No.11
2007.9.27
熊本大学教職員組合
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査定昇給のガイドラインについて,
組合を無視したままの
学内意見聴取に強く抗議する

 
9月13日の部局長等連絡調整会議に「教員の昇給区分等の取り扱いについて(ガイドライン)(案)」なる文書が示されました。18日にはいくつかの学部でも資料が配布されており、今月中の意見提出が求められています。調整手当のガイドラインを定めるときの手続きとまったく同じであり、8月28日の団体交渉での組合の主張を蔑ろにするものです。組合は労働条件の根本にかかわる事項について、組合を無視した形で学内意思の集約を進めることについて強く抗議するとともに、団交なしに方針の決定を行わないよう求めます。

またも組合無視の不当労働行為
 労働法では労働条件は労使の合意に基づいて決定されます。ですから労働条件の決定に際して意見を聞く相手は基本的に労働組合であるべきです。「就業規則の制定にあたって、組合の意見を求めず、直接従業員の意見を聞いたこと」について不当労働行為とした判例があります。
 部局長等を通じて学内の意見を聴取することを否定するわけではありませんが、あわせて組合にも資料を提示し意見を求めるのが当然のあり方です。今回は組合に対しての案の提示も説明もまったく行われていません。このようなやり方は明らかに組合無視の不当労働行為に該当します。
 さらにこのような組合の考えは団体交渉ですでに述べています。今年6月期の勤勉手当の成績区分の扱いのガイドラインについて、本来組合との協議事項であることを述べた上、「教養教育に関わる業務が正当に評価されない可能性があるので機構長推薦枠を置くべき」との主張を行いました。これに対し理事は「部局長等連絡会議で機構長推薦枠について確かに質問が出たが改善の必要性について特段の意見は出なかった。部局から出てきた意見を部局長等連絡会議で議論した結果決めた。ガイドラインを作ったばかりなので改めて蒸し返すつもりはない」と回答しました。この回答は
  1. 組合を無視したまま構成員の意見集約を行ったことを正当化し
  2. それを理由に組合の要求を門前払いする
というものです。労働条件は労使の合意で決めるという労働法の基本原則の認識をまったく欠いた回答といえます。さらに「意見聴取を行ったというが各教員に案の内容すら示されていない部局がある」という組合側の指摘には「部局長等に構成員の意見を聞くようにお願いした。案が示されていない部局があったということだが部局長の判断でやったこと。とやかく言うことではない。」と答えています。意見集約の実態を知ろうともせず、部局長等調整連絡会議で異論がなかったという事実だけで組合の主張を拒否したわけです。
 組合はこのような態度を強く批判するとともに「労働条件事項について団体交渉で具体的に要求したものであり、役員会で検討してから回答するのが当然」と述べ、次回団交での回答を求めています。
 このような経緯がありながら使用者側は再び同じ手法を用いました。組合の主張を知りながらさらに組合無視を続けるのですから、この態度はあまりに悪質です。良好な労使関係を作りたいという学長の発言は一体なんだったのでしょうか。組合として強く抗議するとともに、査定昇給に関する団体交渉を行うこと、そして今後このような手法をとらないことを要求します。

昇給区分の取り扱いと従来の特昇制度の違い
 ここで公務員における昇給制度の枠組みを簡単に紹介しましょう。従来の特昇制度は職員の約7分の1を対象に2号俸昇給させるというものでした。多くの部署でローテーションを基本に運用されており、「7年に1度の特別昇給」というのが皆さんの実感だったと思います。
 さて、2005年の人事院勧告で号俸の4分割とともに、昇給時期を1月1日に統一しました。その際の昇給幅は成績区分ごとに
一般職員 A区分(5%) 8号俸 B区分(20%) 6号俸 C区分 4号俸
特定職員 A区分(10%) 8号俸 B区分(30%) 6号俸 C区分 3号俸
と定めるとされました。A区分の8号俸昇給が従来の特昇に相当します。カッコ内の数字は人員分布率であり、特定職員(教員では教授)が優遇されているように見えますが、通常の昇給が3号俸(従来の1号俸の4分の3)に圧縮されているのでむしろ不利です。他にD区分という更に昇給幅の少ない区分、E区分というまったく昇給しない区分がありますが、これについては人員分布率は示されていません。
 さらに地域手当の原資を確保する(人事院の説明、熊大ではまったく理由にならないのですが)という理由で4年間は昇給幅が1号俸圧縮されています。結果として全員が従来の1号俸に相当する4号俸だけ引き下げられることになります。他にも高年齢者の昇給圧縮、枠外号俸の廃止などがありますが詳細は省略します。
 違いは特別昇給がA、Bと二つに区分されたこと、成績による昇給という趣旨が強調されたことです。成績と昇給を組み合わせるので一般に「査定昇給」と呼ばれており、完全なローテーションで行うことは困難です。
 注意すべきは勤勉手当の成績率が一回の勤勉手当に対してしか効果を持たないのに対し、査定昇給はその後の賃金や退職金まで影響することです。生涯賃金では数百万円に及ぶ可能性があります。これをどう扱うのかが今回問われているのです。教職員の皆さんにはこの事情をご理解の上、ガイドライン(職員に対してはまだ示されていませんが)に対する意見を組合にお寄せいただくようお願いします。

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