2006.8.4 |
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私たちをめぐる情勢 大学「改革」の進展2004年4月の国立大学法人化いらい、政府が推進する大学「改革」が、行財政改革の一環に組み込まれた大学「破壊」の性格を強く帯びていることは、ますます明白になってきました。こんにちの「改革」への動きは、1998年10月の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」で具体化された大学の序列化構想、それを実現する手法としての学長への権限集中、外部評価制度の導入といった提言に画期があります。大学審がこのような答申を出した背景には、グローバル時代のもとで国際的競争を強いられた財界による、大学への効率的な先端的科学技術開発とエリート養成の要求が存在したのは周知のことです。さらに、行財政のスリム化のための独立行政法人化が大学序列化=差別化の梃子となり、5年ごとの中期目標・計画とその実現度への外部評価が運営費交付金の金額を決定し、したがって大学の生き残りを左右する統制の仕組みが作られました。大学は「自主的な」目標・計画の策定と実現を強いられますが、それは政府と財界が望む大学序列化の枠にみずからを押し込めてゆくことに他なりません。その意味で、「改革」は大学の自主的な発展に寄与するものでは到底なく、大学は政府・財界の求めに沿うかたちでの不断の「改革」を継続することによって生き残りをはからざるをえない。そのような仕組みが作られました。 このように、こんにちの大学「改革」は、政府・財界が教育研究内容に介入してコントロールし、同時に大学組織を行財政改革=スリム化の標的として狙い撃ちするという、二重の強制力となって表れています。その「破壊」的とも表現しうる性格は、本学においては以下のような情勢に見ることができます。 基礎条件の縮小 運営費交付金と引き換えに短期的成果を求める成果主義の押し付けは、大学内の研究教育経費配分に深刻な影響を与えています。ことに、日常的な研究活動の長期積み上げが必要な基礎科学分野への予算配分額は縮小され、もはや限界を超えている分野も少なくありません。加えて、これら分野への競争的資金獲得の強制(科学研究費補助金未申請者へのペナルティー制度等)は、研究教育の条件を著しく阻害しています。しかも、基礎部分を圧縮して競争的配分に資金を注入するやり方は、先端的・短期的成果を追求する研究分野をも包摂するかたちで、施設・設備の維持管理やインフラ整備の条件を圧迫しています。不足する施設スペースや基礎予算への不満が教職員だけでなく学生の間にも蔓延している状況は放置されたまま、短期的成果を要求する枠に予算がどんどん注ぎ込まれています。 こうした状況が基礎科学分野の研究継続を困難ならしめ、教育環境の総体的な荒廃を招くことは明らかです。 違法な賃金切り下げ 圧迫は教育研究経費ばかりではありません。本学当局は2006年4月1日付けで就業規則を改め、人事院勧告に準拠した平均4.8%という賃金の切り下げを強行しました。そのマイナス額は生涯賃金でじつに最大1,600万円を超えます。就業規則の改正によって労働条件を労働者の不利益に変更することが原則として許されないのは最高裁判決に明らかです。人事院勧告どおりに給与を決めなくてはならないという法的義務は法人化後には勿論なくなりましたし、このように大幅な賃金削減を行わねばならないほどの経営状況の悪化が熊本大学に見られるわけでもありません。そもそも国立大学法人教職員の給与水準は民間のそれと比較して低いのです。賃金切り下げについて組合と使用者側は3月までに3回の交渉を持ちましたが、代償措置を提案する組合に当局は一切の歩み寄りを見せず、交渉は決裂しました。このように合理性を欠いた就業規則改正・賃金切り下げによって、何らの地域手当も付与されない熊本大学教職員の給与は、全国立大学法人のうちで最低となりました。しかしキャリア職員は相変わらず優遇されています。 こうした事態に対して、賃下げ実施後2か月の間に350名をこえる教職員が学長に対して異議通知書をもって労働条件の不利益変更に同意していない旨の申し立てを行いましたが、これへの学長の対応は、賃下げの合理性の欠如すなわち違法性を露呈させた文書を郵送したに止まりました。 本年度においてことに憂慮されるのは、2006年度の人事院勧告が更なるマイナス勧告となる可能性が高く、そうなれば本学使用者はまたもそれに追従・準拠しようとする可能性が極めて高いということです。このままでは、赤字にまみれた政府が消費税増税を楯に「徹底した歳出抑制」を推進しようとする限り、私たちの労働条件は低下の一途をたどらざるをえないことになるでしょう。 このように、主体性を欠如している使用者の違法な賃金切り下げによって、教職員の労働意欲の減退や優秀な人材確保の困難化といった、大学の命取りとなりかねない状況が、急速に深刻化しているのです。 不払い労働の増大 賃金切り下げを強行した使用者側は、交渉において組合が提案した労働時間の短縮といった代償措置にも全く耳を貸しませんでした。それどころか、業務の増大と煩雑化もまた急速に深刻化しています。事務一元化のもとで、相次ぐ組織改革、増大する学生サービスや医療業務、入試業務等への対応を休むことなく迫られている職員は、連日にわたる長時間残業や休日労働をせねば業務をこなしきることができない状況に置かれ続けています。しかも、時間外労働の対価の多くの部分は支払われていません。昨年度にはこうした不払い残業の常態化を告発する相談が組合にも寄せられました。また現実に、幾つもの大学で労働基準監督署への告発が行われています。 本学の各職場にはタイム・カードさえ設置されていません。不払い労働を生み出し続けている要因は、労働管理システムが無きに等しい現状と、時間外労働を黙認あるいは実質的に強制する職場風土とにあるのです。 雇用不安の拡大 業務の増大と煩雑化は、臨時雇用職員の労働実態にも大きなしわ寄せをもたらしています。法人化前に極限まで推し進められた定員削減に対処し、業務を適切に遂行する必要上、臨時雇用職員の業務内容は質的にも量的にも常勤職員のそれと区別できないレベルに達しています。しかし本学の現状では、業務内容の差が実質的になくなっているのに、雇用形態による待遇の著しい格差は放置されたままです。それは労基法上の使用者責任が果たされていないことを意味します。 そればかりではありません。各部局への予算基礎部分の配当を縮減してゆく使用者側のやり方は、学科予算や部局・附属病院の管理運営費を急速に圧迫するとともに人件費抑制を強制し、それは臨時職員の雇用時間削減や配置数の縮小、すなわち雇用不安として表れています。常勤職員と同様の職務を臨時雇用職員に要求してそれに運営を支えられていながら、著しい待遇格差を放置することは、単に労基法上問題なだけでなく、学問・科学と医療の府たる大学にとって許されない行為です。 また、2006年7月実施の事務組織再編、2007年4月実施予定の教員組織再編においても、業務の特定個人への偏りや任期制導入による教職員の雇用条件の不安定化等が顕現することが懸念されます。 組合活動の位置 基礎条件の縮小と競争の強制、そして度重なる組織改変は職務の飛躍的増大・煩雑化を生み、したがって大学「改革」は、大学を組織としての発展・充実に導く方向にではなく、教職員個々人にノルマの消化を一義的に強制して分断し、組織への帰属意識を希薄化させる方向にのみ作用しているように見えます。労働条件の一方的切り下げや雇用不安の増大も、こうした動向に拍車をかけています。大学「改革」に大学「破壊」としての性格を指摘せざるをえない最大の所以です。組合員数は近年、漸減傾向にありますが、それもこうした組織帰属意識や連帯意識の希薄化と無関係ではないように思われます。 それにしても憂慮されるのは、ことに法人化後、本来は組織運営の豊かな資質を持っているはずの教職員がその面の意欲を急速に減退させ、教授会や各種委員会が機能不全に陥り、それと表裏の関係で、民主的な手続きを欠いた意思決定ないし方針強制が本学の組織のいたるところでまかり通るようになってきたことです。 各職場・職種間の連帯を基礎にして、大学当局や組織管理者との交渉を通じて使用者の行為や組織運営をチェックして正常な状態に近づけてゆくことは、組合にしか出来ない仕事です。 組合はみずからの組織の拡大と財政の見直しを進めつつ、さらにナショナル・センターとの関係や他大学の組合との連携をも模索・強化しながら、全教職員の資質と知恵が最大限に発揮されて組織される、活力ある職場の実現をめざし、取り組みを強めてゆきます。 組合活動の基本方針 2004年4月1日の法人化以降、国立大学の教職員は非公務員化され、私たちの勤務条件は基本的に各大学の労使の話し合いを通じて決定されるようになりました。各大学の労使の創意工夫によって、労働環境の改善・充実が図られる余地が広がったともいえます。しかし、熊本大学の現状は、こうした可能性を十分活かしているとは言えません。とりわけ、「就業規則の改訂に基づく賃金の一方的切り下げ」などに見られる使用者側の態度は、労働組織を単に「義務の体系」としてしか捉えていないかのようです。組織、特に教育研究組織たる大学は、労働の「義務の体系」であると同時に「働く意欲の体系」であることが極めて重要です。このことは、大学をとりまく外的条件が厳しければ厳しいほど配慮しなければならない観点です。 私たちは、熊本大学の持続的発展を願って、働く意欲を生み出す労働条件、職場環境の整備・改善に向け、昨年度の取り組みを継承・発展させながら幅広い活動を展開していきたいと考えます。 1. 明るく働きやすい職場を作るために
2. 大学の自治を守り、真の大学改革を民主的に実現して行くために
4. 一人ひとりの願いや要求をかなえる組合活動のために
<<専門部会>> 1. 賃金部会
2. 教育文化部会
3. 組織財政部会
4. レクリェーション部会
5. 青年部会
6. 女性部会
<<職種別部会>> 1. 事務職員部会
2. 技術職員部会
3. 現業職員部会
4. 有期雇用職員部会
5. 看護師部会
6. 教員部会
7. 医療技術職員部会
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