月22日の「決定」なるものがほとんどの部局で報告されていないからです。一応,報告があったある部局でさえも,Eメールによる最初の報告では五高記念館の助教授が任期制であることはまったく示されておらず,構成員からの問い合わせを受けてはじめて「大学教員任期制法」に基づく任期制であることが明かされるという有様でした。任期制導入という重大事項に照らせば,部局構成員への周知・説明を欠いていることは,けっして許されるものではありません。
「学内共同教育研究施設等の人事等に関する委員会(五高記念館)」の構成
学長,副学長(教育・学生担当),副学長(研究担当),副学長(評価担当),文学部長,教育学部長,法学部長,理学部長,工学部長,社会文化科学研究科長,自然科学研究科長,医学薬学研究部長,医学研究部長,薬学教育部長,法曹養成研究科長,附属病院長,附属図書館長,医療技術短期大学部長,五高記念館長
蔑ろにされた教育研究評議会――正式決定前の教員公募―― 
 第二の問題点は,教育研究評議会の審議を蔑ろにしていることです。五高記念館に助教授ポストが配置されること,ならびにそのポストを任期付きにすることは,「五高記念館の運営等に関する規則」,「国立大学法人熊本大学法人教員の任期に関する規則」の改正によって正式に決定されます。周知の通り,規則の改正は教育研究評議会の審議を経て行なわれます。上記二つの規則は,まだ教育研究評議会では審議されておらず,恐らく7月20日開催予定の教育研究評議会において審議されるのではないかと思われます。ところが,驚くことに,五高記念館の任期付き助教授については,6月22日の「人事委員会」の翌23日に公募要領が発送され教員公募が行なわれています
(その後,公募要領は本学のHPでも公表されました。公募の締切は8月18日必着となっています)。つまり,正式決定の前に勝手に「決定」と見なして教員公募が行なわれているのです。これは常軌を逸した事態と言わざるを得ません。
 
任期制の適否の審議なし!!
 第三の問題点は,五高記念館の助教授ポストの職務内容・専門が任期制に適合するかどうかがまったく審議されていないことです。これは最も重大な問題点です。我われが繰り返し確認してきたように,任期制は大学教員の教育研究の自由を脅かす恐れ=憲法違反の危険性を本来的に具えているため,任期制を導入する大学は導入するポストの職務内容が「大学教員任期制法」第4条が規定する三つの場合――@「先端的,学際的又は総合的な教育研究」など「多様な人材が特に求められる」職,A研究専念型の助手の職,Bプロジェクト研究の職――に適合するかどうかを検討し,任期制導入の合理的必要性を明らかにしなければなりません。大学は,任期制が本来的に抱える憲法違反の危険性を回避するための重大な責任を負わされているのです。
 ところが,信じ難いことに,「人事委員会」では五高記念館の助教授ポストが任期制に適合するかどうかという問題が一切審議されていません。それどころか,「大学教員任期制法」のどの条項に基づいて任期制とするのか,つまりは上に確認した三つの場合のいずれの場合と判断して任期制とするのかさえも,審議していないと言います
(ある部局構成員の問い合わせに対する「人事委員会」メンバーからの回答)
 「人事委員会」は,「大学教員任期制法」に基づく任期制導入の最も基本的かつ重要な作業を欠いたまま任期制の導入を「決定」するという失態を犯したのです。「人事委員会」のメンバーは,大学人の責務を一体どのように考えているのでしょうか?

職務内容・人材確保の点から任期制は適さない!!
 「人事委員会」が審議しなかったとはいえ,「大学教員任期制法」に基づいて五高記念館配置の助教授を任期付きとするには,助教授という職階,またプロジェクト研究の職ではないことからして,「大学教員任期制法」第4条第1項を適用するほかないはずです。問題は,五高記念館の助教授の職務内容が「大学教員任期制法」第4条第1項が規定する「多様な人材が特に求められる」職に適合するかどうかです。
 公募要領の「担当業務等」の項目には,五高記念館の助教授の職務内容が次のように記されています。
(1) 熊本大学五高記念館を中心として本学の歴史的遺産である建物,所蔵資料等を地域資産として一般公開するための整備と研究
(2) 本学が有する文化的・歴史的遺産に関する研究活動及び地域貢献への企画及び展示
(3) 大学院レベルの質の高い学芸員教育課程の整備・充実及び人材養成
@ 学芸員教育課程の教育・実習及び企画・運営
A 五高記念館を活用した企画展示実習等の担当及び,より高度で実践的な博物館の企画・運営の知識を備えた大学院レベルの学芸員の育成
 これによれば,五高記念館の助教授は大別して(1)五高記念館を中心とする本学の歴史的遺産の整備・研究と公開作業,(2)学芸員教育課程の教育と企画・運営を主要な職務としています。注目すべきは,学芸員教育課程の教育と企画・運営を主要職務としている点です。いうまでもなく,学芸員教育課程は学部の枠を越えて本学が行なっている主要な専門的職業人教育です(現在では,医学部・薬学部を除くすべての学部に受講生がいます)。その教育を主要職務の一つとするのですから,「多様な人材が特に求められる」職として任期付き教員が一定の年月で入れ替わるという事態は,学芸員教育課程の運営にふさわしいはずがありません。しかも,教育だけでなく学芸員教育課程の企画・運営も職務とされていますから,学芸員教育課程のコーディネイト役も担うことが予想されますが,複数の部局に所属する教員を組織する必要がある学芸員教育課程のコーディネイト役を任期付きの立場の教員が担うというのは極めて困難なはずです。
さらに,五高記念館の助教授ポストが求める人材について,公募要領の「応募資格等」の項は次のように記しています。
(1) 学芸員の資格を有し,博物館での勤務経験を有すること。
(2) 博物館の企画・運営に高度な専門知識と経験及び国際的観点を有すること。
(3) 修士の学位又はこれと同等以上の研究業績若しくは博物館の企画・運営に関して高度な業績を有すること。
(4) 学芸員教育課程の教育・実習及び企画・運営ができること。
(5) 担当業務等について,創造性,積極性及び熱意をもって遂行できる者。
 博物館での実務経験者,しかも「博物館の企画・運営に関して高度な業績を有すること」とありますから常勤の経験者のはずです(少なくとも常勤でなければ,博物館の企画・運営の高度な業績などもてないはずです)が,そうした方を求めるというのです。しかし,上述したようなハードな職務にくわえて,身分保障すらない任期制という劣悪な労働条件で,そうした人材は得られるのでしょうか?  非常に疑問です。

専門家集団の見解を黙殺した「人事委員会」
 以上のように,職務内容,求める人材の確保という点から見て,五高記念館配置の助教授ポストは任期制に適するものとは言えません。こうした点を専門家集団は十分に認識していたのでしょう。学芸員課程担当教員が「熊本大学ユニバーシティ・ミュージアム構想」に対して要望した文書は,五高記念館に配置されるポストを常勤の助教授としていました
(この文書は,『熊本大学ユニバーシティ・ミュージアム構想 第1期五カ年計画』にも資料として収録されています)。この点は,「人事委員会」のメンバーの一人も,ある部局の構成員から問い合わせを受けて「学芸員課程を担ってきた教員を中心に……,この教員(五高記念館の助教授)の職務は短期的な成果を求めるものではなく,安定した身分で落ち着いて業務に取り組んでもらう必要があること,優れた人材を確保するという観点からも,任期制にすべきではないということを強く提言していただきました[括弧内は引用者]」と説明しています。「大学教員任期制法」に基づく任期制の導入にあたっては,専門家集団の検討が尊重されるのが本来的あり方です(それによって,憲法違反の危険性が回避されます)。それに反して,今回,「人事委員会」は,任期制の適否を一切審議しないまま,専門家集団の見解を黙殺して任期制導入を「決定」するという過ちを犯したのです。

学長預かりポストであることは任期制の根拠にならない
 では,なぜ「人事委員会」は,任期制の適否を審議しないまま任期制導入を「決定」したのでしょうか? 唯一,推測できる理由は,五高記念館に配置される助教授ポストが学長預かりポストであることです。しかし,いうまでもなく,学長預かりポストであることは「大学教員任期制法」に基づく任期制導入の根拠にはなりません。いかなる性格のポストであっても,そのポストの職務内容・専門性が任期制に適合しないならば,任期制を導入することはできません。これぐらいのことは,熊大使用者も理解しているはずです。学長預かりポストすべてが任期制で運用されているわけではなく,任期を付さずに運用しているケースが幾つもあるからです
(任期を付けていないケースの方が多いはずです)。一例を挙げましょう。学長預かりポストを配置した総合情報基盤センターの計算機援用教育研究部門(インストラクショナル・デザイン分野)の3ポストは,2005年4月1日の配置当初は任期付きでしたが,2006年4月1日の社会文化科学研究科教授システム学専攻への配置換えにともなって任期が外されました。任期が外された理由は,任期制には適さない大学院の教育業務を担うようになったからです。熊大使用者は,たとえ学長預かりポストであっても,職務内容が任期制に適さない場合は任期を外すという運用をすでに行なっているのですから,今回の五高記念館の助教授ポストについても,職務内容・専門性に応じた運用ができないはずはありません。
 総合情報基盤センターから社会文化科学研究科への配置換えにともなって任期制を廃止した例のように,近年の本学の任期制をめぐる動きは,任期制は研究センターのような研究業務を中心とするポストの場合について導入し,教育業務を担う場合には任期制としない方向に動いているように見えます。これは,一定の見識を発揮したものと言えます。残念ながら,学芸員教育課程の教育と企画・運営を主要職務の一つとする五高記念館の助教授ポストを任期制にするという今回の「決定」は,この動きにも逆行するものです。

もはや過ちでは済まされない。即刻,「人事委員会」は審議し直すべき!!
 以上述べてきたように,「人事委員会」が「決定」したとされる五高記念館の助教授ポストへの任期制導入は,学内の意志決定手続き,「大学教員任期制法」に基づく任期制の導入手続き,本学の充実・発展のための人材確保,これらいずれの点から見ても重大な過ちを犯しています。
 第二・第三の問題点として指摘した教育研究評議会の審議を蔑ろにする過ち,任期制の適否の審議を欠いた過ちは,けっして過ちでは済まされません。熊本大学の管理者は過去にも同じ過ちを犯しているからです。2001年4月の発生医学研究センターでの任期制導入の際に,任期制の適否の審議を行なわずに任期制導入を決定し,規則制定前に教員公募を行なうという今回と同じ過ちを犯し,本学の管理者も組合との交渉の場においてその非を認めました
(2000年12月20日「発生医学研究センター教員任期制の懇談・交渉」)。教育研究評議会の審議を蔑ろにするという点では,外国人教師の後任ポストに労働基準法第14条に基づく任期制を導入するに際して,評議会で説明したと虚言を吐いて評議会に責任を転嫁する悪質な行為を働き,最終的には学長が評議会に陳謝するという事態がありました(この問題は現在も継続中ですが…)。同じ過ちを繰り返し犯しているのですから,事態は深刻です。
 五高記念館に教員ポストを配置する方向に動いたことは,地域貢献や学芸員養成の面など本学の充実・発展のための貴重な機会です。このせっかくの機会を無駄にしないためにも,「人事委員会」は,即刻「決定」を撤回して人事の審議をやり直すべきです。
 我われ熊本大学教職員組合は,本学の良識の恢復と,本学の充実・発展のために,「人事委員会」が直ちに「決定」を撤回して審議をやり直すことを強く要望します。

 なお,我われ熊本大学教職員組合は,五高記念館の任期制導入問題に関して,6月28日の時点で団体交渉の開催を学長に申し入れています。

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