No.15
2009.1.13
熊本大学教職員組合
Tel.:096-342-3529 FAX:096-346-1247
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12月16日団体交渉冒頭での
学長発言について

 9月に行われた組合執行部交代時の四役による学長との懇談の席において、組合は団交への学長出席を求めました。これに対して学長は明確な回答を示さずに「組合との話し合いは建設的ではない」旨の発言を行いました。
 この発言を念頭において、12月16日の団交ではまず執行委員長から「組合はすべての任期制に反対と主張しているのではありません。きちんとした導入手続きが行われていないこと、その任期制の運用が熊大の発展に寄与するものであるかどうかを問題にしている。どうか誤解のないように」との発言を行いました。これに対し学長が述べた発言の中に組合として黙視できないものがあります。このニュースは学長の発言自体を批判するものではありませんので、学長の発言内容と組合の主張、過去の議論をできる限り客観的にまとめることにします。ただし、今後の基本的労働条件に関する団交において、組合主張の根幹に関わる問題です。以下述べる組合の見解に理解を示さない場合には、今後の団交に学長自ら出席し、直接の議論に応じることを求めます。

学長発言の内容
 「意識的にされているかどうか分かりませんが、文書で人件費5%削減し10億円あまっているはずではないか、それをどうしたのかという表現があった。まったくの誤解です。人件費は現状維持しているのでなんら削減の効果で余剰のお金が出ているわけではない。意識的か間違って表現されたのか分からないがご理解いただきたい。」

この問題に関する組合の基本認識
 学長発言にある「文書」が何をさすのか確認しているわけではありません。ここでは学長選アンケートの質問項目で組合の基本認識をまとめたものを掲載します。
 「2006年度の国家公務員給与構造の見直しに伴い、熊本大学教職員の賃金は平均5%削減されました。本学の総人件費は約200億円ですので、最終的に10億円程度の財源が生じることになります。確かに運営費交付金も削減されていますが、その算定に大学所在地の地域手当支給率は考慮されていません。地域手当を高く設定された地域の大学では、その捻出に苦慮しているのが実情です。熊本大学に固有の財源といえます。」

 なお、各大学の運営費交付金の削減状況を表にまとめておきます。運営費交付金には退職手当が含まれるので、完全な比較は困難ですが、地域手当支給率の扱いが考慮されていないことが読み取れます。

2006年の給与構造見直しで何が変わったか
 ここでは、公務員制度で変わったことのみ記述します。使用者側にも反論の余地はないはずです。
  1. まず俸給表は行政職(一)で平均4.8%下げられました。他の俸給表も同じ水準の引き下げが行われています。これは賃金水準の地域格差を公務員賃金に反映させるためで、調整手当(最大12%)を地域手当(最大18%)に変更しています。
  2. ただし、2006年3月31日の賃金は保障されます(現給補償)。個人のレベルでの賃金削減は行われていません。ただし、切り下げ後の俸給月額が、昇給などで2006年3月31日の俸給月額を上回るまで、賃金は据え置かれます。
  3. 旧号俸は4分割され、標準の昇給が4号俸(旧の1号俸に相当)とされました。しかし、4年間は標準の昇給を3号俸に圧縮します。4年間で旧1号俸分が削減されます。これは広域異動手当や本府省手当などの改善措置の原資とされています。
組合の主張
 熊本大学の総人件費は約200億円です。有期雇用職員など非正規雇用の職員も多くいますが、基本給の切り下げは有期雇用職員に対する日給、時間給に対しても行われており、現給補償がなければ、人件費は約10億円削減されたはずです。
 現給補償のための経費を正確に算定する資料を組合は持っていません。しかし、モデルごとの試算では大多数の人は2010年までに現給補償の対象から外れると出ています。組合は人件費削減により生じる財源は最終的に10億円になると主張しているのであり、現時点で10億円あると主張しているのではありません。
 また組合は実際に総人件費が10億円下がると主張しているのではありません。看護師や非常勤の研究員が大幅に増やされており、そのための人件費も必要になります。また賃金不払い残業も改善されていると思われ、そのための経費も必要なはずです。しかし、それは人件費切り下げによる財源がなかったということではなく、人件費切り下げによって生じた財源を、看護師の確保や賃金不払い残業の解消のために使ったと認識すべきです。

過去の団交での経緯
 給与構造見直しに伴う賃金切り下げでどの程度の余剰が出るのかは、賃金に関する団交の基本になるものです。これについて2006年2月9日の団交では1億6千万円の余剰が出ると回答し、教職員のインセンティブに使いたいとの方向性を示していました。その後、2月28日の団交でインセンティブに回す余裕はないとの立場に変わりましたが、その際に使用者側の示した資料を掲載します。残念ながら2006年度以降の団交では、人件費削減効果に関する具体的数値を示していません。しかし、余剰があるという組合の主張に対し反論もしていません。
 組合はこのような過去の経緯を踏まえ、事実に基づいて正当な主張をしていると考えます。

資料 18年度人件費増減見込み額
給与構造の見直しに伴い生じる額 単位:千円
160,000

平成18年度に新たに発生する額
常勤職員関係
若年の係員の給与改定に伴う増加分(昇級含む)。 47,000
 
法定福利費増加分 12,000
 
ボーナス月数引上げに伴う増加分 22,000
臨時職員関係
臨時職員の待遇改善に伴う増加分 43,000
 
法定福利費増加分 3,000
ボーナス月数引上げに伴う増加分 2,000


129,000


資料 国立大学の運営費交付金削減状況

国立大学法人法人別運営費交付金予算額( 単位は100万円 平成21年度は政府案)

区分 H17 H18 H19 H20 H21
東京大学 95,546 92,859 89,943 88,274 87,884
京都大学 62,583 62,228 60,874 60,868 59,640
東北大学 54,499 53,981 51,899 50,717 49,643
大阪大学 50,826 50,275 50,538 50,521 49,267
九州大学 51,194 50,440 46,963 42,398 46,432
筑波大学 42,581 44,191 43,395 45,703 41,927
北海道大学 43,195 42,892 41,192 41,015 39,295
名古屋大学 36,692 35,785 34,655 35,716 35,897
広島大学 28,272 27,999 27,502 26,652 26,406
神戸大学 24,050 24,378 22,955 22,219 22,116
東京工業大学 22,621 21,781 22,232 21,390 21,870
千葉大学 17,365 17,733 19,045 18,245 18,122
岡山大学 19,190 18,885 19,476 18,255 18,105
新潟大学 19,297 18,814 18,470 18,893 17,380
鹿児島大学 16,977 16,733 16,524 16,839 16,681
長崎大学 16,773 16,371 17,322 16,201 16,246
金沢大学 17,708 16,872 17,278 17,892 15,852
熊本大学 16,723 17,047 16,130 16,274 15,732
東京医科歯科大学 17,915 17,624 18,943 18,640 15,711
信州大学 16,287 16,161 16,152 16,397 15,001
徳島大学 15,640 15,509 14,841 13,739 14,387
愛媛大学 14,537 14,460 13,897 13,807 14,094
山口大学 14,075 13,625 13,086 12,784 13,842
岐阜大学 13,151 14,162 14,224 14,030 13,810
琉球大学 14,432 14,235 13,419 13,017 12,978
富山大学 14,324 14,578 14,132 13,030 12,772
山形大学 12,147 12,317 12,281 12,053 12,276
群馬大学 12,866 13,595 14,196 13,138 12,248
三重大学 11,831 12,084 11,809 12,275 12,210
弘前大学 11,887 11,182 11,780 11,313 11,249



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