No.34
2007.2.19
熊本大学教職員組合
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評議会縮小案に合理的根拠なし!
—「各種会議運営体制の見直し
について(中間報告)(案)」
の廃案を求める—
  「運営体制の見直しに係る検討WG」は「各種会議運営体制の見直しについて(中間報告)(案)」(以下「見直し案」)を作成し、WG座長の西山教育・学生担当副学長は、1月25日付けで各部局長にこれを示し、2月7日までに部局の意見を提出するよう求めました。
 この「見直し案」は、「中期目標・中期計画及び年度計画に基づき、全学的会議体を効果的な体制に再編・整備し、教員の負担軽減を図るため」にまとめられたとされています。内容は、教育研究評議会の構成員から部局選出評議員を外して部局長のみとし、学長・常勤理事・事務局長・部長とたった4名の部局長とからなる「総合企画会議」に大きな権限を与え、なおかつ常勤の役員及び監事で運営する「政策調整会議」を正式に会議体として位置づけようとするものです。「見直し案」の眼目は、教学に関する全学審議組織である教育研究評議会を縮小し、学長周辺の権限を強化することにあるといえます。
ここでは、「見直し案」作成プロセスの問題点、内容の問題点、各部局における「見直し案」の検討と意見提出の状況等についてお知らせします。

あまりに杜撰な作成プロセス、根拠薄弱な「見直し案」
 第一に「見直し案」は、国立大学法人熊本大学の制度設計を大幅に変更するものでありながらも、学部教授会での審議を経ないまま作成されています。案の作成過程の段階で部局構成員の意見が聴取されるべきです。
 第二に、見直しの根拠が全く薄弱なことです。教育研究評議会のメンバーを縮小する根拠として、「教育研究評議会で審議される案件は既に戦略会議及び配下の委員会等で部局の意見を反映させた上で十分審議されて」いることが挙げられていますが、一方では「審議され決定された事項が部局等で十分に説明されていない」とまったく矛盾することが指摘されています。もし、「審議され決定された事項」が本当に「部局等で十分に説明されていない」のであれば、見直すべきは評議会の構成ではなく、十分な報告・説明をしない評議会メンバーの職務態度のはずです。いずれにせよ、このようにまったく矛盾した論理でもって評議会の縮小を図るというのは、無責任かつ不見識極まりないものです。
 第三に、この案が利用している評議会構成員を対象とした「大学運営体制改善に関するアンケート結果」の回答率は、驚くべきことに、たった56.8パーセントに過ぎません。これは、熊本大学の運営の中核を担うはずの評議会構成員の責任感の欠如を端的に表しています。さらにこの案は、このアンケートに寄せられた意見の一部のみを「主な意見」として示し、案の根拠としています。立案のためにアンケートを実施し、その結果を使うというのであれば、個人情報を除いて、アンケートに記されたすべての意見を明らかにすべきです。全体の内容がまったく分からないものであり、恣意的に使われている疑いを拭いようがありません。

形骸化した評議会をさらに形骸化させる「見直し案」
 「見直し案」は教育研究評議会のメンバー構成を26名としますが、このうち、学生・大学院生教育を担う部局
(学部・研究科)から出る者は過半数以下の12名(うち医学部保健学科長の出席は19年度のみの経過措置)となります。「見直し案」が標榜する、教学に関する「全学的な見地からの審議や判断」の実質を維持しようとするなら、学生・大学院生教育を担う部局、とくに学部からは学部長と1名の評議員の最低2名の参加を保証することが必要であると考えます。どうしてもメンバーを縮小する必要があるならば、学生・大学院生教育を直接担うことのないセンター等の学内共同利用施設の長を外してはどうでしょうか。学内共同利用施設の長との連絡調整は、部局長等調整連絡会議で十分な筈だからです。
 端的に言えば「見直し案」は、「教育研究評議会の形骸化」を理由に更なる形骸化を図る構想となっています。教育研究評議会の形骸化が問題であるとすれば、なぜそうした現状が生じたのかを分析すべきですが、今回の「見直し案」にはそうした努力の形跡はまったく見られません。「1.背景・経緯」に端的に表れているように、中期計画・年度計画を達成することを自己目的化したWGによる、中期計画・年度目標達成のための案だと言わざるを得ません。

部局での「見直し案」審議も殆ど無し
 「見直し案」が一般の部局構成員に知らされたのは1月末、部局からの意見提出期限まではそれから実質一週間しかありませんでした。医学部保健学科では、意見を求める文書は1月29日のメールで構成員に配信されましたが、教授会での審議はありませんでした。法学部・理学部・工学部もほぼ同様です。文学部では、1月30日に「見直し案」と一連の文書がメールで構成員に配信され、翌31日の臨時教授会の席で複数の構成員が審議を求めましたが、文学部長は「学長と教員との懇談会」の開始時刻が迫っていることを理由に教授会を一方的に打ち切るという横暴なやり方で、審議を拒否しました。
 唯一、教授会で審議したのは教育学部です。2月7日の臨時教授会で構成員の意見集約が行われ、学部の一致した意見として、①審議のプロセスを欠き、あまりに拙速である、②従来の評議会をなくすべきではない、の2点を提出することになりました。
 部局構成員の意見を一切取り入れることなく作られた「見直し案」には、いまだ部局教授会等での審議が殆ど加えられていません。全学運営に関わる意思決定のあり方としては、いまだかつて無い、異常な事態です。

「見直し案」の廃案と新案作成を求める
 「見直し案」の「別途資料1」=「参考:アンケートにおける主な意見」には、教育研究評議会に関する「実質審議は皆無であり、報告連絡事項のみの感がする」という意見が記載されています。この意見が、法人化後、学長と役員会を中心としたトップダウンの意思決定の「強化」によって教育研究評議会が形骸化している現状を批判したものであるのは、明らかでしょう。学長以下、ほとんど同じ構成員からなる役員会・政策会議・政策調整会議・総合企画会議といったものの機能を「強化」することが、教育研究評議会をさらに形骸化させるということに、WGの方々は気付かないのでしょうか?
 組合は「運営体制の見直しに係る検討WG」に対して、作成手続き・根拠・内容ともに極めて杜撰なこの「見直し案」を廃案とし、各部局構成員から提出された意見・批判を真摯に聞き、各部局での充分な審議を踏まえた正当な手続きのもとで新たな案を作り直すことを求めます。

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