No.6
2007.8.1
熊本大学教職員組合
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給与規則にみる差別性と
役員・渡り鳥官僚優遇の実態

支給対象は「人事交流職員」のみ――差別的な手当制度――

 法人化後の競争的環境のなかで、優秀な教職員をいかにして獲得・確保するかが、熊本大学にとっての生命線であることは明らかです。そうした人材は、ひろく私立大学・公立大学や民間企業等で活躍する研究者、教員、事務系職員にも求められねばなりませんが、現職を離れて熊本大学へと移る決断をしようとする者にとって、本学の労働条件が最大の判断材料となることは言うまでもありません。しかし、2006年4月からの平均4.8%、最大7%という基本給切り下げと地域給の導入は、熊本大学の給与水準を大幅に低下させることになりました。熊本大学の教育・研究環境には大きな魅力を感じるが、熊大に移ると給与額が下がってしまうというケースが多くなっているのです。人材確保のためには当面、こうした事態を幾分かでもフォローする手当制度が不可欠な筈です。
 熊本大学が「優秀な人材確保のため」として新規採用者を対象に設けている手当に、
(1) 「特別都市手当」(指定地域に在勤する者が熊大に採用された場合、「基本給の月額(基本給月額+基本給調整額)+管理職手当+扶養手当」の最大18%、2年間、但し2年目は1年目の80%)
(2) 「広域異動手当」(異動距離60km以上300km未満が同上の3%、300q以上が6%、3年間)
(3) 「単身赴任手当」(月額23,000円、100km以上の場合は交通距離により45,000円を超えない範囲で加算)
があります。
 しかし、「熊本大学職員給与規則」を見ると、これら手当を受給出来るのは「人事交流職員」に限られています。「人事交流職員」というのは、「熊本大学職員雇用規則」に規定された「人事交流」によって熊本大学に採用された職員のことで、同規則第2条(6)には「人事交流」の内容が次のように示されています。
人事交流とは、学長の要請により、他の国立大学法人、国、特定独立行政法人、地方公共団体又は公庫等(これらを「人事交流機関」という)に出向もしくは人事交流機関から復帰すること、又は人事交流機関の長又はその委任を受けた者の要請に応じ当該人事交流機関を退職した者を引き続き採用すること。
 つまり、私立・公立大学や民間企業等から採用された者は差別され、これら手当の支給対象から完全に排除されているのです。例えば、熊大に採用のため東京の私大や企業を辞めて配偶者と別居し熊本に転居する場合、どんなに基本給の水準が下がっても、これら手当は一切支給されません。私大や民間から熊大に来られて最初の給与明細を開き、愕然とされた方も少なくない筈です。事態は使用者が考えるより、はるかに深刻化しています。
熊大使用者が「優秀な人材確保」の条件をみずから限定する歪んだ制度を運用しつづけている要因は、法人化後も労働条件に関しては国家公務員の制度をそのまま引き写し、法人としての創意工夫の努力を行う気がまったく無いという、使用者の体質にあります。上記の手当制度はその最たるもので、国の制度の引き写しですから、支給対象者も国の「人事交流」の枠内に限定され、民間等からの採用者はその対象外だというわけです。

役員だけには民間からの採用者にも支給! 出色の「創意工夫」!?
 2005年度から2006年度の給与交渉において組合は、かくも差別的な異動保障制度を廃止し、人材確保のために真に有効な制度を策定するよう一貫して要求してきました。しかし使用者側は「教員、職員とも、優秀な人材確保のための円滑な人事交流は必要」だとの一点張りで「人事交流」の根本的な不合理性=差別性を隠蔽しながら、2007年4月には(2)「広域異動手当」を新たに制度化するなど、差別性を拡大しました。
 ところが、昨年度の給与交渉の過程で組合は驚くべき事実を知ることになりました。熊本大学は一般教職員の給与規則とは別に、「役員給与規則」を設けていますが、そのどこを見ても「人事交流職員」の文言はありません。つまり、地域給支給地に在勤し、引き続き熊大役員に就任した者は、誰でも受給できる規則になっているのです。そして現実に、民間出身の役員で「特別都市手当」と「単身赴任手当」を受給している者が存在します。
 そこで組合は、すべての国立大学法人の給与規則を調査してみました。いずれの大学でも上記3種の手当は「人事交流」を対象に支給しています。後述のようにこれは、「人事交流」制度が国立大学法人制度における構造的問題であることを示すものです。しかし、役員給与規則で「人事交流」の枠を外しているのは、管見の限り熊本大学だけです。
 熊大使用者は、一般教職員を冷遇しながら、全国立大学法人中でも例のない「役員優遇の創意工夫」を凝らしていたわけです。ここに、本学使用者の異常な体質を見ないわけにはいきません。

「人事交流」制度の本質と改革の必要性
 使用者は組合の批判に対して異動保障制度は優秀な人材確保と「円滑な人事交流」のために必要だと強弁します。使用者の言う「円滑な人事交流」とは、文部科学省及び関係法人から本学の課長級以上のポストに次々と着任しては数年で異動する「文科官僚の人事交流」を指し、国立大学法人の異動保障制度が、彼らが地方を渡り歩く上での既得権として法人化後も維持・拡大されていることは明らかです。
 事務方の幹部を天下りの文科官僚が占め、数年で異動してゆくという「人事交流」制度は、法人制度にはそぐわない本質を持ち、政府・文科省による法人化準備の過程でも問題とされましたが、文科官僚が頑として譲らなかったという経緯があります。法人となった今、熊本大学自前の人材が運営上の真の意味での「創意工夫」を発揮できる環境が必要です。しかし、文科官僚に事務方の実権を握らせる「人事交流」はそれに逆行するものです。
 以上のように、3種の手当に集約される異動保証制度は、優秀な人材確保には結び付かない差別性を持っています。熊本大学の生き残りを望むなら、今度こそ全国に先駆ける正しい「創意工夫」によってこれら制度を改革し、自律的運営の実現のために「人事交流」を制限することが必要です。


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