No.21
2008.1.25
熊本大学教職員組合
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エッ! 外部資金を獲得した人に報奨金!?

 1月10日の部局長等連絡調整会議において、表彰・報奨制度(案)が提案されました。人件費・報奨制度WG(座長、佐藤隆理事・事務局長)で取りまとめたもので、各部局に持ち帰り2月1日(金)までに意見を出すこととされています。このニュースでは、提案の概要とそれに対する疑問を述べます。

今回の提案の内容
 従来の就業規則では表彰について具体的に規定されているのは永年勤続表彰のみです。今回の提案は永年勤続表彰以外の表彰を3種類に分類するとともに、その一部に報奨金を支給するというものです。具体的には
(1) 学長表彰(特別表彰+報奨金)
研究活動において外部資金の獲得(受入)額が多い者に対する表彰
(2) 学長表彰(特別表彰)
他の教職員の模範として推奨すべき実績があると認められる者に対する表彰
(3) 学長表彰(感謝状贈呈)
本学の発展に顕著な貢献があった学外者及び基金への寄付者に対する表彰

 とされており報奨金が支給されるのは(1)の外部資金受入の場合のみです。報奨金の額も受入外部資金の額によって次のように提案されています。
外部資金獲得額及び受入額の合計額 報奨金支給額 対象者
5千万円以上 50万円 全教員
3千万円以上5千万円未満 30万円 全教員
1千万円以上3千万円未満 10万円 全教員
500万円以上1千万円未満 5万円 人文社会科学系教員のみ
300万円以上500万円未満 3万円 人文社会科学系教員のみ

 報奨金は今年度については、平成18年度実績に基づき平成20年3月に支給するとされていますが、来年度以降は前年度の実績に基づき、6月の賞与支給の時期に合わせて支給するとの提案です。また財源は外部資金の間接経費をあてるそうです。

案に対する様々な疑問
 表彰規則の整備の必要性は認めましょう。しかしあまりに唐突な提案との感を禁じえません。特に報奨金については、WGでも支給総額の検討すら行われていません。100万円程度の助成を10件程度採用するとして学内公募された出版助成が、総額600万円ほどにまで削減されるなど、多くの予算が削減されている中で、このような新たな財政支出を行うことについて、より詳細な説明があってしかるべきです。以下、原案に対する疑問を箇条書きします。
単純に外部からの獲得金額で報奨金額を決めることは、熊本大学が教員の研究業績の評価を自主的に行う努力を放棄したと思えます。不見識といわれても仕方がありません。
外部資金獲得は、勤勉手当の成績率や昇給区分の扱いの評価対象になりますが、それとの関係が不明です。
小額の受入を除外する意味が不明です。自然科学系で毎年500万円の科研費を獲得している人は、それなりの貢献をしているはずですが、表彰からまったく外されてしまいます。
外部資金受入のみを促進することになり、教育の充実や管理運営に地道な努力を行う人の意欲をそいでしまう可能性があります。
「大規模な研究計画」には研究分担者や研究協力者として多くの人たちが関わります。研究代表者以外の貢献者たちを大学としてどのように評価するのか、まったく不明です。なお、会議において佐藤座長は「報奨金をもらった人が独り占めにすることはないだろう」という趣旨の発言を行っています。
研究業績に対する表彰は、その成果に対して行われるのが基本です。外部資金受入額のみで判断すべきことではありません。
大規模な外部資金を獲得した人がいる一部の部署において、教育や管理運営の負担が周りの教員にしわ寄せされている状況があります。報奨金はこのような状況に軋轢を生じさせる可能性があります。
 学長は従来から科研費不申請に対するペナルティなどで外部資金獲得競争をあおってきました。確かに経営者の立場からはどれだけ金を取ってくるかが重要と感じるのかもしれません。しかし大学にとって最も重要なのは教育・研究の活性化です。民間での「売上高の多い人に報奨金」という考えをそのまま持ち込むことには疑問を感じます。出版助成など堅実な研究活動に対する助成を大幅に削減し、資金獲得事実のみを評価するのは本末転倒です。
 また、研究に必要な経費は分野ごとに異なるし研究計画内容でも大きく変わってきます。外部からの研究費も獲得しやすい分野とそうでない分野があります。外部資金獲得にしか目を向けなければ、学内の教育・研究の構造を歪めかねません。使用者側にはより慎重な取扱いを求めます。

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