2008.9.25 |
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私たちをめぐる情勢 広がる格差と様々な不安 2007年7月29日の第21回参議院選挙の結果、参議院において連立を組む自民・公明両党は過半数を獲得できず、参議院の第一党は野党第一党の民主党になり、参議院議長も民主党から選出されました。いわゆる「衆参ねじれ国会」の出現です。この結果、教育基本法を改悪し、教育改革関連三法を無理矢理成立させた安倍内閣は最終的に政権を投げ出し、第一次福田内閣がそれを引き継ぐことになったのは、その2ヶ月後9月26日のことでした。あれから約1年、この構図は、これまで衆参両院で過半数を占めていた政府与党の政策決定に大きな打撃を与えることになり、もはや与党が数を頼みにしてどんな法案でも簡単に通せるという状況ではなくなったことを表しています(その福田首相も9月1日に突然辞意を表明し、安倍前首相と同じく政権を投げ出してしまいました)。 そのようなチェック体制が漸く確立する一方で、小泉構造改革及びその後継安倍政権の改革継承路線は、確実に社会の様々なレベルで格差を拡大させてしまっており、私たちの生活を十分すぎるほど蝕んできましたが、それに追い打ちをかけるように、去年から今年にかけて、サブプライムローン問題や世界規模の原油・原材料価格高騰に端を発する、金融不安や物価上昇がますます大きく私たちの生活にのしかかってきている現状があります。また、最近頻発している、秋葉原通り魔事件などの無差別殺傷事件は、年間3万人を超す自殺者数とともに、拡大の一途をたどる社会格差にその原因のひとつがあるという見方もあり、私たちの間に拭い去ることのできない大きな社会不安を醸し出しています。さらには、私たちの不安は日本国内の問題にとどまらず、地球規模の環境問題に対するものにまで及んでいます。7月に行われた北海道洞爺湖サミットでは、インドや中国をも交えて二酸化炭素削減が討議されたことは記憶に新しい出来事です。 これまでの政府主導のいわゆる「改革」路線文脈において見るならば、2004年の国立大学法人移行は、確かに「競争的環境の中で個性が輝く大学」という副題の1998年の大学審答申がそのルーツだとは言えるのかも知れませんが、真の意味での教育改革というよりはむしろ橋本内閣(1996年)以来の行財政改革の一環であったことが強く想起されます。国立大学教職員をまず非公務員化して分離し、とは言いながらも「運営費交付金」でがんじがらめに縛り、文科省がそれを思い通りに操るというこのシステムは、移行後4年を経て、あからさまな大学間格差、もっと言えば、大学崩壊(そして再編統合への道)の危機までも生みだしており、私たちの不安をさらに増大させています。 運営費交付金削減枠3%へ 昨年は、その運営費交付金を「競争的経費」化するような動きまで一時取り沙汰されましたが、地方からの強い反発もあり、「骨太の方針2007」では、「運営費交付金の適正な配分」という文言で決着し、とりあえずその競争的経費への全面的衣替えは回避されました。 また、今年に入って、7月1日に閣議決定された「教育振興基本計画」では、文科省はその原案において、教育に対する公的支出をGDP比3.5%からOECD加盟国平均である5%にするという数値目標を掲げましたが、財務省などの激しい抵抗に遭い、具体的数値はすべて削られてしまいました。最終的に当初原案は「OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つとしつつ、必要な予算について財源を措置し、教育投資を確保していくことが必要である」という表現にトーンダウンしてしまったのです。 そんな中、政府は、7月29日の閣議で、2009年度予算の枠組みとなる概算要求基準(シーリング)において、医師不足等に対処する「重点化枠」を約3300億円確保するため、国立大学・高専運営費交付金、私学助成費等について、「骨太の方針2006」で決定されたシーリングマイナス1%枠(対前年度予算比1%減額)をさらに拡大し、マイナス3%とすることを決定しました。 現在でさえ、運営費交付金1%、病院経営改善係数2%が毎年削減され、交付される金額だけで研究教育を進めていくことは至難の業であり、そのため大学は自ら進んで競争的外部資金を獲得しなければ身動きがとれない状況に追い込まれているうえに、加えて人件費5%削減までが要求されており、もはや大学運営の限界に来ていると言わねばなりません。にもかかわらず、削減枠がいきなり2%増になるという暴挙は到底許し難く、このことについては、国大協・全大教もいち早く断固たる反対を表明しています。 さらには、第一期中期目標・中期計画の達成状況についての評価結果は(その暫定評価は2008年度中に行われますが)、次期の運営費交付金に反映される仕組みとなっていることから、運営費交付金そのものの額が大きく変動しうる可能性があるのです。 熊本大学の教育・研究・医療の発展のために このように、確かに厳しくなる一方の大学の財政状況ではありますが、私たちは今後もより良い教育・研究・医療を実現していかなければならないのですから、教職員一人ひとりがそれぞれの持ち場で自主的に努力する意欲を持てるよう、賃金面で正当な処遇を受けていない教職員には、是非ともそれが確保されなければならないと組合は考えます。2008年4月より改正されたパートタイム労働法に則り、有期雇用職員に(特に特定有期雇用職員に)正職員への道を開くことはその重要な一歩です。8月11日に出された、国立大学法人の給与決定の重要な参考資料となる「2008年人事院勧告」でも、非常勤職員の給与を決定する際に考慮すべき事項を示す指針を策定するとしており、通勤手当や期末手当の支給に努めること等が指針の原案として示されています。 また、部局単位で実施されている昇給・勤勉手当支給率の査定制度を適正に運用することで、不公平感なしに、それが教職員へのインセンティブとして十分に機能することも必要です。例えば、部局横断的な教養教育への関与に対する評価査定がそれぞれのシステムにおいてどれだけ適正に行われているかなどは今後検証すべき項目としてあげられます。 そして、熊大の教職員個々人が自主的に、本当にやりがいのある仕事をしていくことによって、熊大全体が大きく発展していくためには、何よりも学内における「意思決定システムの適正化」が不可欠です。今年5月に組合が出した国際化推進センターに関する「声明」でも主張されているように、教職員の業務遂行に密接に関係する事項を、教職員の声をほとんど考慮せず決めてしまえば、結果的に業務の混乱と停滞を引き起こす可能性が非常に高くなると言わねばなりません。学長は、教職員の意見を無視して進められる改革は決して成功しないということを銘記して、政策判断の前には教職員の意見を十分に聞く責任があります。その民主的な意思決定という点からも、本年末に行われる学長選挙における意向聴取制度の位置づけは決して軽視されるべきではありません。 現実問題として、国立大学を取り巻く状況がこのように厳しいときこそ、熊本大学における教職員組合が果たす役割は非常に重要であると考えられます。組合は、その責任を自覚して、職場環境の改善とより良い教育・研究・医療の実現のために全力を尽くしていきたいと思っています。 組合活動の基本方針 2004年4月1日の法人化以降、国立大学の教職員は非公務員化され、私たちの勤務条件は基本的に各大学の労使の話し合いを通じて決定されるようになりました。これは、各大学の労使の創意工夫次第で、労働環境の改善・充実を図る余地が広がったことも意味します。 しかし、熊本大学では、こうした可能性が十分活かされているとは言い難い状況にあります。とりわけ、労使の合意のもとに労働条件を決定するという労働法の原則を事実上形骸化させ、公務員制度に固執する使用者側の態度は、非常に問題です。地域給導入に伴う賃金の大幅切り下げや、一部の人事交流職員のみに支給される特別都市手当・広域異動手当は、その最たるものだと言えますし、このことは、多くの教職員の「働く意欲」を大いに削ぐ一因にもなっています。そして、労務管理における公務員体質からまったく脱却できない使用者側と、労働法に則り交渉を進めようとする組合とは、なかなか議論の歯車がかみ合わない状況に陥っており、このことは、7月に行われた学長挨拶での学長の”建設的でない”という発言に繋がっていると考えられます。 来年度から運営費交付金が3%削減されようとしているなど、大学を取りまく外的条件がますます厳しくなる中で、熊本大学が今後持続的に発展していくためには、まず、健全な労使関係が構築されなければなりませんし、そこから教職員の「働く意欲」を生み出す労働条件、職場環境の整備・改善が生まれていくことが必要不可欠と考えますので、私たちは、昨年度の取り組みを継承・発展させながら活動を幅広く展開していきたいと思っています。 1.大学の本来の機能を実現・維持して行くために
2.明るく働きやすい職場を作るために
3.安心して暮らせる平和な社会を実現するために 下記項目について、他団体との協力を含め、幅広い活動を展開する。
4.一人ひとりの願いや要求をかなえる組合活動のために
<<専門部会>> 1. 賃金部会
2. 教育文化・レクリェーション部会
3. 組織財政部会
4. 青年部会
5. 女性部会
<<職種別部会>> 1. 事務職員部会
2. 技術職員部会
3. 現業職員部会
4. 有期雇用職員部会
5. 看護師部会
6. 教員部会
7. 医療技術職員部会
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