No.24
2009.12.1
熊本大学教職員組合
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声 明:適正な給与水準の獲得をめざして
  

声 明:適正な給与水準の獲得をめざして
——不当に奪われた基本給・一時金は給与総額の増額と労働条件の改善によって奪回しよう——

2009年11月30日
熊本大学教職員組合執行委員会


  2009年11月19日、わたしたち熊本大学教職員組合は、使用者の基本給および一時金の引き下げ提案に合意した。組合が使用者の給与引き下げ提案に対して合意の意志を表明したのは、法人化の前後を問わず前例の無いことであり、極めて重大な決断であったと言える。当然のことながら、わたしたち組合は人事院勧告に対応した給与の引き下げの合理性を認めたわけではなく、全国立大学法人中最低の賃金水準を脱する決意を翻したわけでも弱めたわけでもない。むしろ、法人化以降の地道な組合活動の積み重ねと、この度の賃下げ提案に関わる度重なる交渉の成果として、積年の課題であった労使関係の正常化と、待遇改善への道を開く確かな手がかりが熊本大学使用者の回答から得られたため、合理的根拠を欠く不利益変更提案であっても合意を結ぶだけの価値があると判断したのである。
  まず第1に、使用者側は組合の要求に応じ、この度の基本給・一時金削減により生じる余剰金約3億円は基本的に人件費として使用することに同意した。これは、基本給0.2%、一時金0.35月の減額分に相応な金額を教職員に給与として還元しようとするものであり、使用者が不利益変更に対する代償措置の必要性を認め、その実現に向けて最大限の努力をおこなうことを約束したことに他ならない。2006年度の最大7%、平均4.8%の基本給大幅切り下げ交渉において、不利益そのものが発生しないと主張し、組合が妥協案として提出した代償措置案を持ち帰り検討することさえせず即座に突き返し、その後3年にわたる組合の度重なる要求に一切応えようとしなかった使用者が、大きく歩み寄りの姿勢を見せたのである。さらに、中期目標期間最終年度という時期的な限界があり、代償措置の本年度中における完全実施は困難であるが、来年度については3億円の余剰金を人件費として教職員に還元するための方策を組合と共に検討し実現することを2009年11月24日に締結した労働協約で確約さえしているのである。つまり、組合は3億円の人件費奪回に向けた交渉に就くことを選択したのであり、今もなお協議は継続しているのである。
  第2に、熊本大学教職員の給与水準は改善を要する現状にあることを使用者は認めた。これは、熊本大学の労使関係における歴史的な転換であると言える。この度の給与削減提案に合意することは、とりもなおさず2006年度の一方的な不利益変更=違法行為にさえ合意することを意味し、それ故に、争議状態を風化させることなく粘り強く取り組みを継続してきた組合にとっては筆舌に尽くしがたい苦渋の選択であった。しかしながら、引き下げ以前においてすでに低迷を続けていたラスパイレス指数の値は正当なものであり、熊本大学教職員の給与水準に改善の必要はないとする認識が2006年度以降の使用者の基本姿勢であったことを思い起こせば、学長自らが熊本大学教職員の給与水準の低さを認め、労働協約において明確にラスパイレス指数の改善に向けた努力を約束することは画期的なものであった。熊本大学では、この度削減された給与の代償に留まらず、2006度以前、さらには法人化以前からの悲願である国家公務員と同等あるいはそれ以上の、業務の実態に即した適正な給与水準の達成が、労使共通の目標として設定されたのである。これにより、組合は2006年度の不利益変更を補って余りある待遇改善の要求根拠を得たことになる。
  政権交代により、科学技術・高等教育予算に対する政府の締め付けは一層強化される様相も呈している。国立大学法人の置かれる状況は以前にも増して厳しさを増していく恐れがある。しかしながら、わたしたちの労働の対価には増額こそあれ減額される根拠は微塵もない。他大学の状況を見渡せば、賃金切り下げの代償措置として設備充実費や研究経費による還元を求めた単組も見受けられるが、わたしたち熊本大学教職員組合は、この地方国立大学における教育・研究、高度先進医療の維持・発展のために尽力する自負とその当然の代償としての給与水準を死守することを選択した。高等教育予算の圧縮により、これら尊い使命の達成のための予算も不足する現状で、身銭を切ることさえすでに日常と化しているわたしたちにとって、さらに賃金を拠出させようとする使用者の提案に共感など持てるはずはない。
  わたしたちは、2009年11月24日の労働協約に従い、今後、要求の実現、適正な給与水準の獲得に向けて歩を進めていく。代償措置の実現、ラスパイレス指数の改善のために行う方策は、国立大学の歴史上初となる取り組みを多く含むものとなるであろう。今こそ、組合員・全教職員の英知と能力を結集してこの大学を全ての職種に携わる人々にとって真に働きがいのある職場へと改善していこう。わたしたち熊本大学教職員組合は、熊本大学の全教職員に対して更なる団結と共闘を呼びかけるものである。

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