No.26
2006.11.28
熊本大学教職員組合
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特別都市手当を廃止し、
教職員の待遇改善に使用せよ
 11月15日、賃金問題での団体交渉が行われました。その焦点の一つとして浮かび上がっているのが特別都市手当です。今回の人事院勧告では、民間給与が伸びているにもかかわらず、比較対象企業を50人規模までに下げることによって、俸給や期末勤勉手当の変更を見送りました。一方で広域異動手当の新設と地域手当の増額が盛り込まれ、大都市や異動官職に有利な項目のみの勧告になりました。
 このような勧告に対し熊本大学としてどのような対応をするのかを問い質すのが今回の団交の目的です。しかし相変わらず、国の制度変更をそのまま熊本大学の賃金制度に取り入れるという姿勢であり、特別都市手当の増額の方針を明らかにしました。組合はこの考えに全面的に反論するとともに、過去の特別都市手当の支給実績、および今後の支給総額の見通しを示すように求めます。

国の制度と熊本大学の制度
 国の制度として地域手当と広域異動手当について簡単に解説します。
(1) 2006年度からの給与構造の見直しによって、従来の調整手当(最大12%)は廃止され新たに地域手当(最大18%)が新設されました。ただし、2006年度は最大13%に押さえられており段階的に引き上げることになっています。
 異動によって地域手当が減額される場合には、調整手当と同様な経過措置(1年目は差額の100%、2年目は差額の80%)が取られます。
(2) 2005年の人事院勧告にはもう一つ広域異動手当の新設が盛り込まれました。ただし実施は2007年度からです。これは官署地を異動した職員に対して、距離が60km以上の場合には基本給の3%を、300km以上の場合には基本給の6%を手当として3年間支給するというものです。ただし、(1)で述べた経過措置を受ける職員については、多いほうの額が支給されます。
 さて、熊本大学では同様な制度を特別都市手当として設けています。しかし、熊本市は地域手当非支給地なので大多数の教職員には無関係な制度です。他の国立大学から転勤してきた教員(わずか3年ですが)、文部科学省の都合で派遣されてくる課長以上の事務職員(以下、異動官職と呼びます。この人たちは概ね3年で異動しますから、ずうっと手当をもらい続けることになります。)などが受け取れる特権的な手当といえます。

大学が制度を設ける理由と組合からの批判
 まず、公務員に同様な制度が有るからというのは使用者側も理由にしていません。公務員に準拠する法的義務はないのですから、熊本大学としての判断が問われているのです。使用者側が理由にしているのは、優秀な人材確保と人事交流の円滑化です。
 組合は優秀な人材を高い賃金の保障によって確保することを否定していません。就業規則は労働条件の最低水準を定めるものですから、その定めを越えて賃金を支給することは可能です。これは公務員制度との大きな違いです。しかし、優秀さを前の勤務地がどこか、どの程度の距離を移動して来たのかということで計れるはずはありません。この制度は優秀な人材確保のためにまったく役に立たない制度です。
 人事交流の円滑化について言えば、異動によって賃金が減額される場合に一定の配慮は必要だと思います。また、国立大学からの異動と私立大学からの異動を区別する意味がありません。もちろん、私立大学との格差は大きく、全額を補償することは困難でしょう。これも上限額や支給年数など工夫すれば良いことです。しかし使用者側が提案するのは国とまったく同じような制度です。非支給地からの異動や昇進を伴う場合など、減額されない場合にも手当が支給されることになります。このような場合に手当を支給しなければ円滑に人事が進まないとはとても思えません。
 あえて国と同じ制度で無いといけないとすれば、それは文部科学省の意向で全国を渡り歩く異動官職についてでしょう。意識が国家公務員であるのなら、国と同様の優遇措置を受けて当然だと思うかもしれません。しかし、法人化時、熊本大学の運営費交付金の算定には調整手当は含まれませんでした。教育研究費を削って支給されている(嫌いな表現ですが使用者側は頻繁に使う表現です)この優遇措置を、受けて当然と思う異動官職に熊本大学に来て欲しくありません。

矛盾は広がっておりこの制度を維持する必然性は無い
 運営費交付金には人勧による人件費の増減は算定の根拠に入りません。そのため、地域手当の額が従来の調整手当の額を上回る大学では、国家公務員並みの改定が行えない所もあります。また国家公務員の官署がない都市では、そもそも地域手当の対象に入っていません。そういう大学では従来の調整手当の額も踏まえながら独自に手当を設定しています。各大学の運用と、国家公務員の規則との間に矛盾が生じています。しかし、熊大の特別都市手当は国家公務員の規則のままです。これでは減額される分を補償するというものになりません。

特別都市手当を廃止し、教職員の待遇改善に使用せよ
 今年4月の給与構造見直しに基づく賃金改定によって、多くの教職員が一方的な不利益を受けました。賃金改定による2006年度の人件費削減額は1億6千万円とされており、2007年度以降もどんどん拡大していきます。このような労働条件不利益変更は明らかな違法行為であり、減額分の支給を求めていきます。
 さて、このような不利益を押し付けておきながら特別都市手当の改善を提案しようとしています。提案に深く関っている事務局長、総務部長、今は空席ですが人事課長が異動官職として手当の増額を受けることになります。昨年度の団交で賃金を切り下げる理由の一つに経営の苦しさをあげました。それから1年もたたないうちに、自分たちだけ賃金を上げようと提案しようとしているのですから開いた口がふさがりません。組合は人勧に基づく特別都市手当の改善に断固反対するとともに、総合的な賃金制度の中で不利益の是正を図ることを要求していきます。

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