No.25
2009.12.17
熊本大学教職員組合
Tel.:096-342-3529 FAX:096-346-1247
E-mail:ku-kyoso@union.kumamoto-u.ac.jp
PDF版はこちら


解 説:2009年度給与引き下げ問題の取り組みで
組合が獲得したものとは?
  2009 年度給与引き下げ問題の取り組みの詳細については,これまで順次ニュースでお伝えしてきました。しかし,組合の取り組みの成果は,どうも分かりにくいと感じている方も多いのではないかと思います。そこで,組合が獲得した成果を気軽に読める対話形式で解説します。

「給与引き下げ」に組合が合意!?
A 組合が「給与引き下げ」に合意したんだって。集会やデモがあったら行こうと思っていたのに。だって、前回2006年の引き下げの時は、ひどかったからね、使用者の対応が。
B :そうだよなぁ。あの当時は、余剰金の一部を還元するって約束しておきながら、途中で「やっぱ無理」って言い出したり、出所も明らかにできないいかがわしい資料をちらつかせて、「うちの賃金が他大学より高い」なんていいかげんなこと言って、理詰めで太刀打ちできないとなると、「社会一般の情勢・・・」がなんだ「国家公務員を参考に・・・」がなんだと、壊れたレコードみたいにお題目となえるだけでまともに答弁もしないし、組合が妥協案を出してもろくに検討もせずその場で却下だろ。組合の言う「誠実交渉義務ナントカ」とか「合理性のない不利益変更」とか、要するに違法行為のオンパレードだったんだから。
A :たしかに、前回はひどかったね。そんな使用者がまた賃下げしようって言うのに、何で合意なんかするんだろう。合意と引き替えに、なにかもの凄く良い条件でも出してきたのかなー?
B :そう。他の大学じゃありえないような条件をね。でも、学長や理事がデタラメな態度をとり続けたら、どんな条件でも合意はあり得なかったと思うよ。この前の大幅賃下げの時と違って、学長も理事もまともな回答をしたんだ。
A :どういうこと?
B :熊本大学は、今賃下げをしなくちゃならない程お金に困ってないってことと、そもそも、うちの給料はよそより安いってことをようやく認めたんだよ。ようやくね。

“省エネタイプの新型蛍光灯”だったら、ハイさよなら

A :そうしてみると、今回の交渉では、使用者は誠意を見せてずいぶん歩み寄った、ということか。そう言えば組合のビラに、賃下げで浮いたお金はそのまま人件費として還元したいというのがホントの気持ちだとか学長サイドが言ったって書いてあったな。ということは、月給とかボーナスは減っても、年収ベースだと賃下げは無しなの? だとしたら、すごい成果だよね。使用者もやっと現場の声に耳を傾けるように変わってきたということなんだろうけど、組合もここまでよくがんばったなぁ。
B :まあ、今年度は中期計画の最終年度だろ?余った金を餅撒きみたいにばら撒ければ楽なんだろうけど、給料に還元する方法を考えて、規則を作って、役所にも届けなきゃなんない。そんなことしてたら日が暮れちまう、ていうか年度が変わってお金は召し上げになるかもしれないだろ。だから、今年度はやむをえず、トイレとかエレベーターとかの改修に充てるって言ってる。そんな福利厚生なんか無駄を切り詰めて通常の経費から支出できないのかって言いたくなるけどね。みんな学校や病院にはあたりまえに揃っていなくちゃなんないもんだろ。花火上げるのに金使うより足下しっかり固めないと学生も患者さんも職員もみんな逃げてっちゃうよ。さすがに、“省エネタイプの新型蛍光灯”案はとり下げたけどね。社長が社員の給料ピンハネして蛍光灯買うなんて言ったら、ハイさよならだよな、普通。
A :そうか、でも結局は全額を人件費、とはならないわけだ。やっぱり、ソンするんだろ俺たち。
B :今年度はね。でも、学長サイドは、来年度以降、浮いた金は最大限教職員の人件費として使うようにするって約束したんだよ。口約束じゃなくて「労働協約」でな。
A :口約束だろうと文書だろうと、そんなの意味無くないの? 組合も人が良いな。
B :あのな、「労働協約」ってのは、「契約書」なんだぞ。来年返すからって言って3億円借りといて、半分しか返せない、とかなったら、そりゃ契約違反だろ。
A :そうか。それにしても、よく知ってんな。
B :ヤホーで検索しました・・・、古っ。でな、「労働協約」は、組合と使用者の約束だから、基本、組合員に適用される契約なのだよ。ま、普通、組合員だけ優遇したくないからみんな同じように扱おうってのが使用者ってやつなんだけど。

組合が獲得した成果は?

A :わかった。じゃ、今年は返済おあずけにしといて、来年返すって約束だけで合意しちゃったんだ!?
B :あのね、「間違ってる!」と思ったら拡声器持ってデモ行進しちゃったり、赤門に「全国立大学法人中最低賃金!」なんてあられもない立て看立てちゃう組合が、そんな条件で合意するわけないっしょ。今年は今年でちゃんと取れるところは取ってるよ。組合のHPにアップされてるからニュースぐらいちゃんと読めよ。
  順に読んでいくとな、組合が最初にウンと言わせた条件は、月給の引き下げを来年1月に遅らせたこと。国会で給与法が通過した次の月にこだわった大学もあるんだよ。
A :あ、そういえば、他の大学に勤めてる知り合いに、理事が4月にさかのぼって月給減らすぞって言ってるって聞いたことあるわ。減給を1月に遅らせたってのは、それだけでもすごいことだったんだな。・・・で、他には?
B :今年は、新型インフル対策で入試の業務が二倍になって大変だよな。
A :もうね、病気になっちゃうよね、こっちが。
B :それで、増えた業務の分は、入試手当をきちんと支払うって。おまけに、大学の懐具合に合わせて決めていた手当の額も、ちゃんと仕事に見合った十分な額に改善するって。
A :でも、それって教員だけだろ。事務はお手当無しで、おまけに休めるわけないのに休日振替させられておしまいなんだから、意味無いよな。
B :だーかーらー、たまには組合ニュース読んでやれよ。学長サイドは、事務職員にも入試手当を出すってよ。それに、今年のセンター試験の本試験と追試験の4日間は、休日振替ではなく、休日給の支給が基本になる。
A :そうか、どうせ休みが潰れるんなら、超勤ぐらいつけてもらわないとな。
B :振替しないんだから、休日労働で、割り増しだぞ。それにな、組合に迫られて学長サイドが頭絞って提案した代償措置らしいんだが、年末に休みが1日増える。12月28日。いつもなら仕事納めの日だな。
A :でも、28日に休めない人もいるよね。
B :そうなんだけどさ、附属病院の職員とか考えてみたらいいよ。通常勤務だったのが割り増し賃金もらえるわけだから、ささやかでも収入アップになるでしょ。それに、会議が28日に予定されていて動かせないような場合も、立派な休日労働になるよ。サービス残業しないで堂々と休日給請求すればいい。
A : そりゃそうだけど、そもそもあの振替のための書類を書く作業、とてつもなくめんどうだよな。忙しくて、ただでさえ休みが休みにならないのに、取れることのほうが珍しい振替休日の申請に手間と時間をとられるのは、本っ当に腹が立つよね。もっと簡略化するならまだしも、ありゃ拷問だよ。
B :だよな。だから、組合は今の休日出勤の対応方法の基本を休日振替から休日給に変えていくつもりらしいよ。休みたい人は年休を使えば良いって。その方が、年休の有効活用になるから、労務担当理事も助かるんじゃないか。
  あと、今年度は、技術職員の初任給格付けの正当化もやるし、来年度以降は、特定有期雇用職員を正職員化するのに必要な退職金の積み立てなんかを求めていくらしいぞ。みんな組合が前から要求してきたことなんだけど、引き下げで浮いた金は人件費に使っていくように今度の交渉中に約束させたんだって。全ての職種から「吸い上げられた」賃金は、すべての職種に「返される」べきだからね。
A :給与引き下げに同意したっていうから、組合は諦めたと勘違いしてた。でも、本当のところは、交渉を有利に進めたのは組合の方で、結果として、まともな労使の関係を組合が勝ち取ったというわけか。
B :でも、これで終わったわけじゃないよ。今後、使用者が「労働協約」で交わした内容を誠実に実行していくよう、交渉を重ねて約束を守らせないと、納得いかないでしょ。たとえば、さっきの話しじゃないけど、休日給はセンター入試のときだけに支払われればいい、というわけではないだろ。入試の時期以外にも、忙しい時期はいくらでもあるし、休日振替が形だけのものになっているのは事実なんだからね。
A :成果もあるけど、課題も残っている、というわけか。
B :そうだよ、そもそも、給料減らされなきゃなんない理由なんてこれっぽっちも無かったわけだから、全額返させて当然だろ。それに、例の「労働協約」でもさ、学長はラスパイレス指数を改善するって言ってるんだし、ということは、今年の賃下げ分はもちろん、2006年の賃下げ分も、それ以前の低い労働条件も改善したいって言ってるんだから、やることはまだ山ほどあるだろ。
A :ふ〜ん。えらく詳しいけど、もしかして執行委員とか?
B :あ、いゃ... じつは組合入ってないんだ...まだ
A え゛っ? そこまで組合ニュースしっかり読んでるんだったら、るよ普通。な?!

2009年就業規則の不利益変更に対する代償措置(獲得したもの)
  1. 給与引下げによる余剰金は人件費に充てることを基本とする。
  2. 基本給月額の引下げ時期を201011日からとする。
  3. 2009年度のセンター試験に係る休日勤務は休日給の支給を基本とする。
  4. 増加した入試業務に対する手当を完全支給する。採点手当を増額改善、及び事務職員への入試手当を新設する。
  5. 12月28日を全学一斉休業日とする。当日勤務する人には休日給を支給する。
  6. 省エネタイプの新型蛍光灯への設備投資を阻止し、 年度については下記の福利厚生施設の改善をはかる。
    1)附属幼稚園トイレ改善
    2)文法B講義棟屋外トイレ改善
    3)理学部 号館トイレ内壁・床改善
    4)薬学部体育館トイレ・更衣室改善
    5)附属病院:看護師宿舎エレベーター改修

    6)五高記念館の新規トイレ設置
    7)学生会館北地区食堂トイレ、黒髪北地区食堂トイレ改善
    8)こばと保育園木陰作り

赤煉瓦目次へ