No.33
2009.4.20
熊本大学教職員組合
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使用者側、6月期ボーナス
「0.2ヶ月分凍結」を組合に提案
 
 景気悪化で製造業を中心に企業の業績不振が続く中,人事院は5月1日に6月期における公務員の期末・勤勉手当について0.2ヶ月分を凍結するよう異例の勧告を行いました.熊本大学でも,政策調整会議においてこの勧告を重要な参考資料として対処することを決定しました.しかしそこには様々な問題点があります.

今回の勧告の性格
 今回の勧告は民間の実態が明らかにならない段階での緊急避難的勧告です.国立大学法人職員の賃金は社会の一般的情勢を踏まえたものにする必要がありますが,この勧告が社会の一般的情勢なのかについては疑問を持たざるを得ません.
 実際,人事院もその問題は認めており,今回は期末手当・勤勉手当の削減ではなく凍結を求めるという形をとっています.凍結によって生じる財源については「必要な措置を講ずる」と述べるとともに,その措置については「民間の調査を行ったうえで別途勧告する」としているのですから,形式的には凍結分が期末・勤勉手当として返ってくる可能性も残されているのです.
「平成21年6月に支給する期末手当及び勤勉手当の支給割合は、一般職の職員の給与に関する法律第19条の4第2項及び第3項並びに第19条の7第2項の規定にかかわらず、次に掲げる職員の区分に応じ、それぞれ次に定める月数分とすること。」
という勧告は給与法の規定自体は現時点では変更しないことを想定していると考えられます.(現時点では法案は提出されていないようです)

熊大に適用した場合の矛盾
 政策調整会議の決定を受け,5月14日に組合に対し使用者側の方針の説明が行われました.説明で明らかになったことは
(1) 「勧告を重要な参考資料として対処する」とはボーナスを0.2ヶ月分凍結することである.
(2) 今回は期末・勤勉手当の凍結であって削減ではない.
(3) 8月の人事院勧告を受けて年間の期末・勤勉手当の額を判断する.
ということです.就業規則にどのように規定するかについては明確な回答は示されませんでした.給与法の改正案も提案されていない状況ですから,まだ具体案が作られていない可能性があります.文字通りの人勧準拠の内容です.
 さて,人事院勧告の凍結という措置は,8月の勧告で6月期の期末・勤勉手当を含めて削減するよう求めることを想定したものです.いわばボーナスの削減という不利益を,6月期に遡って適用することを前提として凍結を求めているのです.
 しかし,労働法のもとでは就業規則の変更による不利益を変更前に遡って適用することは,本人の同意が無ければ許されません.これには不利益変更の内容が合理的かどうかといった解釈の余地は残されていません.不利益の遡及を想定した今回の提案は,労働法に反するものと考えます.違法行為を強行すれば今後の大学運営に大きな支障を残すでしょう.

時間的余裕がない状況で凍結を強行すべきではない
 民間のボーナスが製造業を中心に大幅に削減されていることは新聞報道等でも明らかであり,8月の人事院勧告で大幅な期末・勤勉手当の削減が求められるのは必至の情勢と考えています.国立大学法人はその賃金を社会の一般的情勢に適合させることを求められており,もし今年の人事院勧告で一時金の削減が勧告された場合には,その対応について組合として真摯に交渉に臨む用意があります.
 しかしそれにはパートタイム職員のボーナスや,優秀な教職員の確保策(例えば病院関係でボーナスが削減されている状況はあまり聞きません.ボーナス削減だけでは看護師の確保に悪影響を及ぼす可能性があります.)など人件費全体の議論の中で扱われなければなりません.議論には十分な期間が保障される必要があり,それなしに一時金の削減を受け入れることはできません.
 今回は明らかに人件費全体を検討する時間的余裕はありません.このような状況でボーナスの凍結を強行することは,8月の人事院勧告への対応に関する交渉に悪影響を及ぼすものと考えます.

それでも勧告に従わざるを得ないのではと考える方に
 国立大学法人は賃金について社会の一般的情勢に適合させることを求められています.しかし熊本大学教職員の賃金水準は全国的に見ても低く,ラスパイレス指数も84.1にとどまっています.地域給対象地から外されたこともあり,2006年には4.8%もの賃金カットを受けています.5年経過した今も,賃金水準が切り下げ前に届かず,2005年度末の賃金のまま据え置かれている人が数多くいます.
 一方で今回の業務評価で熊本大学は多くの点で良い評価を得ています.使用者側は教職員の賃金について「社会一般の情勢に適合させる」ことのみ強調しますが、独立行政法人通則法第63条第3項で述べられているのは「業務の実態を考慮し、かつ、社会の一般の情勢に適合」させなさいということです。熊本大学教職員は賃金を押さえつけられながらも熊本大学の発展のために真面目に働いているというのが実態あり、通則法の趣旨からいってもこれ以上の賃金削減は認められません。学長には公務員より低い賃金しか受けていないという事情を社会に向けて説明し,今回の凍結という異常な措置を見送るという判断をするよう求めます.このままでは教職員の士気は下がる一方ではないでしょうか.
 5月14日の組合に対する説明の中で,「総務省の圧力が非常に厳しい.最終的にすべての大学がボーナス切り下げの措置をとるのではないか」との見解を述べました.どのような圧力なのか,情報を得ていないので組合としての判断はできませんが,人件費削減計画も超過達成している現実を社会に訴えながら教職員の立場に立った結論を出すよう努力すべきと考えます.

今後の団体交渉・臨時大会について
 5月14日の説明会のあと、5月21日と25日に団体交渉を行うことになりました。重大事項であり学長の出席も予定されています。組合は凍結見送りを基本に、仮に凍結を強行された場合でも、凍結をなし崩し的削減に変質させないよう最大限の努力を行います。また、25日がこの問題についての最後の交渉になるので、その団交に臨む方針について5月22日に臨時大会を開いて議論します。組合員の皆さんの声を組合または代議員にお寄せください。

5月13日付学長通知に抗議する
 5月13日,学長名で各部局長宛に出された通知,「平成21年6月期期末手当等に関する人事院勧告に伴う熊本大学役職員の給与等の取扱い」の検討状況について(報告)では「基本方針に沿って就業規則等の改正を行い、6月1日の実施に向けて作業していく予定」と一歩踏み込んだ表現が使われています.文書には別紙に「組合と誠実に交渉する」とあるだけで,就業規則改正にいたる手続きの中での交渉の位置づけについては一切触れられていません.
 労働法では労働条件は労使の合意で決定するというのが原則です.労使の合意を実質化するための存在として労働組合が存在しており,労働組合法などの関係法令が整備されています.労働条件の変更については,とりわけそれが不利益変更であるのならば,使用者側の方針を組合に提案し,組合との協議を経てから最終決定を行うのが筋道です.この手続きを軽視することは組合無視(軽視)の不当労働行為と判断せざるを得ません.
 学長が職員に通知することは,具体的措置を組合に提案したこと,今後組合との協議を経て最終決定を行い所要の措置を講じることの2点です.ちなみに5月13日時点では組合はなんら具体的提案を受けていません.今回のような異例な提案を行うにしてはまったく配慮を欠いた文書であり,組合として強く抗議します.

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