No.32
2009.5.13
熊本大学教職員組合
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これが教員人事? 研究分野も問わず,
「教育義務」がないかもしれない教授公募なんて
――迷走する熊本大学の教員任期制(1)
 
 熊本大学ではじめて教員の任期制が導入されてから9年余が経過しました。この間,熊本大学当局・使用者は導入手続きなどについて数多くの失態を重ねてきましたが,外国人教師の後任ポストの任期制を廃止し,教育業務をはじめ継続性が求められるポストには任期制は適切ではないとする見解を示すなど,一定の前進も見られています。しかし,本学の教員任期制には「迷走しているのではないか」と思われる問題点がいくつもありますので,今後,組合はそうした問題点を順次お伝えしていきます。今回は,その第一弾として国際化推進センターの任期制導入の問題点についてお伝えします。

任期制を導入しない原則を変える理由は一切審議されないままに
 国際化推進センターの任期制と聞いて,「え,どうして国際化推進センターの教員に任期制なの?」と驚かれた方も少なくないはずです。国際化推進センターの専任教員については,原則として任期制を導入しないことが全学的に確認されているからです。2008年10月23日開催の教育研究評議会資料「全学の国際化推進の仕組みについて」3.(8)その他の項目に,次のように明記されています。
A教員人事
ア)専任教員の任期制の導入について
 (a)国際化推進センターは,現留学生センター教員等の配置換により組織するため任期制の導入は行わない。また,センター教員の業務は,留学生・語学教育と国際交流に関する支援をその主たる業務とすることから,任期制を導入しないことが適当であると考えられる (b)なお,学長判断により,この組織を強化するために,職を特定して全学流用定員ポストを配置する場合についての任期制導入の是非については,総合企画会議,学内共同教育研究施設等人事委員会等で審議し,決定する
((a)下線・(b)二重下線は引用者)
 (a)下線部には国際化推進センターの専任教員は任期制としない原則が記されており,波線部にはその例外が記されています。現在,国際化推進センターの国際交流支援部門の教授について,任期5年(再採用可)の条件で公募が行なわれている(公募の締切は2009年5月25日)のは,(b)二重下線部の例外が適用されたものと思われます。
 この例外規定によれば,総合企画会議,学内共同教育研究施設等の人事等に関する委員会
(以下,「人事委員会」と略す)で審議し,国際化推進センターを強化するために全学流用定員ポストを配置して任期制とすることが有効であると学長が判断した場合に,原則を曲げて任期制を導入することになります。したがって,総合企画会議,「人事委員会」がそうした判断をした場合には,国際化推進センターを強化するためにどのような意味で任期制が必要であると判断したのか(=任期制を導入しない原則を変えて例外規定を適用するほどの必要性とは何か)を示す責任があります。
 ところが,驚くことに,国際化推進センター国際交流支援部門の教授の任期制導入について審議した2009年2月26日開催の 「人事委員会」の議事要旨には,審議の結果,「大学の教員等の任期に関する法律」
(以下,「大学教員任期制法」と略す)第4条第1項第1号(「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき」)を適用することが了承されたとは記されているものの,例外規定を適用する必要性(理由)についてはまったく記されていません。これは,議事要旨には記されなかっただけというものではありません。組合が「人事委員会」のメンバーに取材したところ,任期制を導入しない原則を変えて例外規定を適用する理由については一切審議しなかったといいます。
 もし,仮に熊大使用者や総合企画会議・「人事委員会」が“全学流用定員ポスト
(いわゆる学長預かりポスト)を配置するため任期制とするのは当然であったから審議しなかった”というとすれば,それはけっして理由にはなりません。これまで何度も指摘してきたように,全学流用定員ポストであってもその業務内容を考慮して任期制としていないポストはいくつも存在する(むしろ任期制でない場合の方が多い)からです。また,全学流用定員ポストであることを任期制の根拠とするのは,「大学教員任期制法」の規定に違反します。

前代未聞!?の教員人事
 国際化推進センター国際交流支援部門の教授の任期制には,さらに深刻な問題点があります。その公募要領の「3.職務内容等」の項目には,「(1)国際的な情報発信や国内外の関係機関との連携を含む本学の様々な国際交流事業の企画・立案・実施,(2)国際化推進センターの国際交流支援部門の管理運営,(3)本学での国際交流に関する支援」と記されていますが,「1.研究分野及び人員」の項目は,「研究分野は特に指定しない」とされています。
 改めていうまでもなく,「大学教員任期制法」に基づく任期制は,「教育研究の分野又は方法の特性」が任期制に適しており「教育研究の活性化」に役立つ場合
(第4条第1項第1号適用であれば,「多様な人材の確保が特に求められる」職の場合)に導入するものです。したがって,「研究分野は特に指定しない」というのは,「教育研究の分野又は方法の特性」が任期制に適しているか否かの検討を行なっていないことを物語っており,明らかな法律違反です。
 確かに,本学では過去に一度「研究分野は問わない」という教員公募が行なわれたことがありました。「五高記念館」の准教授についてです。しかし,そこでは高等教育史,文学,自然科学,医薬系,芸術系など研究分野が例示されており,また博物館学は多岐の専門に関わるものであるためにやむを得ない側面もありました(過去にお伝えしたように,それでも多岐にわたる専門から厳正な選考が可能なのかという問題点は抱えていましたが)。今回の公募は,研究分野の例示さえもされていないのです。
 そもそも,研究分野を一切問わない大学の教員人事など,あり得るのでしょうか。仮に,国際化推進センター国際交流支援部門の教授は公募要領の「3.職務内容等」の項目に記すものが主たる業務であるために,「研究分野は特に指定しな」かったというのであれば,それは先に確認した「全学の国際化推進の仕組みについて」の任期制を導入しないことを原則とした判断根拠にも反しています
(この教授は,「任期制を導入しないことが適当である」と判断した「国際交流に関する支援をその主たる業務」とするものだからです)
 さらに,驚くべきことに公募要領の「4.担当授業科目等」の項目には,「教育義務については採用時に協議する」と記されています。これは,「教育義務」
(担当授業ではありません。「教育義務」と記されているのです)を負わない可能性もあることを示しています。公募要領の「5.応募資格」の記載もふまえて極論すれば,英語能力と国際交流活動の能力があり,博士の学位(または同等の見識と業績)を持っていれば,どんな専門研究を行なっている者でもよい,しかも「教育義務」さえ負わない可能性もあるという教員公募が行なわれているのです。こうした教員人事の常識からまったく外れた公募で優秀な研究者を採用するつもりが本当にあるのでしょうか(文部科学省の天下りの受け皿にするのではないかと疑われても仕方ありません)。「大学教員任期制法」に違反することを離れても,学問の府として恥ずべき不見識な事態といわざるを得ません。

4月24日の団体交渉で熊大使用者は“後日,調べて回答する”と約束
 2009年4月24日に開催された団体交渉で組合は,上述の問題点を指摘しながら,導入手続きの疑問点を質問しましたが,“後日,調べて回答する”ことを約束するにとどまりました。とはいえ,団体交渉に出席していた使用者は困惑した様子に見えました。それもそのはずです。団体交渉への使用者側の出席者には,「人事委員会」のメンバーが一人もいないのですから。任期制の導入にあたって失態を繰り返す元凶の一つは,人事・労務担当理事さえもメンバーに加えていない「人事委員会」のあり方にあるのかもしれません。

国際化推進センター関係の教員は不安が募るばかり
 今回の任期制導入・公募の問題点は,貴重な全学定員流用ポスト
(しかも教授ポスト)について無責任・不見識な誤りが起っているだけにとどまりません。この教授ポストは国際交流支援部門の部門長も務めることが予定されており,その下には計10名の専任教員・兼務教員と計8名の専門職員が配置される予定です。つまり,この教授の処遇・労働条件は,計18名の教員・職員の労働条件ともかかわる問題なのです。
 皆さん,自分がその立場に置かれたことを想定して考えてみてください。自分の上司が短期間
(5年間)のうちに成果を求められる不安定な任期制の処遇を受ける者であり,かつ教員公募の常識に反した公募によって選考された者だとしたら……。果たして円滑な組織運営は可能なのでしょうか。国際交流支援部門にかかわる専任教員・兼務教員の不安は日増しに増すばかりです。
 この4月に就任した谷口新学長は,国際化の推進・留学生の増大を本学の将来構想の大きな柱の一つに掲げていますが,最近,政府の留学生30万人計画に沿った「国際化拠点整備事業」
(通称:グローバル30)に今年度は応募する資格がないこと,また来年度の応募にむけて準備(留学生の増大)をすすめると本学の財政基盤に悪影響を及ぼす可能性があることが判明しました(2009年4月27日開催の第1回国際化推進運営会議)。国際化推進センターが発足したばかりにもかかわらず,本学の国際化推進の前にはいくつも大きな暗雲が立ち込めているようです。

 熊本大学教職員組合は,今回指摘した疑問点・問題点が払拭されなければ,国際化推進センター国際交流支援部門の教授の任期制導入は,全学的に確認された運営ルールと「大学教員任期制法」に違反したものであるため,任期制の撤回と公募のやり直しを求めます。
 とはいえ,我われは,熊本大学の当局・使用者が江口元学長の時代から自ら犯した過ちを率直に認めて正すことを最も苦手とする性癖をもっていることも十分に承知しています。谷口新学長は,学長選考会議においてア元前学長の路線の継承者としての評価を得たと伝え聞きます。谷口新学長が悪癖についてまでも江口元学長・ア元前学長体制の継承者となることなく,大学人としてふさわしい見識と誠実性を発揮することを切望します。

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