2009.8.7 |
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E-mail:ku-kyoso@union.kumamoto-u.ac.jp |
私たちを取り巻く情勢 法人化と国立大学の現状 国立大学法人となって6年目を迎え、この間,大学はどのように変わってきたでしょうか。 法人化にあたり、政府は国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に配慮すること、一方、大学は自主性と自律性を具え、自らの中期計画・目標に基づいて大学としての使命を果たすことが求められました。熊本大学も独自の目標を立てて教育研究、高度先進医療、そして社会貢献に努めてきました。しかし、こうした大学の努力は報われるどころか、大学に対する政府からの締め付けはあらゆるところで強化されてきており、使用者側の視線は、多忙化のなかで奮闘する教職員ではなく、政府に向けられたままです。法人化に際して謳われた「大学の自治は自主性・自律性」は虚像であったことが、誰の目にも明らかになっています。 「運営費交付金」の毎年1%削減だけでも甚大な悪影響があるにもかかわらず、政府は、「2008骨太方針」において2009年度の運営費交付金の削減幅を3%に拡大するという愚策を提唱しています。また、附属病院においても、病院経営改善係数2%が加算されることによって、教育研究機関,高度先進医療機関としての本来の機能を果たすことがきわめて困難になっています。 そうしたなか、2005年度にはほとんどの国立大学法人が授業料の値上げを行ないました。この授業料値上げにより、国立大学法人の文系大学院では私立大学よりも授業料が高くなるという状況さえ生じています。しかも、この授業料値上げは直接大学の収入アップにつながったわけではありません。なぜなら、政府は授業料標準額の引き上げに応じて各大学に支給する「運営費交付金」を減らすのが原則というルールを作ったからです。授業料の引き上げ分が大学の収入に結びつかず、また据え置いても政府からの交付金は減るという仕組みによって、多くの国立大学法人は苦渋の選択を強いられました。このように予算の減額に苦しむ国立大学法人では、独自の予算獲得へ向けて奔走することとなり、教員に対する外部資金(科学研究費や産学連携)の獲得へ向けた圧力は強まる一方です。「正当」な理由なく科研費を申請しない教員にはペナルティを科すという文科省すら驚いた(時代遅れの)熊本大学の制度もその一例にほかなりません。外部資金の獲得額が大学の評価に直結するという大学評価制度そのものに大きな問題があることは言うまでもありませんが、「運営費交付金」の減額によって教育研究の維持が危ぶまれる一方で、外部資金の獲得に奔走せざるを得ないという事態は、日本の高等教育が崩壊の危機に瀕していることを雄弁に物語っています。 また、我われ教職員の生活基盤である給与については、熊本大学の一般職員のラスパイレス指数が83.3(2008年度)にすぎないにもかかわらず、使用者側は2006年の大幅な基本給引き下げ(平均4.8%)に続き、人事院勧告を判断材料として2009年度の夏期ボーナスの0.2カ月分を一時凍 結し、教職員の家計をさらに苦しめることになりました。 さらに、優秀な人材確保という点においても、地方の国立大学法人は甚大な危機に追い込まれています。附属病院では医療職員の半数近くが最長5年という期限を付けられた特定有期雇用職員ということもあり、「正規職員と同じ業務、低い給与、任期後の保障がない」などの理由から離職率が非常に高く、かつ後任の補充も困難であるという悪循環が生じ、恒常的な人材不足に悩まされています。これは、けっして附属病院のみに限った問題ではありません。教員の公募にあたっても、「公募しても人が集まらない」、「内定者が辞退する」といった深刻な事態が起こっています。こうした問題の根源は、労働条件は各大学使用者と労働者との協議において決められると言いながらも、大学事務組織の幹部の多くを文部科学省の「渡り鳥」官僚が占め、旧態依然とした横並び主義と人事院勧告という呪縛から逃れられない(逃れようとしない)、使用者側に染み込んだ非自律的で非自主的な悪しき習慣と、そうした状況に大学を追いやった国立大学法人制度そのものにあります。 現在策定中の第二期中期計画・目標(案)も、部局等から出された意見・修正提案に対する説明も十分になされないまま作業は進められ、文部科学省大臣通達(6月5日)を受けて人件費削減の具体的数値目標を盛り込むなど、評価を過剰に意識した中期計画・目標が作られようとしています。 こうした危機的状況のなかで、これまで腰の重かった国大協(国立大学協会)も今年度の総会において、運営費交付金1%削減の撤廃と授業料の値下げの必要性を訴えました。国大協でさえも、このままでは日本の高等教育は崩壊してしまうと危惧しているのです。 以上のように、我われ熊本大学を取り巻く情勢は厳しさを増しているが、こうした時であるからこそ教職員組合の果たす役割の重要性は鮮明になっています。組合はその責任を自覚し、教職員の処遇問題はもとより、本学が本来の社会的使命を果たせるよう大学内外のさまざまな課題に奮闘していきます。 組合活動の基本方針 今年度、組合は二つの重要課題の解決に向けて運動を進めていきます。 法人化された以上、本来であれば、熊本大学教職員の労働条件は労使間の協議によって決められるはずです。しかし、現在の熊本大学教職員の処遇は人事院勧告によって決められるといっても過言ではない状況になっています。給与についていえば、3年前に大幅な基本給削減が一方的に断行され、そして今年度の異例な臨時勧告によって6月期ボーナスも一時凍結となりました。組合としては、6月期ボーナスの一時凍結については他大学にはない「労働協約」締結を決断しました。これは、けっして組合がボーナス減を容認したことを意味するのではありません。むしろ、就業規則だけでは、ボーナス削減か凍結かが不明確となるところを労働協約で凍結であることを明らかにしました。これで凍結分が保証されていることを意味します。しかし、これで問題が解決したわけではありません。主戦場はこれからです。定例の人事院勧告では更に大幅な冬のボーナスカットや基本給削減の勧告が出される危険性もあるからです。組合は、夏期ボーナス一時凍結分の獲得を目指すとともに定例の人事院勧告後の賃金交渉においては、組合員の意見をふまえながら、これ以上の賃下げを阻止する強い決意で粘り強く交渉していきます。 昨年度から取り組んできた特定有期雇用職員問題については、雇用期限が2010年度末と迫っていることもあり、迅速に対応していかねばなりません。昨年度の団体交渉で使用者側は2009年度内に方向性を出すと回答していましたが、現在、学内に人事制度改革検討WGが設置され、特定有期雇用職員と他の有期雇用職員の処遇の改善について検討が進められています。組合は、当事者の方々の意見・意向を踏まえながら、問題解決に向けて運動していきます。 以上、当面の重要課題を二つ確認しましたが、これまでの運動のなかで未解決となっている諸問題についても情報分析を綿密に行ない、これまでの運動を継承・発展させながら活動を幅広く展開していきます。 1.大学の本来の機能を実現・維持して行くために
2.明るく働きやすい職場を作るために
3.安心して暮らせる平和な社会を実現するために 下記項目について、他団体との協力を含め、幅広い活動を展開する。
4.一人ひとりの願いや要求をかなえる組合活動のために
<<専門部会>> 1. 賃金部会
2. 教育文化・レクリエーション部会
3. 組織財政部会
4. 青年部会
5. 女性部会
<<職種別部会>> 1. 事務職員部会
2. 技術職員部会
3. 現業職員部会
4. 有期雇用職員部会
5. 看護師部会
6. 教員部会
7. 医療技術職員部会
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