人事院勧告に準拠した賃金切り下げに反対する特別決議
本学使用者は2006年4月1日付けで就業規則を改め、人事院勧告に準拠し平均4.8%という賃金の切り下げを強行した。40歳台以下の場合、そのマイナス額は生涯賃金にすると1,000万円をはるかに超える。
最高裁判決に明らかなように、合理的な理由がないまま就業規則を改定して労働者の労働条件を不利益に変更することは許されない。人事院勧告どおりに給与を決めなくてはならないという法的義務は法人化後には勿論ない。このように大幅な賃金削減を行わねばならないほどの経営状況の悪化が熊本大学に見られるわけでもない。そもそも、法人化以前の定数抑制・削減政策により、大学職員の給与は常に不当に抑制されてきた。2004年度における国立大学法人職員の給与水準は国家公務員の給与額を平均で83.4パーセントと大きく下回っていた。にもかかわらず、合理性なき、すなわち違法な賃金切り下げが行われたのは何故か。
今回の賃金大幅切り下げを強行するにあたり、使用者側の論拠は独立行政法人通則法63条の「社会一般の情勢」への適合の必要性という一点に統一され、かつ、全ての国立大学法人の使用者が人事院勧告こそが「社会一般の情勢」であるとの誤った法解釈を教職員に強要した。こうして、全ての国立大学法人が一律に人勧に準拠した給与制度の変更を実施した。この大きな一因は、各大学の人事労務担当者を対象に、文部科学省が人勧準拠を徹底するよう指導を行ったことである。政府は独立行政法人法の附帯決議を完全に無視し、大学使用者集団に違法な賃下げを強要したのである。
賃金切り下げについて、熊本大学教職員組合と使用者は2006年3月までに6回の交渉を持ったが、代償措置を提案する組合に対して使用者側は一切の歩み寄りを見せず、交渉は決裂した。このように合理性を欠いた就業規則改定・賃金切り下げによって、何らの地域手当も付与されない熊本大学教職員の給与は、全国立大学法人のうちで最低となった。
こうした事態に対して、賃下げ実施後2か月の間に350名をこえる教職員が学長に対して異議通知書をもって労働条件の不利益変更に同意していない旨の申し立てを行った。しかし、これへの学長の対応は、賃下げの合理性の欠如すなわち違法性を露呈させた文書を本人宛に郵送したに止まった。
本年度においてことに憂慮されるのは、2006年度の人事院勧告が更なるマイナス勧告となる可能性が高く、そうなれば本学使用者は、またもそれに追従・準拠しようとする可能性が極めて高いことである。このように人件費削減を強行する政府の方針が、国立大学法人、とりわけ熊本大学を含む地方大学の存続に甚大な影響を及ぼすことは必至である。主体性を欠如している使用者の違法な賃金切り下げによって、教職員の労働意欲の減退や、大学間の格差拡大による優秀な人材確保の困難化といった、地方大学の命取りとなりかねない状況が、急速に深刻化している。さらに、国家公務員や地方国立大学法人の給与切り下げは、地方公務員や地方企業の給与削減へと連鎖し、国民が等しく高等教育や医療を受ける権利をも妨げることになろう。
私たち熊本大学教職員組合は、これまでにも他の単組に抜きん出る活動を行ってきたが、今後も政府と使用者に対する抗議の声をさらに強くあげ、他団体との連携の下、人事院勧告に準拠した賃金切り下げに反対する全国的な活動を強化していく。また、学内・外情勢の迅速な分析に基づく要求提示と協議における徹底的な追及とを活動の核とし、幅広く、かつ、効果的な反対運動を展開することをここに宣言する。
右、決議する。
2006年8月2日
熊本大学教職員組合2006年度定期大会
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